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鳥取県 岩美町 岩美郡 因幡国
愛宕神社 -
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岩井温泉の古刹、東源寺の背後に聳える愛宕山の頂に祀られる権現様。
岩井温泉は平安時代に藤原冬久が開いたという伝承がある。山城国宇治の出身だった冬久は、岩井の地で「宇治長者」と敬われた。冬久は岩井のあちこちに寺や神社を建立しているが、そのうち岩井温泉の中心部にある東源寺もその一つである。
創建
所在 鳥取県岩美郡岩美町岩井
祭神 秋葉大権現
秋葉大権現は火の神。秋葉神社参照。
社格
例祭

 鳥取県東部にある岩井温泉は、平安時代の貞観元年(859年)に山城国宇治の公家、藤原冬久が開いたとされ、『延喜式神名帳』(927年)では有馬温泉、道後温泉などと並んで「八古湯」の一つにも挙げられている。

 冬久は藤原北家に連なる名家の出自だったが、天然痘による皮膚病にかかって世を棄て、因幡国に流れ着いた。ところが岩井の地で天啓があり、温泉を見出して湯治をすると肌が治ったのだという。冬久はそのまま当地に住み着き、寺社を建立したり農業を指導したりして生涯を送ったのだという。

 岩井温泉には、「湯かむり」と呼ばれる奇習がある。ただ入浴するのではなく、柄杓を持って浴槽に入ると、柄杓で湯をすくって頭にかけるのだ。そのための「湯かむり唄」というのがある・・・ということになっているのだが、実際にYoutubeで湯かむり唄の動画を見ても、一回も湯を頭にかけないので、よくわからない。ただ、歌に合わせて柄杓と手で湯をバシャバシャ叩くので、湯飛沫がバンバン顔にかかって鬱陶しそうだ。私も何度も岩井温泉に行っているが、ぶっちゃけ静かにゆっくり湯に浸かりたいと思うのだが・・・。
 

▲岩井温泉付近の町並み

岩井を流れる蒲生川の右岸には御湯神社や宇治神社があるのに対し、左岸には東源寺、定信寺、西法寺などの寺がある。

そこらへんの住み分けには何かしら歴史的な意味があるのだろうか。たまたまかな?
標高84メートルの「愛宕山」の山裾に寺が立ち並んでいる。
こちらが定信寺。

手入れの行き届いた立派な庭だ。
 蒲生川の流域は、古くから金、銀、銅を産することで知られていた。蒲生川の最大の支流に「荒金川」というのがある。「あらがね」というのは「鉱(あらがね)」のことで、精製する前の金属鉱石の事を指す。ここでは金鉱石が採れたのだが、金の精錬技術がないために、鉱石のまま朝廷に献上していたのだという。

 戦国時代の末期、文禄2年(1593年)に蒲生川の源流に近い三日月山で銀鉱が発見された。盛んに銀の採掘が行われ、慶長3年(1598年)の記録では、ここから豊臣秀吉に9282枚の銀貨が献上された。この産出量は有名な生野銀山に次ぐほどだった。しかし間もなく山崩れがあり、それ以降はまったく銀がとれなくなり、鉱山は廃絶した。ここは今でも「銀山」地区という。

 この銀山地区には、最盛期には800軒もの家が犇めいていたと言う。銀鉱山が閉鎖されると、銀山の集落にあった仏寺が岩井に移ってきた。これはもともと「教念寺」といったが、いう寺が建立された。これが文政年間(1818-1830)に「定信寺」に名を改めたという。寺はもともと町の中心部にあったが、江戸時代の大火のあとは山裾に移転した。
潤いのある町並み。
  こちらは東源寺。冬久による開山と伝わり、定信寺よりも800年ぐらい長い歴史をもっている。

894年に円仁が「湯栄山如来寺」と命名したのだが、江戸時代に再建されるときに東の温泉の源なので「東源寺」と改称されたのだという。
東源寺の本尊は、もともとは冬久が彫った薬師如来像だった。その薬師如来の姿は、冬久に温泉の存在を教えた巫女の姿をもとにしたのだと伝えられている。

その東源寺の脇に、愛宕山への登り口がある。
山頂まで300メートル、
とあるが、それはあくまでも水平距離。
高さは海抜84メートルとのことで、
そこまでつづら折れの山道が続く。
 

というわけで山頂。

なにか妙ちくりんなモニュメントがある。

これは「湯かむりの塔」だ。
なにがどう「湯かむり」を表しているのか、私にはサッパリわからないが、
この塔が「岩井温泉のシンボル」ということになっている。

このモニュメントは、
岩美町白地(蒲生川の上流、銀山地区のお隣)出身の彫刻家、山本兼文氏によるもの。
山本氏は、鳥取市内に架かる「若桜橋」などのデザインをてがけている。

さてこの「湯かむりの塔」のそばに、愛宕神社がある。

といっても、キャンプ場のゴミ置き場みたいなブロック造りだ。
建物のなかは蜘蛛の巣がすごかった。

一般論で言うと、「愛宕神社」というのは「火の神様」を祀り、火除の霊験があるとされている。
資料では、ここは秋葉神社の秋葉権現を祀っているとされているが、それも火除の神様だ。

岩井温泉では過去に何度も町の全域を失うような大火に見舞われており、
そのために火防の神様を祀っているのだろう。


愛宕山の頂上には展望台がある。

ただし、手前の木立に遮られて温泉街は全く見えない。
(温泉宿や露天風呂が見えては困るので、温泉街が見えないことはいいことなのかもしれない。)

なお、このあたりには「愛宕山城」という山城があったことになっているが、それはここではない。ここからもう少し蒲生川の上流に行き、「長谷」という地区の裏山がそれである。




【鳥取県神社庁誌データ】
名称 愛宕神社 No

 

所在 鳥取県岩美郡岩美町宇治609番 TEL
FAX
例祭日
社格
祭神
交通
社殿
境内     
氏子世帯 崇敬者数 
摂末社
備考 

西暦 元号 和暦 事項 備考
   
     
 
             
             
             
           
 
             


【参考資料】
『鳥取県の地名(日本歴史地名大系)』(平凡社、1992)
『日本地名大辞典31 鳥取県』(角川書店、1982)


【リンク】

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参拝日:2015年06月16日
追加日:2017年02月16日