こんな情報源を揃えたい
記事を書くには、様々な情報源を揃えるべきです。
- 包括的な情報源・俯瞰的な情報源
- 分野別の情報源
- 主題に特化した情報源
- 専門的な情報源
上の呼称は便宜的なものです。
たとえば「鳥取砂丘」について執筆することを想定してみます。
- (A)包括的な情報源・俯瞰的な情報源
- 『世界百科事典』
- 『日本百科事典』
- 『日本地理』
これらの情報源は、広い範囲を収録しています。そのなかで「鳥取砂丘」がどのような位置づけになっているのかが読み取れます。
またこうした情報源はたいてい、古典的で、保守的で、安定的で、手堅いことしか書かれていません。ときには「古い」定説が書かれていることもあるでしょう。しかしそれらは単に古いという理由で排除するべきではありません。むしろ百科事典としては、古典的な定説についてじゅうぶんなボリュームをもって解説するべきです。
おそらく「鳥取砂丘」についての説明は、紙面の都合で、文字数が限られているはずです。その内容から、「鳥取砂丘」について書く時に、絶対外せない重要なこと、中心的なこと、バランスがよみとれます。
たとえば「A社日本百科」や「B社日本百科」や「C社日本百科」に共通して書かれていることは、重要・基礎的・根幹的なことでしょう。
そこから、適切な重み付け・分量のバランスが推し量れます。
- (B)分野別の情報源
- 『世界の砂漠辞典』
- 『鳥取県百科事典』
- 『日本の砂丘図鑑』
- 『鳥取県の地形』
- 『山陰の観光ガイド』
こうした情報源は、1の情報源に比べると、分野・範囲が限定されています。そのぶん、1より詳しい情報が出ているでしょう。と同時に、同分野における他記事との比較で、どのような情報が重要で、どのような情報が些末なのかがよみとれます。
AとBの区別は、往々にして相対的なものでしょう。
Aに比べると、「新しいこと」「直近のこと」も採り上げている可能性が高いです。古典的な定説と、新しい主流の説を、それぞれはっきりと区別できるように記述してください。
- (C)主題に特化した情報源
- 『鳥取砂丘のすべて』
- 『鳥取砂丘百科』
- 『鳥取砂丘史』
こうした情報源は、記事を書く上では欠かせません。おそらく記事執筆時の中心的な情報源になるでしょう。
AやBを参考にして全体の分量のバランスをとりつつ、百科事典に相応しい内容を詳述するのに助けになるでしょう。
- (D)専門的な情報源
- 『鳥取砂丘の植生』
- 『古期鳥取砂丘の地質』
- 『鳥取砂丘ビジターセンター図録』
ときには、Cだけでは説明がつかないような場合、より詳細に・より深い説明が必要な場合などには、こうした情報源を頼ることになるでしょう。
(例)鳥取砂丘には樹木は生えないので林業は行われていない(『鳥取砂丘百科』p.100)。 これだけでは、読者は「なぜ樹木が生えないのだろう」と疑問に感じるかもしれません。その場合には、どうして樹木が生えないかを解説するほうが、百科事典としてのぞましいかもしれません。しかしそれを書くには『鳥取砂丘の植生』を参照する必要があるのです。
ただしこうした情報源に依拠しすぎると、話の本筋を見失ってしまったり、全体のバランスを欠いてしまうこともあります。AやBを参考に、何をどこまで詳述するのかを検討することも必要です。
上の例では、「林業が行われていない」というのが話の記述なのであれば、「なぜ樹木が生えないのか」を詳述するのは避けたほうがいいかもしれません。ときには「あまり詳しく書きすぎない」という選択をしたり、別の節にしたり、記事を分割してより限定的なテーマに絞った別記事にするのもいいでしょう。
- (T)一時的な情報源
- 「○○新聞 20xx年10月15日付 鳥取砂丘で人気映画『スサノオの逆襲』のロケ始まる」
- 「△△新聞 20xx年12月24日付 イチゴの収穫が最盛期―鳥取砂丘」
こうした情報源は、記事にはあまり使わないほうがよく、少なくとも記事の中心にこうした情報源を据えるべきではありません。たいていは、こうしたものは雑多なエピソード、トリビア、一過性の話題にすぎないもので、百科事典的な記述に発展しないかもしれません。
ただし、「近年の動向」とか「映画に登場する鳥取砂丘」などのテーマで、小規模な節がなりたつぐらいの情報量があるならば、採用してもいいでしょう。
たとえば「劇中の舞台が鳥取砂丘で、実際に鳥取砂丘でロケが行われた」ようなものと、「劇中の設定は宇宙の砂漠惑星で、撮影費をおさえるために鳥取砂丘でロケが行われた」ような場合では、取り扱いに差をつけるべきでしょう。
いずれにしても理想的なのは、「映画のロケが行われた」という新聞記事(一次情報源)よりは、『鳥取砂丘百科』のなかで「鳥取砂丘でロケが行われた映画」のような二次言及を探すのがベターです。
- (X)主題から外れた情報源
- 『山田太郎の生涯』(第7章に鳥取砂丘を観光したときのことが書かれている)
- 『鳥取砂丘の父・稲場一郎博士の功績』(鳥取砂丘の研究について詳述されている)
- 『青森県の植生』(青森の植生の解説のなかで、鳥取砂丘の話題がでてくる)
- 『映画スサノオの逆襲パンフレット』(ロケ地が鳥取砂丘だったと言及がある)
- (Z)非専門家による情報源
- 芸能人Aのブログ「鳥取砂丘に行きました!」
- 画家Bの著書の中に登場する「鳥取砂丘の植物」に関する記述
こうしたものは、参考文献としては使用しないべきでしょう。ただし、幅広い情報源探しをしていくなかで、こうした情報源にあたるのも有益だったりします。そこからさらに新しい調べ物につながることがあります。