アーティアスのソースを表示

{{Round Table}}
__NOTOC__
{| style="width:800px;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Artaius1974.jpg|800px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|}
{{-}}
{| style="float:right;width:360px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Knightsofround.jpg|360px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|アーサー王と円卓の騎士
|}
　[[ラウンドテーブル]]はアメリカ競馬史上、最も偉大なグラスホースだった。世界賞金王、16度のレコード勝ち、北米チャンピオンサイアーと、競走馬としても種牡馬としても<ruby><rb>円卓の騎士</rb><rt>Knights of Round Table</rt></ruby>の名に相応しかった。

　「円卓の騎士」というのは古代ブリトン人の神話的英雄、アーサー王とその騎士たちのことである。騎士ランスロット、ギャラハッド、トリスタン、ガウェイン、それに魔術師マーリンなど、神話には数多くの登場人物がいる。しかしながらラウンドテーブルの産駒には、これらの騎士たちの名をつけられたような活躍馬がいない。競馬の世界では「ギャラハッド」といえば普通は[[Sir Gallahad]]（[[テディ]]産駒）を連想するし、「トリスタン」といえばオセアニアの[[Sir Tristram]]だろう。おそらく、ストレートな円卓の騎士たちの名前というのはイギリス人にとってありふれて使い古されたものであり、今さら使いようがなかったのではないか。代表産駒の中では[[Royal Glint]]（「王家の輝き」）とか、[[ボールドリック]]（「騎士章」）とか、[[デュール]]（「決闘」）とか、少し捻りを加えたものが散見できる程度である。

　そこへいくと、「アーティアス」という名前はかなり直接的である。「Artaius」は、日本では「アーティアス」と馬名登録されているが、日本の登録馬名に縛られない競馬文献ではラテン風に「アルタイウス」とか、ゴール人風に「アーテアス」などと表記されている。Artaiusというのは、ローマ人がガリア（彼らの発音に合わせるとゴール）を侵略する以前の時代に、ゴールで信仰されていた神の名前である。ゴール人はローマ人に攻められて北へ、西へ追いやられ、一部は海を渡って「アルビオン」と呼ばれていたブリテン島へ逃れた。そこでブリトン人の信仰と混淆し、Artaius（アーテアス）はArthur（アーサー）へと変化していったと考えられている。

　アーティアスは1977年のヨーロッパでトップクラスの活躍をした3歳馬である。[[ブラッシンググルーム]]を上回って同年の全欧3歳チャンピオンマイラーとする格付けもあった。たまたま同厩舎の同世代に[[ザミンストレル]]や[[アレジド]]がいたために目立たなくなってしまったが。当時はこれほどの実績がある競走馬が日本へ輸入されるのは滅多にない事で、[[マルゼンスキー]]や[[パーソロン]]よりも高い種付け料をとって供用されたのだった。
==血統==
{{五代血統表α
|name =Artaius
|和=*[[アーティアス]] 
|主 = ジョージ・ゲッティ2世夫人（ジャクリーン・ゲティ）
|種 = サラブレッド
|年 = 1974
|性 = 牡馬
|毛 = 鹿毛
|誕 = 1974.02.26
|死 = 
|国 = {{F-USA}}
|県 = ケンタッキー州
|牧 = 
|者 = [[ジョン・ウェズリー・ヘインズ2世]]夫人
|調 = [[ヴィンセント・オブライエン]]
|厩 = 
|厩地 = 
|f = [[Round Table]]
|f毛=鹿毛
|f年=1954
|m = Stylish Pattern
|m毛 =鹿毛
|m年=1961
|ff = [[Princequillo]]
|ff毛=鹿毛
|ff年=1940
|fm = [[Knight's Daughter]]
|fm毛=鹿毛
|fm年=1941
|mf = [[My Babu]]
|mf毛=鹿毛
|mf年= 1945
|mm = Sunset Gun
|mm毛=栗毛
|mm年=1955
|fff = [[Prince Rose]]
|ffm = [[Cosquilla]]
|fmf = [[Sir Cosmo]]
|fmm = [[Feola]]
|mff = [[Djebel]]
|mfm = [[Perfume]]
|mmf = [[Hyperion]]
|mmm = Ace of Spades
|ffff = [[Rose Prince]]
|fffm = Indolence
|ffmf = [[Papyrus]]
|ffmm = Quick Thought
|fmff = [[The Boss]]
|fmfm = [[Ayn Hali]]
|fmmf = [[Friar Marcus]]
|fmmm = [[Aloe]]
|mfff = [[Tourbillon]]
|mffm = [[Loika]]
|mfmf = [[Badruddin]]
|mfmm = [[Lavendula]]
|mmff = [[Gainsborough]]
|mmfm = [[Selene]]
|mmmf = [[Atout Maitre]]
|mmmm = Brave Empress
|fffff = [[Prince Palatine]]
|ffffm = Eglantine
|fffmf = {{×|[[Gay Crusader]]}}
|fffmm = Barrier
|ffmff = [[Tracery]]
|ffmfm = Miss Matty
|ffmmf = [[White Eagle]]
|ffmmm = Mindful
|fmfff = [[Orby]]
|fmffm = Southern Cross
|fmfmf = [[Desmond]]
|fmfmm = [[Lalla Rookh]]
|fmmff = [[Cicero]]
|fmmfm = Prim Nun
|fmmmf = [[Son-in-Law]]
|fmmmm = Alope
|mffff = [[Ksar]]
|mfffm = [[Durban]]
|mffmf = {{×|[[Gay Crusader]]}}
|mffmm = [[Coeur a Coeur]]
|mfmff = [[Blandford]]
|mfmfm = [[Mumtaz Mahal]]
|mfmmf = [[Pharos]]
|mfmmm = [[Sweet Lavender]]
|mmfff = [[Bayardo]]
|mmffm = [[Rosedrop]]
|mmfmf = [[Chaucer]]
|mmfmm = [[Serenissima]]
|mmmff = [[Vatout]]
|mmmfm = Royal Mistress
|mmmmf = [[Tiberius]]
|mmmmm = Molly Adare
|FN = 14-c
|母系 = 
|初出 = 2
|終出 = 3
|戦 = 7
|勝 = 3
|勝備考 = 
|タイトル = 
|鞍 = [[エクリプスS]]{{英G1}}、[[サセックスS]]{{英G1}}、[[クラシックトライアル]]{{英G3}}、②[[ベンソン＆ヘッジズGC]]{{英G1}}、[[仏ダービー]]{{仏G1}}、[[ベレスフォードS]]{{愛G2}}
|金 = ￡91,307、₣360,000
|CS = 
|CJS = 
|CBMS = 
|駒 = 
}}
*{{JBIS}} [http://www.jbis.or.jp/horse/0000333725/pedigree/]
*{{EQ}} [https://www.equineline.com/Free-5X-Pedigree.cfm?page_state=ORDER_AND_CONFIRM&reference_number=601392&registry=T&horse_name=Artaius&dam_name=Stylish%20Pattern&foaling_year=1974&nicking_stats_indicator=Y]
*{{PO}} [http://www.pedigreequery.com/artaius]
*{{YT}} [http://ahonoora.com/artaius.html]
*{{GS}} [http://www.galopp-sieger.de/galoppsieger/en/pferd_html?pschl=ArtaiusRound%20Tabl Artaius]
===血統背景===
　アーティアスの父[[ラウンドテーブル]]は、アメリカ競馬史上、芝コースでは最良の成績をあげた1頭で、43勝をあげて1958年に全米年度代表馬になった。種牡馬としても大成功をおさめ、1972年の北米種牡馬チャンピオンに輝いた。アーティアスの母、スタイリッシュパターン(Stylish Pattern)の母系はモリーアデア([[Molly Adare]])に遡る。この系統からは[[ブリガディアジェラード]]や[[ヴィンテージクロップ]]が出ている。

==出自==
===生産者===
{| style="float:left;width:120px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Jwhanesjr.jpg|120px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|財務省副長官就任時のヘインズ2世
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Hopehanes.jpg|120px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|夫人のホープはケンタッキー出身。
|}
　アーティアスはアメリカ・ケンタッキー州の[[ジョン・ウェズリー・ヘインズ2世]]による生産馬である。ヘインズ2世はアメリカの衣料大手のヘインズ(Hanes)の創業者の息子で、金融に関する手腕を発揮し、ニューヨーク証券取引所の理事となった。さらにフランクリン・ルーズベルト大統領によってアメリカ財務省の副長官に抜擢された人物である<ref name="NYT_19871231"/>。

　ヘインズ2世は1番目の妻と死別した後、1937年にホープという女性と再婚した。彼女はアメリカの馬産地の中心として名高いケンタッキー州ダンヴィルで生まれ育った。学生時代には、のちにハリウッドを代表する女優となるキャサリン・ヘップバーンとルームメイトだったという。彼女は競走馬の生産を趣味にしており、その影響でヘインズ2世もサラブレッドの世界に足を踏み入れることになっていった<ref name="NYT_19920814"/>。

　夫妻は共同馬主の一員として米古牡馬チャンピオンの[[ボールドビッダー]](Bold Bidder)をてがけたが、彼らが名高いのは主に種牡馬の所有による。夫妻は数々の一流種牡馬をシンジケートを組んで導入した。その代表が[[ロイヤルチャージャー]]、[[ナシュア]]、[[マイバブ]]である<ref name="NYT_19920814"/>。

　ヘインズ2世は、1953年から[[ニューヨーク競馬協会]](NYRA)の開催委員を務めるようになり、翌1954年にはNYRAの会長に就任した。ヘインズのもとで、[[アケダクト競馬場]]の再建(1959年に再開)が行われた。ヘインズは1960年の末に心臓を患い会長職を辞したが、のちに競馬の名誉の殿堂博物館の館長をつとめ、晩年には「模範的ホースマン」として殿堂入りを果たした<ref name="NYT_19871231"/>。

{{-}}

===馬主===
　アーティアスは1歳の時に競りに出され、11万ドルで落札された。購買したのはジョージ・Ｆ・ゲティ2世([[:en:George F. Getty II|George Getty II]])の未亡人、ジャクリーン(Jacqueline Getty)の代理人だった。

　ジョージ・Ｆ・ゲティ2世(1924-1973)は、アメリカの石油小売大手「ゲティ石油(Getty Oil)」の創業社長の御曹司である。ゲティ石油は、法律家だったゲティ2世の祖父（ゲティ1世、George Franklin Getty、1855-1930）が興した企業で、ゲティ2世の父ジャン・ポール・ゲティ(J. Paul Getty,1892-1976)が油田を掘り当てて会社を大きく成長させ、世界一の大富豪となった。

　父のジャン・ポールは非常に手堅い人物だった。1973年に孫が誘拐されて1700万ドルの身代金を要求されると、これをにべもなく断った<ref group="注">ジャン・ポールが身代金の支払いを拒否したのは、彼には全部で14人の孫がいて、もしも一度身代金を払うとほかの孫にも誘拐の危険が及ぶと考えたためである。</ref>。犯人たちは孫の耳を切り落として送りつけ、身代金を払わないと孫を細切れにして送りつけると脅し、ジャン・ポールは渋々、最終的に身代金を220万ドルまで値切って支払った。（孫は解放されたが、心に深い傷を負い、酒とドラッグに溺れて若死にした。）

　ゲティ2世は父とは違い、豪奢にふるまう人物だった。若いころに購入したロスアンジェルスの豪邸は「ゲティ・ハウス」と呼ばれ、後にロスアンジェル市に寄贈され、いまは市長公邸となっている。その一方で、父の下でゲティ石油を任されて大いに苦しんだらしい。誘拐事件のあった年、ゲティ2世は変死体で発見された。心労による自殺であるとか、アルコール中毒であるとか、オーバードーズであるとか噂が立ったが、父のジャン・ポールは沈黙を守った。

　ゲティ2世は生前、3回の結婚と2度の離婚があった。3番目の妻がジャクリーンである。ジャクリーンは1971年にゲティ2世と結婚し、わずか2年でゲティ2世と死別した。ジャクリーンがアーティアスを購入したのはその2年後である。彼女は「Jacqueline Getty Phillips」の名義でサラブレッドの生産者・馬主となっており、1983年の米古牡馬チャンピオンのベイツモーテル([[Bates Motel]]、[[サンタアニタH]]{{米G1}}、[[モンマスH]]{{米G1}}、[[サンアントニオH]]{{米G1}})はジャクリーンによる生産・所有馬である。（同馬は息子のMichael Riordanとの共有名義。）

===馬名の由来===
{| style="float:right;width:120px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Beargod.jpg|180px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|神「Artio」がクマと対峙する場面の像（2世紀）。「Artio」は「クマ」の意。
|}
　「Artaius」というのは、古代ケルト人の一派、ガリア人（フランス風にはゴール人）がクマを神格化した神の名前（アルタイウス）のことである。1997年に邦訳されて刊行された『凱旋門賞の歴史』では、アーティアスのことを「アルタイウス」と表記している。（1997年だから、その頃既に日本に輸入されていたどころか、引退間際だったのだが。）。「アルタイウス」なる表記はラテン語読みであり、本来のゴール人ふうに読めば「アーテアス」のようになる。（『フランス競馬百年史』では「アーテアス」表記。）

　アーテアスはしばしば熊の皮を纏った戦士の姿で描かれるが、実際のところは、古代ガリア人の信仰はローマ時代に塗り替えられてしまっており、アルタイウスの原初的な姿はよくわかっていない。フランスのイゼール県にある古代の遺跡の碑文にはラテン文字でその名が刻まれており、ローマ神話の神メルクリウス（英語風にはマーキュリー）と同一視される場合もある。

　もともとアルタイウスはガリア人の天空神でもあり、牧歌神でもあった。しかし、ローマ人がガリアへ侵攻するようになり、ガリア人がフランスからブリテン島へ追いやられるようになると、アルタイウスはブリトン人の天空神グウィディオン（Gwydion）と混淆するようになった。グウィディオンは偉大な魔術師でもあり、ウェールズに文明をもたらした神でもある。

　一説では、アルタイウス ''Artaius''とグウィディオンの神としての性格がレイン半島（Lleyn）で合体した結果、イギリスのアーサー ''Arthur'' 王伝説が生まれたとも言う。この説では、アルタイウスはアーサーに、魔術師グウィディオンは魔術師マーリンの原型になっていったとしている。

==競走馬として==
===全出走履歴===
{| style="width:97%; margin-left:1em; border-width:0px 0px 2px 0px; border-color:#00366c; border-style:solid; border-collapse:collapse; ; text-align:left;color:#00366c;"
|-style="border-bottom:2px solid #00366c"
| 齢
| 年
| 月
| 日
| 場
| レース名
| 距
| m
| 着順
| 1着馬(2着馬)
|-style="border-bottom:1px solid #00366c"
| 2
| 1976
| 10
| 16
| {{F-IRE}}[[カラ競馬場|カラ]]
| '''[[ベレスフォードS]]''' {{愛G2}}
| 8F
| 1609
| 2
| Orchestra
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 3
| 1977
| {{0}}4
| 23
| {{F-GB}}[[サンダウン競馬場|サンダウン]]
| '''[[クラシックトライアルS]]''' {{英G3}}
| 10F
| 2011
| style="font-size:1.3em;"| '''1'''
| ([[Night Before]])
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}5
| 14
| {{F-IRE}}カラ
| '''[[愛2000ギニー]]''' {{愛G1}}
| 8F
| 1609
| 11
| [[Pampapaul]]
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}6
| {{0}}5
| {{F-FRA}}[[シャンティイ競馬場|シャンティイ]]
| '''[[仏ダービー]]''' {{仏G1}}
| 
| 2400
| style="font-size:1.3em;"| 2
| *[[クリスタルパレス]]
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}7
| {{0}}2
| {{F-GB}}サンダウン
| '''[[エクリプスS]]''' {{英G1}}
| 10F
| 2011
| style="font-size:1.3em;"| '''1'''
| ([[Lucky Wednesday]])
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}7
| 27
| {{F-GB}}[[グッドウッド競馬場|グッドウッド]]
| '''[[サセックスS]]''' {{英G1}}
| 8F
| 1609
| style="font-size:1.3em;"| '''1'''
| ([[Free State]])
|-style="border-bottom:1px solid #00366c"
| 
| 
| {{0}}8
| 16
| {{F-GB}}[[ヨーク競馬場|ヨーク]]
| '''[[ベンソン＆ヘッジズGC]]''' {{英G1}}
| 10F110yds
| 2092
| style="font-size:1.3em;"| 2
| [[Relkino]]
|}

===オブライエン厩舎のステーブルメイト===
{| style="float:left;width:180px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Artaius.jpg|180px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|アーティアス
|}
{| style="margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|馬名||（英名）||父馬||産地||購買価格||馬主
|-
|ヴァリンスキー||[[Valinsky]]||[[Nijinsky]]||{{F-GB}}||||ロバート・サングスター他
|-
|アーティアス||Artaius||[[Round Table]]||{{F-USA}}||11万ドル||ジョージ・ゲッティ2世夫人
|-
|ザミンストレル||[[The Minstrel]]||[[Northern Dancer]]||{{F-USA}}||20万ドル||ロバート・サングスター他
|-
|アレジド||[[Alleged]]||[[Hoist the Flag]]||{{F-GB}}||17.5万ドル||ロバート・サングスター他
|-
|パドログ||[[Padroug]]||[[Sir Ivor]]||{{F-USA}}||　||
|-
|}
　アーティアスはアイルランドの[[ヴィンセント・オブライエン]]調教師の下へ送り込まれた。オブライエン師は既に[[ニジンスキー]]で三冠を制するなどイギリスで名声を恣ままにしており、掛け値無しに世界最高の調教師の1人だった。オブライエン師は1950年代にアイルランド南部のティペラリー州に「[[バリードイル厩舎]]([[:en:Ballydoyle]])」を拓いており、アーティアスもそこへ入厩した。

　この年、アメリカからオブライエン調教師のもとにやってきた若馬のなかには、[[ザミンストレル]](The Minstrel)と[[アレジド]]([[Alleged]])がいた。どちらもアメリカを代表する馬主のひとり、[[ロバート・サングスター]]の所有馬である。ザミンストレルはカナダの名伯楽[[エドワード・プランケット・テイラー|E.P.テイラー]]の生産馬で、テイラー＋ノーザンダンサー産駒＋オブライエン厩舎というのは[[ニジンスキー]]と同じ組み合わせだった。ザミンストレルはイギリスクラシックの王道を歩んでいくのに対し、アーティアスはその影に隠れて裏街道を進むことになった。

　ザミンストレルは2歳の頃から[[デューハーストステークス]]から[[2000ギニー]]、[[英ダービー]]、[[愛ダービー]]、そして[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスS]]と挑み、2000ギニーを除く4つの大レースを制した。そうして[[ノーザンダンサー]]の最高傑作ともいえる競走馬となったのである。

　ステーブルメイトのアーティアスはザミンストレルとかち合わないように、アイルランド、フランスを転戦し、イギリスに戻って中距離路線を歩んだ。たった1度だけ、よりによってザミンストレルとの対戦になった愛2000ギニーで大敗してしまったが、それ以外は2着より落ちたことはなく、大レースを制した。

　アレジドは[[ホイストザフラッグ]]産駒で、当初は4万ドルでも買い手が現れなかったような馬だった。2歳になってようやく17.5万ドルでサングスターが購入したものである。アレジドのほうは晩成型で、アーティアスやザミンストレルとは同じレースで走ることはなかった。

{{-}}

===2歳時（1976年）===
　アーティアスは1976年秋のアイルランドでデビュー戦を迎えた。[[レスター・ピゴット]]騎手を背に、10月の[[カラ競馬場]]でのG2戦[[ベレスフォードステークス]]（1マイル≒1609m）に出走し、オーケストラ([[Orchestra]]<ref group="注">オーケストラは父Tudor Music。ベレスフォードS{{愛G2}}のほか、[[ジョンポーターS]]{{英G2}}、[[ニジンスキーS]]{{愛G2}}、[[ホワイトホールS]]{{愛G3}}に勝ち、[[愛セントレジャー]]{{愛G1}}2着、[[レーシングポストT|フューチュリティS]]{{英G1}}2着。</ref>)に次ぐ2着になった。2歳の出走はこの1走だけにとどまった。
{{Template:Result
|年月日 = 1976.10.16
|競馬場 = {{F-IRE}}[[カラ競馬場|カラ]]
|レース名 = [[ベレスフォードステークス]](G2)<br>Beresford Stakes
|距離 = 8F
|m = 1609
|賞金 = 
|頭数 = 6
|オッズ = 
|倍率 = 
|人気順 =
|ストーン = 
|lbs = 
|Kg = 
|騎手 = [[レスター・ピゴット]]
|着順 = 2
|1着馬 = [[Orchestra]]
|1着斤量 = 126
|着差 = 2馬身
|2着馬 = アーティアス
|2着斤量 = 
|3着着差 =2 <sup>1</sup>/<sub>2</sub>馬身
|3着馬 = Irony
|3着斤量 = 
}}

　この年のイギリス2歳牡馬戦線は、J.O.トビン([[J.O.Tobin]])の独擅場だった。J.O.トビンの父は1971年にヨーロッパの覇者となった[[ミルリーフ]]と同じ[[ネヴァーベンド]]、母は名競走馬ヒルシェイド([[Hill Shade]]、[[ナッソーS]]や[[サンチャリオットS]]優勝馬)、半姉は二冠牝馬[[ミステリアス]]([[Mysterious]])という一流血統である。J.O.トビンはレスター・ピゴット騎手を背に[[リッチモンドS]]、[[シャンパンS]]を鮮やかに勝ち、文句なしにこの年のイギリス最強2歳馬とみなされた。（J.O.トビンが負かした馬が、あとで[[ミドルパークS]]や[[チェヴァリーパークS]]に勝った。）

　J.O.トビンはヨーロッパ制覇を目論んでフランスの[[グランクリテリウム]]に挑んだのだが、これを粉砕したのが[[ブラッシンググルーム]]である。憤慨したJ.O.トビンの生産者・馬主はアメリカ人で、J.O.トビンを本国へ連れ帰ってしまい、ヨーロッパでは2度と走らなかった。（J.O.トビンは古馬になってアメリカのチャンピオンスプリンターになった。）

　イギリスのフリーハンデでは、J.O.トビンが2位以下を5ポンドも引き離して2歳チャンピオンになった。アーティアス・ザミンストレルと同厩舎のパドログ([[Padroug]]、父[[Sir Ivor]]。[[エーコムS]]）が2位で、デューハーストSの勝ち馬ザミンストレルは、さらに3ポンド下の3位の低評価だった。（この評価はのちに叩かれた）

【1974年生まれの主な2歳馬】
{| style="margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 );font-size:0.8em;"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|width="120px"|馬名||width="100px"|（英名）||産地||width="100px"|父馬||主な戦績
|-
|[[ブラッシンググルーム]]||[[Blushing Groom]]||{{F-FRA}}||[[Red God]]||'''仏2歳牡馬チャンピオン'''。[[グランクリテリウム]]{{仏G1}}、[[モルニ賞]]{{仏G1}}、[[サラマンドル賞]]{{仏G1}}、[[ロベールパパン賞]]{{仏G1}}
|-
|J.O.トビン||[[J.O.Tobin]]||{{F-GB}}||[[Never Bend]]||'''英2歳牡馬チャンピオン'''。[[リッチモンドS]]{{英G2}}、[[シャンパンS]]{{英G2}}
|-
|パドログ||[[Padroug]]||{{F-USA}}||[[Sir Ivor]]||[[エーコムS]]{{英G2}}
|-
|タキュプス||[[Tachypous]]||{{F-GB}}||[[Hotfoot]]||[[ミドルパークS]]{{英G1}}
|-
|ザミンストレル||[[The Minstrel]]||{{F-USA}}||[[Northern Dancer]]||[[デューハーストS]]{{英G1}}
|-
|マルゼンスキー||　||{{F-JPN}}||[[Nijinsky]]||'''日2歳牡馬チャンピオン'''。[[朝日杯3歳S]]
|-
|}

===3歳時（1977年）===
====春====
3歳春は、英国ダービーへ向けてのステップレースである[[サンダウン・クラシックトライアル]]（G3・1マイル2ハロン7ヤード≒2018m）からの始動になった。アーティアスは1対1（2.0倍）の鉄板となり、前評判通りナイトビフォー([[Night Before]]<ref group="注">父Vaguley Noble。ダービートライアルステークス（リングフィールド競馬場・G3）は3着。後に種牡馬。</ref>)以下に楽勝した。

{{Template:Result
|年月日 = 1977.{{0}}4.23
|競馬場 = {{F-GB}}[[サンダウン競馬場|サンダウン]]
|レース名 = [[クラシックトライアル]](G3)<br>Classic Trial Stakes
|距離 = 1M2F7Y
|m = 2018
|賞金 = 
|頭数 = 5
|オッズ = 1/1
|倍率 = 2.0
|人気順 = 1
|ストーン = 8.9
|lbs = 121
|Kg = 54.88
|騎手 = [[レスター・ピゴット]]
|着順 = '''1'''
|勝時計 = 2.11.27
|1着馬 = アーティアス
|1着斤量 = 121
|着差 = 2 <sup>1</sup>/<sub>2</sub>馬身
|2着馬 = [[Night Before]]
|2着斤量 = 126
|3着着差 = 7馬身
|3着馬 = Tamanaco
|3着斤量 = 121
}}

　ダービーTRの4日後に行われた英2000ギニーでは、ガチガチの本命ザミンストレルはスタートで大きく出遅れた上に、人気薄[[ネビオロ]]([[:en:Nebbiolo (horse)|Nebbiolo]])の大逃げ作戦に嵌って3着に敗れた。その2週間後の[[愛2000ギニー]]にネビオロが出走することになり、雪辱のためザミンストレルもこのレースに出ることになった。アーティアスもこのレースに臨んだ。アーティアスが同厩舎のザミンストレルと一緒に出走するのは、これが最初で最後である。

　ザミンストレルは、見事にネビオロに1馬身先着した。が、わずかに短頭差だったが、両馬をまとめて負かしてしまったのが人気薄（16対1）の[[パンパポール]]([[:en:Pampapaul]])である。ネビオロとパンパポールはどちらも*[[イエローゴッド]]産駒で、祖父はレッドゴッド([[Red God]])だった。J.O.トビンを打ち負かしたフランスの[[ブラッシンッググルーム]]もレッドゴッド産駒なので、この年の春のヨーロッパはレッドゴッド旋風が吹き荒れたというべきである。

　このレースで、アーティアスは大きく遅れた着外になった。アーティアスの全競走成績をみると、大きく崩れたのはこの1戦だけで、あとは2着より下に落ちたことはない。しかし僚馬ザミンストレルとの唯一の直接対決で大きく遅れたことで、アーティアスの印象はしばらくのあいだ、大きく損なわれることになった。
{{Template:Result
|年月日 = 1977.{{0}}5.14
|競馬場 = {{F-IRE}}[[カラ競馬場|カラ]]
|レース名 = [[愛2000ギニー]](G1)<br>Irish 2000 Guineas
|距離 = 8F
|m = 1609
|賞金 = 
|頭数 = 21
|オッズ = 
|倍率 = 
|人気順 = 
|ストーン = 
|lbs = 
|Kg = 
|騎手 = 
|着順 = 11
|1着馬 = [[Pampapaul]]
|1着斤量 = 126
|着差 = 短頭
|2着馬 = [[The Minstrel]]
|2着斤量 = 126
|3着着差 = 1馬身
|3着馬 = [[Nebbiolo]]
|3着斤量 = 126
}}
　オブライエン厩舎では重大な選択　―直前に迫ったダービーにどの馬を出すか―　を迫られ、議論が紛糾した。どうやらザミンストレルはマイラーのようだ（ピゴットだけは、逆にザミンストレルはステイヤーで、両ギニーの敗戦の原因は距離不足だと主張した。）。アーティアスは大負けしてしまった。最有力とみていたヴァリンスキー([[Valinsky]]、父[[ニジンスキー]]、母は英オークス馬[[Valoris]])は、ステップレースの1つ[[ロイヤルウィップS]](G3)で敗れてしまった。よりにもよってヴァリンスキーを負かしたのは、オブライエン厩舎のなかでも一番見込みがないと目されていたアレジドだ（ロイヤルウィップSは殿人気だった）。しかしアレジドではあまりにもキャリアが浅すぎて過酷なダービーは無理だろう・・・。

　これといった決め手がない中で、最後はレスター・ピゴット騎手の意見によって選択が決まった。ピゴットは、全ての馬がダービーに出るならザミンストレルに乗る、といったのだ。ザミンストレルと、当初の候補馬ヴァリンスキーのダービー出走が決まり、アーティアスはフランスダービーへ、アレジドはアイルランドに残って残念ダービーの[[ガリニュールS]]で真価を問うことになった。

　アガ・カーン4世はイギリスダービー制覇の野望を果たすため、ブラッシンググルームを連れてやってきた。大本命はブラッシンググルームとなり、ザミンストレルが2番人気、ネビオロとラッキーソブリンが3番人気を分け合った。レースはザミンストレルの勝利に終わったが、これはピゴット騎手の名騎乗によるところが大きいとみなされている。なお、バリードイル厩舎のもう1頭、ヴァリンスキーは完走した馬の中では最下位に終わった。ステップレースでアーティアスと争ったナイトビフォーが競走中止である。

　一方、アレジドはガリニュールSをオーケストラ相手に快勝し、ロイヤルウィップSがフロックでないことを証明した。

　アーティアスが向かったフランスの3歳戦線は、図抜けたブラッシンググルームが渡英したことで、一転して戦国状態になった。[[ダリュー賞]]は*[[カーホワイト]]が制し、[[ノアイユ賞]]はカトゥ([[Catus]])が勝ち、直前の[[リュパン賞]]はファルリ([[Pharly]])が勝った。ただしリュパン賞ではゴール前で*[[クリスタルパレス]]の進路が塞がる不利があった。

　フランスダービーに現れた外国遠征馬はアーティアスただ1頭だったが、アーティアスにもかなりチャンスはありそうだった。

　スタートしてすぐに*クリスタルパレスのペースメーカーであるコンサーティノ(Concertino)がハイペースで逃げ、クリスタルパレスは2番手につけた。最終コーナーでクリスタルパレスが進出をはじめ、残り200mで先頭に立ってそのまま押し切った。アーティアスは後ろからよく伸びたが、半馬身及ばず2着に敗れた。3着にはコンサーティノが粘りきった<ref group="注">コンサーティノは後年、南アフリカで種牡馬になり、障害戦で大成功した。</ref>。
{{Template:Result
|年月日 = 1977.{{0}}6.{{0}}5
|競馬場 = {{F-FRA}}[[シャンティイ競馬場|シャンティイ]]
|レース名 = [[フランスダービー]](G1)<br>Prix du Jockey Club
|距離 = 
|m = 2400
|賞金 = 
|頭数 = 14
|オッズ = 
|倍率 = 
|人気順 = 
|ストーン = 
|lbs = 
|Kg = 
|騎手 = [[レスター・ピゴット]]
|着順 = 2
|1着馬 = [[クリスタルパレス]]
|1着斤量 = 58kg
|着差 = <sup>1</sup>/<sub>2</sub>馬身
|2着馬 = アーティアス
|2着斤量 = 
|3着着差 = <sup>1</sup>/<sub>2</sub>馬身
|3着馬 = Concertino
|3着斤量 = 
}}

====夏====
{| style="float:right;width:180px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:1977eclipses.jpg|180px|link=]]||[[ファイル:1977eclipses-artaius.jpg|180px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|1977年エクリプスS。直線で後続を突き放すアーティアス||最後は抑える余裕をみせてゴール。3着以下は大きく離された。
|}
　7月になると、アーティアスはサンダウン競馬場の[[エクリプスステークス]]（10ハロン7ヤード）に出走した。初めての古馬との対戦であり、G1優勝歴もないアーティアスだったが、フランスダービーの好走を評価されて9対2（5.5倍）の人気になった。

　アーティアスはスタートからハナに立ち、そのまま先頭で最終コーナーを回ると、直線では後続をぐんぐん引き離した。前走で[[プリンスオブウェールズS]]を勝ってきた4歳馬ラッキーウェンズデー([[Lucky Wednesday]])だけが必死に追いすがったが、他馬は大きく後ろに置いて行かれた。アーティアスの方には最後は余力を残して流す余裕があり、1馬身半差の2着にラッキーウェンズデー、3着[[アークティックターン]](Arctic Tern)以下は8馬身離された。アーティアスの走破タイムは、1975年のピーターウォルウイン([[Peter Walwyn]])の記録を塗り替えるレースレコード（2分05秒30<ref name="century"/>）だった。

*{{tube}}[https://www.youtube.com/watch?v=N9Z9FXzy80o 1977 Joe Coral Eclipse Stakes]
{{Template:Result
|年月日 = 1977.{{0}}7.{{0}}2
|競馬場 = {{F-GB}}[[サンダウン競馬場|サンダウン]]
|レース名 = [[エクリプスステークス]](G1)<br>Eclipse Stakes
|距離 = 10F7Y
|m = 2018
|賞金 = ￡40,000
|頭数 = 10
|オッズ = 5.5
|倍率 = 9対2
|人気順 = 1
|ストーン = 8.8
|lbs = 120
|Kg = 54.43
|騎手 = [[レスター・ピゴット]]
|着順 = 2
|勝時計 = *2.05.03{{color|red|R}}
|1着馬 = アーティアス
|1着斤量 = 120
|着差 = 1 <sup>1</sup>/<sub>2</sub>馬身
|2着馬 = [[Lucky Wednesday]]
|2着斤量 = 133
|3着着差 = 8
|3着馬 = [[Arctic Tern]]
|3着斤量 = 133
}}
{| style="float:right;width:180px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Artaiustoscore.png|350px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|アーティアス優勢を伝える予想紙。右の写真はネビオロ
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Sussex.png|350px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|サセックスSの出馬表。この新聞ではアーティアスの倍率は7対4。
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Sussex2.png|350px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|「オブライエン師は今年のグロリアス・グッドウッドには1頭しか出さないが、そのアーティアスが勝つだろう」と報じる当日の新聞
|}
　スピードに自信を深めた陣営は、[[グッドウッド競馬場]]のマイル戦、[[サセックスステークス]](G1・8F)へ駒を進めた。

　ここには、同世代の[[2000ギニー|2000ギニー馬]][[ネビオロ]]([[:en:Nebbiolo (horse)|Nebbiolo]])と、[[1000ギニー|1000ギニー馬]]*[[ミセスマカディー]]([[:en:Mrs McArdy]]<ref group="注">のちに日本に輸入され、子孫には[[アドマイヤコジーン]]などがいる。</ref>)が揃い踏みし、この世代のマイル王決定戦の様を呈した。アーティアスは愛2000ギニーでいちどネビオロと対戦しており、その時はアーティアスは凡走している。しかし、今はその頃のアーティアスとは違う。

　前走のレコード勝ちの鮮烈な印象によって、アーティアスが両ギニー優勝馬をおさえて6対4（2.5倍）の本命となった。牝馬*ミセスマカディーが続き、ネビオロは3番人気だった。クローネンクラニッヒ([[Kronenkranich]])はドイツからの遠征馬で、イタリアのG1[[エミリオトゥラティ賞]]([[Premio Emilio Turati]],1600m)の勝ち馬である。オーヴァク([[Ovac]])はイタリア2000ギニー(G2)など多くの重賞を制したイタリアのチャンピオンマイラーで、[[ヘンリー・セシル]]調教師のもとへ移籍しての出走だった。

　アーティアスのマイル適正を不安視する声もあったが、人気通り、アーティアスは先手を奪い、そのまま楽勝した。2着はフリーステイト([[Free State]])、3着はレルキノ([[:en:Relkino]])だった。フリーステイトは前年の[[クリスタイルマイル]]の勝ち馬、レルキノは前年の[[ダービー]]2着馬である。

{{Template:Result
|年月日 = 1977.{{0}}7.27
|競馬場 = {{F-GB}}[[グッドウッド競馬場|グッドウッド]]
|レース名 = [[サセックスステークス]](G1)<br>Sussex Stakes
|距離 = 8F
|m = 1609
|賞金 = ￡40,000
|頭数 = 11
|オッズ = 2.5
|倍率 = 6対4
|人気順 = 1
|ストーン = 8.10
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[レスター・ピゴット]]
|着順 = '''1'''
|勝時計 = 1.39.51
|1着馬 = アーティアス
|1着斤量 = 122
|着差 = 1 <sup>1</sup>/<sub>2</sub>馬身
|2着馬 = [[Free State]]
|2着斤量 = 
|3着着差 = 6
|3着馬 = [[Relkino]]
|3着斤量 = 
}}

　マイル戦を圧勝したアーティアスは、8月には[[ヨーク競馬場]]へ向かい、中距離のチャンピオン戦、[[ベンソン＆ヘッジズゴールドカップ]](G1,10F110yds(≒2092m))
に出走した。このレースには6頭が集まったが、アーティアスには1対1（2.0倍）を切るほどの倍率がつけられた。
{| style="float:right;width:180px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Artaiusbensonandhedges.jpg|180px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|1977年ベンソン＆ヘッジズGC。最内でアーティアスが先頭だが、外からレルキノがかわしにかかる。
|}
　イギリスでは馬券はブックメーカーが思い思いの倍率をつけ、売上と倍率は連動しない。倍率が1対1を下回る、ということは、馬券を買う側のほうブックメーカーより大きなリスクを背負うわけで、イギリスの常識で言うと馬券を買うに値しないオッズである。つまり、ブックメーカーはアーティアスへの賭けを受けたくないのだ。だから、倍率が低いことと、馬券の売上が多い、人気があるということにはならない。

　ところがどうしたことか、アーティアスは序盤から行き足が悪く、先手を取れなかった。レースはそのまま進み、アーティアスは直線で一度は先頭に立ったものの、レルキノに並びかけられてからは抵抗することができず、あっけなくかわされた。最後は騎手が諦めたので、レルキノとは4馬身の差がひらいて2着をキープしただけに終わった。3着にはイタリアダービー馬オレンジベイ([[Orange Bay]])が入っている。

　前走のサセックスSのときは、レルキノとの斤量差が1ポンド余計にあったとはいえ、7馬身半も差をつけていたのが逆転したのだから、アーティアス側にしてみれば不可解な敗戦となった。レルキノの馬券は33対1（34倍）という大穴になった。

*{{tube}}[https://www.youtube.com/watch?v=ZTIxk7ZFRKs ベンソン&ヘッジズGCのゴール前]

{{Template:Result
|年月日 = 1977.{{0}}8.16
|競馬場 = {{F-GB}}[[ヨーク競馬場|ヨーク]]
|レース名 = [[ベンソン&ヘッジズGC]](G1)<br>Benson&Hedges Gold Cup
|距離 = 10F110Y
|m = 2092
|賞金 = 
|頭数 = 8
|オッズ = 
|倍率 = 
|人気順 = 1
|ストーン = 8.10
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[レスター・ピゴット]]
|着順 = '''1'''
|勝時計 = 2.09.2
|1着馬 = [[Relkino]]
|1着斤量 = 132lbs
|着差 = 4馬身
|2着馬 = アーティアス
|2着斤量 = 122
|3着着差 = 2
|3着馬 = [[Orange Bay]]
|3着斤量 = 122
}}

===引退===
　アーティアスはこの夏のキャンペーンをもって引退した。なぜ引退になったのか、その理由はよくわからない。

　実はこの年、ヨーロッパの有力競走馬は早めに引退するものが目立った。というのも、この年ヨーロッパでは伝染性の子宮炎の流行が発生して、アメリカではヨーロッパからの競走馬の輸入禁止措置がとられることになり、それが可決される前に滑り込みでアメリカへ高値で売却しようと言うものが多く出たからである。この頃、アメリカではノーザンダンサーの台頭からサラブレッドの市場価格が急騰してブームになっていたのである。英愛ダービー馬のザミンストレルも凱旋門賞を蹴ってアメリカへ高値で売られていった。（その結果、僚馬のアレッジドにチャンスが回ってきた。）

　アーティアスはアメリカへ売られたわけではなく、イギリスで種牡馬になったので、この伝染病騒ぎが関係あったのかどうかはわからない。

===評価===
　アーティアスに対する評価は分かれた。

　全ヨーロッパフリーハンデでは1300-2000m部門で64.5キロを与えられ、全欧2位と評価された。春の早い時期に大活躍をして、イギリスダービーで敗れたまま去っていった[[ブラッシンググルーム]]に次ぐ高評価であり、イギリス馬としては文句なしの首位である。

　[[タイムフォーム]]はアーティアスに129ポンドを与えた。同厩で秋に[[凱旋門賞]]を勝った[[アレッジド]]が137ポンドで3歳首位、凱旋門賞に出ていない[[ザミンストレル]]は135ポンドで2位だった。

　インターナショナル・クラシフィケーションの値は130ポイント（1300-2000m部門）で、3歳馬としては5位である。

==種牡馬として==
===イギリス時代===
　アーティアスは1978年からイギリスで種牡馬となった。1984年に日本に輸出されるまでの間に、産駒はイギリスで55勝、フランスで23勝をあげ、￡282,522、₣1,808,100を稼いでいる。

　初年度産駒からはデイイズダン([[Day is Done]])がアイルランドの主要2歳戦である[[愛ナショナルS]]に勝った。2世代目からは、ヨーロッパでのアーティアス代表産駒となるフレイムオブタラ([[Flame of Tara]])が出た。実はこれと同世代で、初期の日本での代表馬であるエバーグレイスも登場している。

　その後も何頭かの重賞勝ち馬を出したものの、アーティアスの競走成績と比べると期待はずれというところだった。そのため1984年に日本へ売られていったのだが、そのあとでフェドラグレイ([[Fedora Grey]])が出て、アーティアス産駒としては唯一のG1勝ちとなる[[イタリア1000ギニー]]優勝を果たした。

===イギリス時代の主な産駒===
{| class = "sortable" style="width:97%; margin-left:1em; border-width:0px 0px 1px 0px; border-color:#00366c; border-style:dotted;border-collapse:collapse;text-align:left;color:#00366c; background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 );"
|- style="background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )" align="center"
!width="20%"| 馬名
! 生年
! 産国
! 性別
! 主要戦績
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|'''[[Fedora Grey]]'''||1984||IRE||牝||{{Sort|001|[[伊1000ギニー]]{{伊G1}}、②[[クリテリウム・ナツィオナーレ]]{{伊G3}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[Flame of Tara]]||1980||IRE||牝||{{Sort|101|[[コロネーションS]]{{英G2}}、[[プリティポリーS]]{{愛G2}}、[[アサシS]]{{愛G3}}、Mooresbridge S{{愛LR}}、Irish Chorus2歳牝馬S{{愛LR}}、②[[チャンピオンS]]{{英G1}}、[[グレンカーンS]]{{愛G3}}、③[[ロジャーズゴールドC]]{{愛G2}}。[[Salsabil]]、[[Marju]]の母。}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[Day is Done]]||1979||IRE||牡||{{Sort|102|[[愛ナショナルS]]{{愛G2}}、[[ノーフォークS]]{{英G3}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[Liastra]]||1983||GB||牝||{{Sort|201|[[フィユドレール賞]]{{仏G3}}、②[[ロワイヨモン賞]]{{仏G3}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[Zaius]]||1982||IRE||牝||{{Sort|201|[[カラS]]{{愛G3}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[French School]]||1982||IRE||牡||{{Sort|301|ボルドー大賞{{仏LR}}、②[[グレフュール賞]]{{仏G2}}、③[[ケルゴルレイ賞]]{{仏G2}}、[[リス賞]]{{仏G3}}、[[エスペランス賞]]{{仏G3}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[Art Edict]]||1981||GB||牡||{{Sort|401|②クライヴグラハムS{{英LR}}、③[[ジョッキークラブS]]{{英G2}}、[[ストックホルム国際C]](瑞)}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[Captivator]]||1980||IRE||牡||{{Sort|302|パドスールS{{愛LR}}、②[[デズモンドS]]{{愛G3}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[Notte Chiara]]||1980||IRE||牝||{{Sort|302|ミネルヴァ賞{{伊LR}}、②[[ヴィルジニオクルティ賞]]{{伊G3}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[Royal Rendevouz]]||1979||IRE||牡||{{Sort|302|[[ホワイトホールS]]{{愛G3}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|Dancer's Shadow||1982||IRE||騙||{{Sort|801|②クリテリヨムヴィテスデカトルブラ(ベルギー)}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|Art Exhibition||1983||GB||牡||{{Sort|802|③ノルウェー2000ギニー、ノーブルダンサー賞(ノルウェー)}}
|}
*そのほかのLR勝ち馬
:*Ah Ya Zein（マルセイユ大賞{{仏LR}}）
:*Fuchsia Artaius（マリオペルレッティ賞{{伊LR}}）
:*Laurius（ロードシーモア賞{{仏LR}}）
:*Zar Bitter（UNPCPS賞{{伊LR}}）

===フレイムオブタラ===
{{Template:簡易三代β
|写真 =[[ファイル:Flameoftara.jpg|300px|link=]]
|name = Flame of Tara
|和 = フレイムオブタラ
|年 = 1980
|性 = 牝
|毛 = 鹿毛
|国 = {{F-IRE}}
|主 = 
|f= [[アーティアス]]
|f年 = 1974
|f毛 = 鹿
|f国 = USA
|m = WelshFlame
|m毛 = 鹿
|m年 = 1973
|m国 = GB
|ff = [[Round Table]]
|ff年 = 1954
|fm = Stylish Pattern
|fm年 = 1961
|mf= [[Welsh Pageant]]
|mf年 = 1966
|mm = Electric Flash
|mm年 = 1962
|fff = [[Princequillo]]
|ffm = [[Knight's Daughter]]
|fmf = [[My Babu]]
|fmm = Sunset Gun
|mff= [[Tudor Melody]]
|mfm= Picture Light
|mmf= [[Crepello]]
|mmm= Lightning
|FN = 2-f
|戦 = 21
|勝 = 8
|勝備考 = 
|タイトル = 
|鞍 = [[コロネーションS]]{{英G2}}、[[プリティポリーS]]{{愛G2}}、[[アサシS]]{{愛G3}}、②[[チャンピオンS]]{{英G1}}
|金 = 
|CS = 
|CJS = 
|CBMS = 
|駒 = [[Salsabil]]（[[英オークス]]G1、[[英1000ギニー]]G1、[[愛ダービー]]G1、[[ヴェルメイユ賞]]G1、[[マルセルブサック賞]]G1）、[[Marju]]（[[セントジェームズパレスS]]）
}}
　ヨーロッパでの最良の産駒は、おそらく牝馬のフレイムオブタラ(Flame of Tara)である。フレイムオブタラは[[コロネーションステークス]]に勝ち、繁殖牝馬としてサルサビル([[:en:Salsabil (horse)|Salsabil]])（[[1000ギニー|イギリス1000ギニー]]、[[オークス|イギリスオークス]]、[[アイルランドダービー]]、フランス・[[ヴェルメイユ賞]]）やマルジュ([[:en:Marju|Marju]])（[[セントジェームズパレスステークス]]）を産んだ。

===エバーグレイスの活躍===
　イギリス時代の初期に、1頭の牝馬が*アーティアスを種付けしたのち、日本へ輸出された。これは*[[Royal Hive|ロイヤルハイブ]](Royal Hive)という、*アーティアスと同じ1974年生まれのイギリス牝馬である。その祖母は1000ギニー勝ち馬の<ruby><rb>[[Honeylight]]</rb><rt>ハニーライト</rt></ruby>、さらにその母はクレパスキュール([[Crepuscule]])という血統である。*ロイヤルハイブ自身、現役時代は[[ヴェルメイユ賞]]{{仏G1}}と[[ヨークシャーオークス]]{{英G1}}で2着になり、古馬になって[[アスコット金杯]]{{英G1}}でも2着になったというステイヤーだった。

　*ロイヤルハイブは新冠の鳳凰牧場でアーティアスの持込馬となる牝馬を産んだ。それが'''エバーグレイス'''である。エバーグレイスは当時日本で唯一のアーティアス産駒として1983年に2歳戦でデビューすると、翌1984年の夏の北海道シリーズまでに清里特別、支笏湖特別、層雲峡特別と勝った。ただ1頭の活躍によってアーティアスの[[アーニング・インデックス]]は11に跳ね上がった。その結果、アーティアスの日本輸入が決まったのである。

　なお、*ロイヤルハイブはエバーグレイスを産んだあと門別の出口牧場（最近は[[ゴールドシップ]]の生産牧場として知られている）に移り、1983年に*[[ノーザンテースト]]の牡駒を産んでいる。これがノーザンテーストの代表産駒の1頭、[[レジェンドテイオー]]である。

===日本時代===
{| style="float:right;width:100px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Matinokomati0.jpg|100px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|マチノコマチ
|}
　アーティアスに目をつけたのは[[橋本牧場]]である。言うまでもなく、アーティアスと同世代の日本での最強馬、[[マルゼンスキー]]の生産牧場である。アーティアスは1984年に日本へ輸出され、1985年から沙流郡門別町のトヨサトスタリオンセンターで供用された。当初の種付け料は350万円であり、同じトヨサトスタリオンセンターで繋養中の[[マルゼンスキー]]と同額だったというところに、アーティアスへの期待の大きさが伺える。同じ門別にはシンボリ牧場のスタリオンステーションもあり、その頃[[パーソロン]]は300万、[[モガミ]]は200万円の種付け料をとっていた。

　アーティアスの初年度種付けには99頭{{refnest|group="注"|日本中央競馬会の刊行する『サラブレッド種牡馬銘鑑』では初年度1985年の種付け頭数を102としている。ここでは[[日本軽種馬協会]] Japan Bloodstock Information Systemの値および『日本の種牡馬録』による「99頭」を採用した。}}、2年目には106頭、3年目には123頭もの牝馬が集まった。

　1986年生まれの世代が日本での初年度産駒である。この世代が競走年齢に達する頃には、ヨーロッパではフェドラグレイ([[Fedora Grey]])が1987年に[[イタリア1000ギニー]]{{伊G1}}を勝っていたものの、大筋では「期待はずれの種牡馬」とみなされるようになっていた。日本での産駒が2歳戦で走るようになった1988年は、北関東で[[アーティシャーク]]が[[高崎三才優駿]]{{重賞}}を勝ったのだが、産駒の勝ち鞍は14にとどまり、アーニングインデックスは0.48と低調なデビューとなった。その結果、1988年からの種付け数は前年の半数に落ち込み、種付け料は200万円まで下げたものの、その後も50-60頭にとどまるようになった。供用地も門別から浦河に移り、最上ホースクラブの所有に変わっている。

　2世代目となる1987年生まれの産駒のなかからは、早々と夏の北海道で[[ダイカツブランド]]が[[札幌3歳S]]{{GIII}}（この年は函館競馬場で行われた）で2着に入り、期待を集めた。が、ダイカツブランドはそのまま休養に入り、翌春に復帰したものの[[ペガサスS]]{{GIII}}3着が精一杯で、そのまま条件クラスへ降格していった。この世代では3歳の春にマンジュデンゴッドがオープンクラスまで出世したが、重賞戦線を賑わすには至らなかった。

　アーティアスの日本での成績のピークは1991年から1992年になる。1991年には[[ナイスパーワー]]と[[マチノコマチ]]がGIIIを1つづつ勝ち、東海地区ではブライアンカーチスがターフチャンピオンシップを勝つなど、重賞戦線で活躍した。アーティアスは1991年に日本の種牡馬ランキングで19位、翌1992年も24位と上位につけた。しかしその後は成績が安定せず、1993年には56位、1994年からは100位以下に転落した。

====古豪オースミロッチの活躍====
{| style="float:left;width:180px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Osumiroti.jpg|180px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|オースミロッチ
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:1990kikkasho-240.jpg|180px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|1990年の菊花賞、2周めの淀の坂で先頭に立つオースミロッチ。外はメジロマックイーン。
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:1993takaraduka0-240.jpg|180px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|1993年の宝塚記念、ただ1頭、内ラチぴったりを回って先頭に躍り出る。
|}

　この1991年にはほとんど注目されてはいなかったが、当時も走っていて、結局のところ、勝鞍・賞金・知名度の点でアーティアスの日本での最良の産駒となったのが'''[[オースミロッチ]]'''である。オースミロッチは、実はアーティアスの2世代目の産駒であり、ダイカツブランドやマンジュデンゴッドと同世代である。しかし、活躍のピークはずっとあとの5歳になってからたっだ。

　オースミロッチは武豊とのコンビで2歳秋にデビュー2連勝を決めたのだが、骨折して長い休養を余儀なくされ、3歳春のクラシックを棒に振った。オグリキャップと武豊が創りだした競馬ブームのピーク時で、[[メジロライアン]]と[[ホワイトストーン]]が華々しく活躍したあの年のことである。

　オースミロッチの脚が治って再出発できるようになったのは夏の終わりである。9月の[[神戸新聞杯]]{{GII}}で長い休みから復帰したあと、[[京都新聞杯]]{{GIII}}で3着に滑り込んで[[菊花賞]]の優先出走権を獲得した。そして秘密兵器の中の秘密兵器としてクラシック最終戦に挑んだ。

　実はここまで、デビュー以来ずっと武豊が騎乗している。オースミロッチは当時の人気ナンバーワンジョッキーのお手馬だったのだが、おそらくその印象はないだろう。武豊はこの年、[[皐月賞]]は[[ナリタハヤブサ]]で、[[日本ダービー]]は乗り替わりで[[ハクタイセイ]]で出場しているのだ。そしてこの菊花賞を勝つのは[[メジロマックイーン]]、のちに武豊とのコンビでスーパーステイヤーとなっていくのだが、菊花賞の時は[[内田浩一]]騎手とのコンビだった。

　7番人気のオースミロッチはスタートから果敢に先手を取り、[[マイネルガイスト]]や[[センターショウカツ]]と競り合ってレースを引っ張った。オースミロッチは「淀の勝負どころ」と呼ばれる3コーナー手前の坂で先頭にたち、最終コーナーをまわって先頭で直線に入るほどの見せ場を作った。が、世間の注目はその外から追い込んでくる[[メジロマックイーン]]、[[ホワイトストーン]]、[[メジロライアン]]の「3強」に集まっており、オースミロッチは直線では注目されることなく10着に終わった。着順から見れば大敗ではあるが、ほかの先行馬が大きく遅れたのに比べると、ずいぶん踏ん張ったとも言える。

　オースミロッチはそのあと条件戦に戻ってじっくりと勝ち上がり、5歳の春に[[京都記念]]{{GII}}、秋に[[京都大賞典]]{{GII}}に勝ち、[[宝塚記念]]4着、[[有馬記念]]でも5着と一流の力をつけた。年間GII2勝は立派な成績である。が、GII勝ちでも大した注目は集まらなかった。京都記念はろくなメンバーが出ていなかったし、京都大賞典にしても直前でメジロマックイーンがリタイヤしてチャンスが転がり込んだうえに、肝心の天皇賞（秋）では凡走したのだから。

　そんなオースミロッチが「もっとも輝いたレース」は1993年の[[宝塚記念]]だろう。既に6歳（当時の表記では7歳）となっていたオースミロッチは惨敗続きで、出走11頭中10番人気と全く注目されていなかった。この年は天候が悪く、阪神競馬場の馬場はひどく荒れており、出走馬のうち10頭はみな大きく外目を走った。その中でぽつんとただ1頭、内ラチぴったりを回ったのがオースミロッチである。ストレートでは4、5番手をなんとか追走するという程度の位置取りだったが、コーナーをまわる度に内回りの利を活かして順位を上げ、先頭で直線を向いたのである。大きく離れた外からメジロマックイーンがなんとか追い込んで勝ったが、オースミロッチは見事に3着に滑りこんだのだった。
{{テンプレート:簡易三代α
|name= オースミロッチ
|種 = サラブレッド
|年 = 1987
|性 = 牡
|毛 = 鹿毛
|誕 = 1987.04.20
|死 = 2014.01.31
|国 = {{F-JPN}}
|県 = 北海道・門別
|牧 = [[野島牧場]]
|者 = [[野島牧場]]
|調 = 中尾正
|厩 = 
|厩地 = 栗東
|主 = [[山路秀則]]
|f= *[[アーティアス]]
|f年 = 1974
|f毛 = 鹿毛
|f国 = USA
|m = [[ロッチアイ]]
|m毛 = 栗毛
|m年 = 1981
|m国 = JPN
|ff = [[Round Table]]
|ff年 = 
|ff毛 = 
|ff国 = 
|fm = Stylish Pattern
|fm年 = 
|fm毛 = 
|fm国 =
|mf= *[[ファバージ]]
|mf毛 = 
|mf年 = 
|mf国 = 
|mm = ネバーロッチ
|mm毛 =
|mm年 =
|mm国 =
|fff = [[Princequillo]]
|ffm = Knight's Daughter
|fmf = [[My Babu]]
|fmm = Sunset Gun
|mff= [[Princely Gift]]
|mfm= Spring Offensive
|mmf= *[[ネヴァービート]]
|mmm= [[スターロッチ]]
|FN = 11-c
|母系 = 
|初出 = 
|終出 = 
|戦 = 30
|勝 = 8
|勝備考 = 
|タイトル = 
|鞍 = [[京都大賞典]]{{GII}}、[[京都記念]]、[[トパーズS]]{{OP}}、すばるS{{OP}}、③[[宝塚記念]]{{GI}}、④宝塚記念{{GI}}、⑤有馬記念{{GI}}
|金 = 34,306.0円 
|CS = 
|CJS = 
|CBMS = 
|駒 = 
}}
　オースミロッチの活躍で、人気を失っていたアーティアスには一時的に注目が戻り、オースミロッチが京都記念に勝った1992年の春シーズンには種付け数が78にまで増えた。しかしそれもその年だけだった。オースミロッチは秋に京都大賞典にも勝ったのだが、翌1993年春には19頭しか牝馬が集まらず、さらに翌年には7頭にまで減った。最終的に1997年には種付け数1（生産数は0）となり、この年の11月に用途変更となった。

==代表産駒==
===日本での主な産駒===
{| class = "sortable" style="width:97%; margin-left:1em; border-width:0px 0px 1px 0px; border-color:#00366c; border-style:dotted;border-collapse:collapse;text-align:left;color:#00366c; background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 );"
|- style="background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )" align="center"
!width="20%"| 馬名
! 生年
! 性別
! 獲得賞金
! 主要戦績
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[オースミロッチ]]||1987||牡||34,306||{{Sort|001|[[京都大賞典]]{{GII}}、[[京都記念]]{{GII}}、[[トパーズS]]{{OP}}、[[すばるS]]{{OP}}、③[[宝塚記念]]{{GI}}、京都大賞典{{GII}}、京都新聞杯{{GII}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[マチノコマチ]]||1988||牝||{{0}}7,732||{{Sort|002|[[阪神牝馬特別]]{{GIII}}、道新スポーツ杯{{900}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[ナイスパーワー]]||1987||牡||{{0}}7,768||{{Sort|003|[[ダービー郷CT]]{{GIII}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[ブライアンカーチス]]||1988||牡||{{0}}3,891||{{Sort|004|（東海）[[ターフチャンピオンシップ]]{{重賞}}、[[ゴールドウィング賞|中日スポーツ杯（秋）]]{{重賞}}、②新春ジュニア{{重賞}}、③[[駿蹄賞]]{{重賞}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[ホウセイターキン]]||1990||牡||{{0}}1,790||{{Sort|005|（道営）[[栄冠賞]]{{重賞}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[リスクキャッスル]]||1988||牝||{{0}}4,369||{{Sort|006|（石川）[[サラブレッドフレッシュカップ|3歳優駿]]{{重賞}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[アーテイシャーク]]||1986||牡||{{0}}{{0}}890||{{Sort|007|（北関東）[[三才優駿]]（高崎）{{重賞}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[ニホンピロオウジャ]]||1991||騙||{{0}}2,718||{{Sort|101|[[もみじS]]{{OP}}、②[[野路菊S]]{{OP}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[マンジュデンゴッド]]||1987||騙||10,552||{{Sort|102|[[春蘭S]]{{OP}}、[[仲冬S]]{{準OP}}、②オータムスプリントS{{OP}}、③オパールS{{OP}}、菜の花S{{OP}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[ネーハイエンペラー]]||1989||牡||10,713||{{Sort|201|和泉S{{準OP}}、②[[小倉大賞典]]{{GIII}}、③[[関門橋S]]{{OP}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|[[ダイカツブランド]]||1987||牡||{{0}}6,808||{{Sort|202|②[[札幌3歳S]]{{GIII}}、③[[ペガサスS]]{{GIII}}、[[オパールS]]{{OP}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|タヤスマーシャル||1991||牡||{{0}}2,845||{{Sort|301|（道営）③[[ステイヤーズC]]{{重賞}}、①（大井）雲取賞(A)}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|ハヤノビトン||1989||牡||{{0}}5,771||{{Sort|401|②ジュニアC{{OP}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|ロードリーナイト||1986||牡||{{0}}6,407||{{Sort|402|③府中3歳S{{OP}}、①赤富士賞{{900}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|ミヤマリリー||1988||牡||{{0}}7,384||{{Sort|501|八雲特別{{900}}2回}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|ベストプレイヤー||1986||牝||10,305||{{Sort|502|五条坂特別{{900}}、豊明特別{{900}}、野苺賞{{400}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|キヌノカガヤキ||1986||牡||{{0}}5,833||{{Sort|503|立春賞{{900}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|エバーグレイス（持込）||1980||牝||{{0}}7,520||{{Sort|505|漁火特別{{900}}、阿寒湖特別{{900}}、層雲峡特別{{900}}、支笏湖特別{{900}}、清里特別{{800}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|スズカケンホウ||1987||牡||{{0}}4,429||{{Sort|601|日向特別{{500}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|バンダムナイト||1991||牡||{{0}}2,959||{{Sort|602|霊山特別{{500}}}}
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
|エムジーボーイ||1989||牡||{{0}}4,258||{{Sort|701|（南関東）大井・ロイヤルC(A3)}}
|}

==注==
===注釈===
<references group="注"/>
===出典===
{{Reflist|colwidth=30em |refs= 
<!--★URL★--> 
*<ref name="museum">{{cite web|url=http://www.racingmuseum.org/hall-of-fame/horses-view.asp?varID=127 |title=Round Table profile |publisher=Racingmuseum.org |date= |accessdate=2013-01-12}}{{リンク切れ|date=2016年2月}}</ref>
*<ref name="TH_LSofAmerica">{{cite web|url=http://www.tbheritage.com/HistoricSires/LeadingSires/AmLeadSires.html |title=Leading Sires of America |publisher=Tbheritage.com |date= |accessdate=2016-02-18}}</ref>
*<ref name="bloodlines1">{{cite web|url=http://www.bloodlines.net/TB/Families/Family14c.htm |title=Pretty Polly - Family 14-c |publisher=Thoroughbred Bloodlines |date= |accessdate=2016-02-18}}</ref>
*<ref name="google5078">{{cite news|url=http://news.google.com/newspapers?id=ZiQ-AAAAIBAJ&sjid=k0oMAAAAIBAJ&pg=5078,4845367&dq=artaius+eclipse&hl=en |title=Artaius to score for the Irish |publisher=Evening Times |date=25 July 1977 |accessdate=2016-02-18}}</ref>
*<ref name="EveningTimes19770702">{{cite news|url=http://news.google.com/newspapers?id=7vNAAAAAIBAJ&sjid=h6cMAAAAIBAJ&pg=6188,543570&dq=artaius+eclipse&hl=en |title=Racing results |publisher=[[Evening Times]] |date=2 July 1977 |accessdate=2016-02-16}}</ref>
*<ref name="EveningTimes19770817">{{cite news|url=http://news.google.com/newspapers?id=XWRAAAAAIBAJ&sjid=pkwMAAAAIBAJ&pg=4873,2895005&dq=artaius+relkino&hl=en |title=Octavo in tune for Gimcrack |publisher=Evening Times |date=17 August 1977 |accessdate=2016-02-16}}</ref>
*<ref name="JAIRS-DB-516895194">{{cite web|last=Staff|title=https://www.studbook.jp/users/ja/Honba.php?sid=516895194(USA)|publisher=公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル|url=https://www.studbook.jp/users/ja/Honba.php?sid=516895194|accessdate=2016-02-18}}（要アカウント）</ref>
<!--★文献★-->
*<ref name="century">{{cite book|last1=Morris| first1=Tony|last2=Randall|first2=John|title=A Century of Champions|publisher= Portway Press,|year=1999|isbn=978-1-901570-15-1}}</ref>

*<ref name="Mortimer">{{cite book | last1 = Mortimer|first1=Roger |last2=Onslow|first2=Richard|last3=Willett|first3=Peter| title=Biographical Encyclopedia of British Flat Racing|publisher=Macdonald and Jane's| year=1978|isbn=0-354-08536-0}}</ref>

*<ref name="Timeform1985">{{cite book | author=Timeform|title=Racehorses of 1985|publisher=Timeform |year=1986|isbn=0-900599-42-1}}</ref>

*<ref name="Guinness">{{cite book|last1=Morris|first1=Tony|last2=Randall|first2=John| title=Horse Racing: Records, Facts, Champions (Third Edition)|publisher=Guinness Publishing |year=1990|isbn=0-85112-902-1}}</ref>

<!--馬主-->
*<ref name="NYT_19871231">[[ニューヨーク・タイムズ]] 1987年12月31日付[http://www.nytimes.com/1987/12/31/obituaries/john-wesley-hanes-sr-95-aide-to-roosevelt-and-corporate-chief.html 訃報・ジョン・ウェズリー・ヘインズSr、95歳／ルーズベルト大統領と企業の経営者を補佐] 2016年2月18日閲覧。</ref>

*<ref name="NYT_19920814">[[ニューヨーク・タイムズ]] 1992年08月14日付[http://www.nytimes.com/1992/08/14/obituaries/hope-hanes-86-dies-breeder-of-race-horses.html ホープ・ヘインズ夫人、86歳で死去／競走馬生産者]  2016年2月18日閲覧。</ref>


}}

===参考資料===
*『サラブレッド種牡馬銘鑑』第8巻,日本中央競馬会・刊,1985
*『Biographical Encyclopedia of British Flat Racing』Roger Mortimer,1978
*『A Brief History of King Arthur』Mike Ashley,2013

==カテゴリー==
{{DEFAULTSORT:Artaius}}
[[Category:アイルランドの競走馬]]
[[Category:イギリスの競走馬]]
[[Category:フランスの競走馬]]
[[Category:1974年生|米]]
[[Category:ラウンドテーブル系]]
[[Category:日本輸入種牡馬|アーティアス]]