インタグリオーのソースを表示

{{Childwick}}
__NOTOC__
'''インタグリオー'''（'''Intaglio'''）は明治末期から大正時代の日本のトップ種牡馬である。

日本で初めて本格的なサラブレッド生産に乗り出した小岩井農場が、明治40年（1907）年にイギリスから輸入した。同時に輸入したサラブレッド牝馬との配合で続々と活躍馬を送り出し、[[ビューチフルドリーマー]]や[[フラストレート]]、[[アストニシメント]]といった日本を代表する牝系を作り上げ、日本近代競馬の誕生に絶大な影響を与えた。

{{五代血統表ζGB1887
|name =Intaglio
|和={{imp}}[[インタグリオー]] 
|年 =1899
|毛=栗毛
|性=牡
|国 = {{F-GBx|1899}}
|県 = サフォーク州[[ニューマーケット]]
|調=　
|主= Mr J.Reiss
|者= Mr J.Reiss
|牧= 
|f = [[Childwick]]
|f毛=黒鹿毛
|f年=1890
|m = [[Cameo]]
|m毛=黒鹿毛
|m年=1891
|ff = [[St.Simon]]
|ff毛=鹿毛
|ff年=1881
|fm = Plaisanterie
|fm毛=鹿毛
|fm年=1882
|mf = [[Thurio]]
|mf毛=黒鹿毛
|mf年= 1875
|mm = [[Light of Other Days]]
|mm毛=鹿毛
|mm年=1882
|fff = [[Galopin]]
|ffm = St.Angela
|fmf = [[Wellingtonia]]
|fmm = Poetess
|mff = [[Tibthorpe]] or <br>[[Cremorne]]
|mfm = Verona
|mmf = [[Balfe]]
|mmm = [[Meteor]]
|ffff = [[Vedette]]
|fffm = Flying Dutchess
|ffmf = [[King Tom]]
|ffmm = Adeline
|fmff = [[Chattanooga]]
|fmfm = Araucaria
|fmmf = [[Trocadero]]
|fmmm = La Dorerre
|mfff = [[Parmesan]]
|mffm = Rigolboche
|mfmf = {{×o1|[[Orlando]]}}
|mfmm = Iodine
|mmff = [[Plaudit]]
|mmfm = Bohemia
|mmmf = [[Thunderbolt]]
|mmmm = Duty
|fffff = [[Voltigeur]]
|ffffm = Mrs. Ridgway
|fffmf = [[The Flying Dutchman]]
|fffmm = Merope
|ffmff = [[Harkaway]]
|ffmfm ={{×sb2|Pocahontas}}
|ffmmf = {{×b4|[[Ion]]}}
|ffmmm = Little Fairy
|fmfff = {{×o1|[[Orlando]]}}
|fmffm = Ayacanora
|fmfmf = [[Ambrose]]
|fmfmm = {{×sb2|Pocahontas}}
|fmmff = [[Monarque]]
|fmmfm = Antonia
|fmmmf = [[The Ranger]]
|fmmmm = Mon Etoile
|mffff = [[Sweetmeat]]
|mfffm = Gruyere
|mffmf = [[Rataplan]]
|mffmm = Gardham Mare
|mfmff = [[Touchstone]]
|mfmfm = [[Vulture]]
|mfmmf = {{×b4|[[Ion]]}}
|mfmmm = Sir Hercules Mare
|mmfff = [[Thormanby]]
|mmffm = Plausible
|mmfmf = [[Weatherbit]]
|mmfmm = Cossack Maid
|mmmff = [[Stockwell]]
|mmmfm = Cordelia
|mmmmf = [[Rifleman]]
|mmmmm = Sleight of Hand Mare
|FN=2-d
|鞍=
|駒=レッドサイモン（連合二哩、帝室御賞典2勝）、ペットレル（連合二哩、帝室御賞典）、シンコイワヰ（連合二哩、帝室御賞典）、インタグリオ（連合二哩）、トクホ（連合二哩）など
}}

==GSBでみる母系==
:｜[[Meteor]]　foaled in 1867  
:｜｜1885 barren
:｜｜1886 barren
:｜｜1887 ch f Star by Thurio  Prince Soltykoff
:｜｜1888　barren
:｜｜1889 by Thurio 




*18 19巻
母のCameoはプリンスソルティコフ生産

:Light of Other Days
bay 1882 by Balfe XVIII p349


:｜1887　b.f. Maid of Artois by [[Tibthorpe]] (sendt to South America)
:｜1888　b.c. Woolsthorpe by [[Thurio]]
:｜1889　br.c. Curio by [[Thurio]]
:｜1890　missed to Tibthorpe
:｜1891　br.f. [[Cameo]] by [[Thurio]]
:｜1892　b.c. Spur-Royal by [[Gold]]
:｜1893　br.c. Aureus by [[Gold]]
:｜1894　ch.f. Ora by [[Gold]]
:｜1895　ch.c. Ecu d'Or by [[Gold]]
:｜1896　b or br.c. Arimaspian by [[Thurio]]
:｜1897　b.c. Cresset by [[Gold]]
:｜1898　b or br.c. Philario by [[Thurio]]
:｜1899　b or br.f. Mountain Daisy by [[Ayrshire]]
:｜1900　not covered in 1899
:｜1901　by Ayrshire


:Light of Other Daysの戦績
{{Template:古WL-GB12
| 西暦 =1886
| 月日 =04.13
| 曜 =火
| 競馬場 =[[ニューマーケット競馬場]]
| 開催 =クレイヴン開催
| レース名 =ビジターズ・プレート・ハンデ
| racename =The Visitor's Plate（handicap）of 150 sov
| レース種 =
| コース =Rous Course
| 芝ダ障 =芝
| 距離f =
| 距離m =
| 賞金 =147ポンド
| 登録料 =150ソブリン
| 登録数 =
| 登録備考 =ニューマーケット調教馬は登録料に＋3ソブリン、それ以外の馬は＋1ソブリン
| 1着順 =1
| 1着馬主 =Mr J.Hammond
| 1着毛 ={{b}}
| 1着性 =牡
| 1着齢 =3
| 1着記 =
| 1着馬 =[[Eagle's Plume]]
| 1着父 =[[Scottish Chief]]
| 1着ストーン =6st 12lb
| 1着Kg =43.5
| 2着順 =2
| 2着馬主 =Mr Craven
| 2着毛 ={{b}}
| 2着性 =牡
| 2着齢 =4
| 2着記 =
| 2着馬 =Campbell
| 2着父 =[[Camballo]]
| 2着ストーン =7st 4lb
| 2着Kg =46.3
| 3着順 =3
| 3着馬主 =Sir G.Chetwynd
| 3着毛 ={{b}}
| 3着性 =牝
| 3着齢 =5
| 3着記 =
| 3着馬 =Kinfauns
| 3着父 =[[Wild Oats]]
| 3着ストーン =7st 4lb
| 3着Kg =46.3
| 4着順 =
| 4着馬主 =Mr R.Craig
| 4着毛 ={{b}}
| 4着性 =牝
| 4着齢 =4
| 4着記 =
| 4着馬 =Engadine
| 4着父 =[[Macaroni]]
| 4着ストーン =7st 13lb
| 4着Kg =50.3
| 5着順 =
| 5着馬主 =Mr A.Benholm
| 5着毛 ={{br}}
| 5着性 =牡
| 5着齢 =3
| 5着記 =
| 5着馬 =Esher
| 5着父 =[[Claremont]]
| 5着ストーン =7st 12lb
| 5着Kg =49.9
| 6着順 =
| 6着馬主 =Mr R.Sherwood
| 6着毛 ={{gr}}
| 6着性 =牡
| 6着齢 =4
| 6着記 =
| 6着馬 =Grey Parrot
| 6着父 =[[Kilmore]]
| 6着ストーン =7st 5lb
| 6着Kg =46.7
| 7着順 =
| 7着馬主 =Mr C.J.Merry
| 7着毛 ={{br}}
| 7着性 =牡
| 7着齢 =6
| 7着記 =
| 7着馬 =Crowland
| 7着父 =[[Dutch Skater]]
| 7着ストーン =7st 4lb
| 7着Kg =46.3
| 8着順 =
| 8着馬主 =Ld Zetland
| 8着毛 ={{ch}}
| 8着性 =牝
| 8着齢 =3
| 8着記 =
| 8着馬 =Wampum
| 8着父 =[[Uncas]]
| 8着ストーン =7st 4lb
| 8着Kg =46.3
| 9着順 =
| 9着馬主 =Count Festetics
| 9着毛 ={{ch}}
| 9着性 =牡
| 9着齢 =3
| 9着記 =
| 9着馬 =Golden Emperor
| 9着父 =[[Sterling]]
| 9着ストーン =7st 2lb
| 9着Kg =45.4
| 10着順 =
| 10着馬主 =Prince Soltykoff
| 10着毛 ={{b}}
| 10着性 =牝
| 10着齢 =4
| 10着記 =
| 10着馬 =[[Light of Other Days|Light of other Days]]
| 10着父 =[[Balfe]]
| 10着ストーン =6st 13lb
| 10着Kg =44.0
| 11着順 =
| 11着馬主 =Mr E.Martin
| 11着毛 ={{b}}
| 11着性 =牝
| 11着齢 =3
| 11着記 =
| 11着馬 =Catastrophe
| 11着父 =[[King of the Forest]]
| 11着ストーン =6st 10lb
| 11着Kg =42.6
| 12着順 =
| 12着馬主 =Mr John Corlett
| 12着毛 ={{b}}
| 12着性 =牝
| 12着齢 =3
| 12着記 =
| 12着馬 =Bird of Eve
| 12着父 =[[Skylark]]
| 12着ストーン =6st 7lb
| 12着Kg =41.3
| 賞金備考 =
| 斤量備考 =
| 人気備考 =Crowlandが7-2（against）、Bird of Eve・Campbell・Eagle's Plumeがいずれも7-1（against）、Kinfaunsが20-1（against）
| 騎手 =
| 備考 =2着はクビ差、3着は2馬身差
}}


*20巻

:｜Cameo (brown, foaled in 1891, by [[Thurio]], out of [[Light of Other Days]], by [[Balfe]] (vol XIX p83)
:｜｜1896　c dead  by [[Macheath]]
:｜｜1897　b.f. [[Netzky]], by [[Juggler]] Mr.J.Reiss
:｜｜1898　barren
:｜｜1899　ch.c. [[Intaglio]], by [[Childwick]] Mr.J.Reiss
:｜｜1900　b c [[Marquis San Marco]] by [[Macheath]] Mr.J.Reiss
:｜｜1901　barren coverd by [[Cap Martin]]
:｜｜1902　barren coverd by [[Newhaven]](pedigree untraced) 
:｜｜1903　barren coverd by [[Newhaven]](pedigree untraced)

send to Belgium in 1903

==概要==
{| style="float:right;width:180px;margin-left:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Intagliogold.jpg|180px|link=]]
|-style="font-size:0.7em;color:#2d3a49;"
|サラブレッドの''Intaglio''（沈彫）を施した宝飾品
|}
　西洋でもサラブレッドの概念が今よりは不明瞭だった19世紀から、日本にも「サラブレッド」は輸入されていた。記録のある最古のものとしては幕末にフランスのナポレオン3世から寄贈されたものがよく知られている。その後も「サラブレッド」は時々日本に入っているが、本格的に種としてのサラブレッドを生産するためにサラブレッドを一度に大量に輸入したのは、小岩井農場が日本初である。

　既に北清事変（義和団の乱、明治33年＝1900年）の頃から、日本のウマは西洋に比べて致命的に劣るという話がでていたが、その欠点が国を揺るがすような重大さをもって受け止められたのが日露戦争（明治37-38年＝1904-1905）である。明治天皇から直々に馬匹改良の令を受けた政府は、馬政局を設けて「馬匹改良30ヵ年計画（馬政第一次計画）」を定めた。

　もちろんこれはサラブレッドの改良を中心とするものではなかったが、難易度が著しく高いとされるサラブレッドの生産・育成技術を日本国内で確立することは馬産技術水準を引き上げることになるんだとか、高価なサラブレッドの生産は馬産地を活性化し馬産全体を底上げするとか、いろいろな建前のもとで、競馬にしか役に立たないようなサラブレッドの生産にも国費が投じられることになった。

　民間でこれに呼応したのが三菱財閥の[[小岩井農場]]である。小岩井農場は明治40年（1907年）に巨費を投じてサラブレッドの原産地イギリスから21頭もの「種馬」を輸入した。そのなかでただ1頭の牡馬がインタグリオーである。（今では「種馬」というのはふつう牡馬を指すが、当時の概念では牡馬・牝馬の両方を指す）

　国内の競馬事情はそのあと数年で一変し、馬券が禁止されてサラブレッド生産と競馬は最悪の時期を迎えた。ちょうどその頃インタグリオー産駒がデビューを迎えたのだが、インタグリオー産駒は日本競馬界を席巻し、小岩井農場は日本を代表するサラブレッド生産牧場の地位を確固とした。

==血統==
===ロシア貴族が遺したファミリー===
{| style="float:right;width:150px;margin-left:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-
|[[ファイル:Soltykoff-cigar2.jpg|150px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|アメリカで発売された「世界の服色」シリーズの葉巻入れ。「ソルティコフ公」のピンクの勝負服と黒帽が描かれている。
|-
|}
　インタグリオーの母系は、[[ソルティコフ公]]殿下というロシア貴族が育ててきたファミリーである。

　ソルティコフ家は17世紀初頭から300年余りにわたってロマノフ王家を支えてきた名家である。ロマノフ家がまだロシア大公にすぎなかったころからの側近で、ロシアの覇権を狙う他の勢力をソルティコフ家が武力で打ち破り、ロマノフ家はロシア皇帝となっていった。ソルティコフ家の娘がロシア王妃になったこともある家柄であり、代々の皇帝はソルティコフ家の縁戚でもる。

　19世紀のはじめにフランスのナポレオンがロシアに攻め込んできたとき、ロシア軍を指揮してこれを撃退したのもソルティコフ家だった。この功績でソルティコフ家は貴族の家格としては最高位となる「<ruby><rb>公</rb><rt>クニャージ</rt></ruby>」に叙せられた（イギリスではこの「公」に「Prince」をあてるので、ソルティコフ家の当主は「Prince Soltykoff（ソルティコフ公）」と呼ばれる。ただし、いわゆる「王子」も「Prince」なので、これとは区別するために敬称は「HH：His Highness」ではなく「HSH：His Serene Highness」がつく。）。その曾孫がインタグリオーの母系を育てた「ソルティコフ公」である。

　ソルティコフ公がまだ20代の頃に、ロシアとイギリスはクリミア戦争で激突した。講和を結ぶにあたってイギリスへ派遣されたのがソルティコフ公だった。ソルティコフ公はもともと競馬好きで、ロシア時代からイギリスからサラブレッドを輸入してロシアで走らせていたのだが、そのソルティコフ公にとって、この和平の使者の務めは、競馬の本家本元であるイギリスに行く最高の口実になった。もともとは3ヶ月の滞在の予定だったが、ソルティコフ公は結局そのままイギリスに居着いてしまった。

　ソルティコフ公は、ロシアに遺された先祖伝来の資産を売り払った金で、イギリスに豪壮な牧場と厩舎を作り、馬産と競馬にのめりこんだ。インタグリオーの母系はソルティコフ公のハウス血統で、ソルティコフ公の所有した活躍馬のほとんどはこの系統から出ていて、代々かけあわされた種牡馬もソルティコフ公の自家生産馬が多い。

{| style="float:left;width:150px;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-
|[[ファイル:PrSoltykoff1900atKreHou.png|150px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|ニューマーケットのクレムリンハウス厩舎でのソルティコフ公(1900年)
|-
|}
　ソルティコフ公（His Serene Highness Prince Soltykoff）は、19世紀のイギリスで、ロシア人としては唯一ジョッキークラブの会員に認められた。当時はロシア人馬主としては世界で一番有名な人物であり、アメリカで発売された「世界の馬主シリーズ」図柄の葉巻にもロシア人として唯一登場している。ソルティコフ公は無尽蔵とも言える富をもっており、いわゆる<ruby><rb>賭け事</rb><rt>ギャンブル</rt></ruby>に伴う不正とは無縁だったので、公正で信頼できる人物として、晩年にはジョッキークラブの裁決委員や理事を歴任している。

　そのソルティコフ公は1903年に実子を残さず急死してしまう。事前に用意されていた遺言書にしたがって莫大な資産が数多くの人々に贈られたのだが、競馬関係の資産だけは一括して親しくしていたクリントン夫人という人物の名義とされた。このうち、既に競走年齢に達して厩舎に入っていたものは調教師が引き継ぎ、牧場とそこにいた馬たちは競売にかけられ、その売上は夫人の年金として運用された。このとき売られた馬の中から、のちにチャンピオンとなる[[ハリーオン]]の母が出ている。

　先祖から伝わる名誉ある資産を競馬に使ってしまうというのは典型的な「ダメ貴族」な感じもするが、とにかくソルティコフ家というのはとんでもない資産をもっていた（既にイギリスやフランスでは近代化・大衆化が進んで貴族は一様に没落傾向にあった。）。だからソルティコフ公が死んだときも、生前に親しくしていた人物に遺したぶんだけで（いまの価値にして）数十億円の現金資産があった。しかも、それからまもなくロシア革命があり、ロシアにいた王族・貴族たちは全てを（命までも）失うことになったので、結果から見るとソルティコフ公がイギリスやパリで資産を遺したのは正解だったともいえる。

===メテオと母系===
　ソルティコフ公が自身の[[ランウェイズ牧場]]と[[クレムリンハウス厩舎]]を拓いたのは1874年のことなので、それ以後の所有馬の多くは自家生産馬である。インタグリオーの母系でみると、3代母で1867年生まれの[[メテオ]]([[Meteor]])はよそで生産された牝馬で、それを購入してランウェイズ牧場の基礎繁殖牝馬にしたのだろう。

【インタグリオーの母系概略図】
:<small>*Duty,MeteorとHurry On以外はソルティコフ公の生産馬である。</small>

:Duty 1860（父 [[Rifleman]]）
:｜[[Meteor|METEOR]] 1867（父 [[Thunderbolt]]）
:｜｜Meg Merrilies 1874（父 [[Macgregor]]）
:｜｜｜[[Mephisto]] 牡 1883（父 [[Robert the Devil]]）③2000ギニー
:｜｜Radiancy 1876（父 [[Tibthorpe]]）
:｜｜｜'''[[Sheen]]''' 牡 1885（父 [[Hampton]]）[[ジョッキークラブC]]、[[シザーウィッチ]]
:｜｜｜Vulpecula 1891（父 [[Melton]]）
:｜｜｜｜Vulpio 牡 1897（父 [[Curio]]）
:｜｜｜'''[[Tarboton]]''' 牡 1894（父 [[Ayrshire]]）ニューマーケットトリエニアルS
:｜｜'''[[Mask]]''' 1877（父 [[Carnival]]）[[ジュライS]]、[[ドローイングルームS]]、③[[ダービー]]
:｜｜LIGHT OF OTHER DAYS 1882（父 [[Balfe]]）
:｜｜｜Maid of Artois 1887（父 [[Tibthorpe]]）アルゼンチンで種牡馬
:｜｜｜'''[[Woolsthorpe]]''' 牡 1888（父 [[Tibthorpe]]） [[ジュライC]]、クイーンズスタンドプレート2回。
:｜｜｜　　　　　　　　　　　アメリカで種牡馬となり、ケンタッキーダービー馬[[Donau]]などを出す。
:｜｜｜[[Curio]] 牡 1889（父 [[Thurio]]）③2000ギニー
:｜｜｜[[Cameo|CAMEO]] 1891（父 [[Thurio]]）②[[リッチモンドS]]
:｜｜｜｜'''INTAGLIO *[[インタグリオー]]''' 牡 1899（父[[Childwick]]）
:｜｜Argo Navis 1883（父 [[New Holland]]）
:｜｜｜Argos 牡　1897（父 [[Ladas]]）
:｜｜｜La Toison d'Or 1893（父 [[Gold]]）
:｜｜Devils Hoof 牡　1884（父 [[Balfe]]）アルゼンチンで種牡馬
:｜｜Star 1887（父 [[Thurio]]）
:｜｜｜Tout Suite 1904（父 [[Sainfoin]]）
:｜｜｜｜'''[[ハリーオン|HURRY ON]]''' 牡　1913（父 [[Marcovil]]）[[セントレジャー]]。英チャンピオンサイヤー

　母系をずーっと遡ると、18世紀後半に[[ドンカスターカップ]]に勝った[[Faith]]という牝馬に行き着く。Faithは2頭のドンカスターカップ優勝馬を産んだ名繁殖牝馬だが、[[メテオ]]に至る系統はその分枝で、数代にわたってこれといった活躍馬は出ていない。

　メテオの母デューティは、その父ライフルマン([[Rifleman]])がクリミア戦争終戦直後にロシアに輸出されており、もしかするとソルティコフ公にとっては縁のある血統だったのかもしれない。

　メテオ([[Meteor]])はジョン・ダグデール・アストレイ准男爵（[[:en:Sir John Dugdale Astley, 3rd Baronet|Sir John Dugdale Astley]]）の生産馬である。ただし、メテオが生まれた時点ではまだ爵位を相続しておらず、「アストレイ中佐」名義だった。アストレイ氏はクリミア戦争に従軍して中佐まで昇格し、戦後は競馬やボクシングに興じ、勝つときも負けるときも大きく賭けることで話題になる人物だった。

　おそらく、ソルティコフ公は現役引退後のメテオを勝ってランウェイズ牧場にいれたのだろう。メテオの産駒はみなソルティコフ公の名義で生産され、ソルティコフ公のピンクと黒の服色で出走している。

　上の母系図を眺めると、ソルティコフ公がこの系統に[[Balfe]]、[[Gold]]、[[Thurio]]、[[New Holland]]などを盛んに交配しているが、これらもみなソルティコフ公が生産した牡馬で、公の所有した代表的な活躍馬だった。



===母カメオの産駒===
:Cameo　1891　br ([[Thurio]])
:｜死産　1896 c ([[Macheath]])
:｜Netzky 1897 b f ([[Juggler]])  Mr J.Reiss
:｜不受胎
:｜Intaglio　1899 ch c　（[[Childwick]]） Mr J.Reiss 
:｜Marquis San Marco　1900 br c （Macheath） Mr J.Reiss 
:｜不受胎　1901（Newhaven）Mr J.Reiss 
:｜不受胎　1903（Newhaven）Mr J.Reiss →ベルギーへ 
ベルギーへ輸出

*[https://books.google.co.jp/books?id=37ROAAAAYAAJ&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q=Cameo&f=false General Stud Book XIX(19巻)]
*[https://books.google.co.jp/books?id=yyUYAAAAYAAJ&pg=PA740&lpg=PA740&dq=1902+Intaglio+Childwick&source=bl&ots=upipxnQy_m&sig=ACfU3U2uPNtG80r3kC6SLTxF5Yx0fLNn2Q&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwi1yoGxtITwAhVPM94KHUt9A-wQ6AEwBXoECAcQAw#v=onepage&q=Cameo&f=false 20巻]


Cameo
*bred by Prince Soltykoff in 1901
*got by Thurio
　GSBによると、カメオはMr.J.Reissの名義の所有馬になっており、IntaglioもMr.J.Reissの生産馬だ。

　インタグリオーの母、カメオ（[[Cameo]]）は2歳のときに[[グッドウッド競馬場]]の[[リッチモンドS]]に出て勝馬から8馬身差の2着になった記録がある。ソルティコフ公にしてみれば、前年のリッチモンドSもマスク（[[Mask]]）産駒のHaddonでアタマ差の2着に惜敗しており、2年連続の2着だった。

===馬名の由来===
{| style="float:right;width:100px;margin-left:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Cameo of Sardinian conch, Ascione e Antonio Mennella 1925, Museo Ascione.jpg|120px|link=]]
|[[ファイル:Intaglioclock.jpg|120px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|カメオ（浮彫）
|インタリオ（沈彫）
|}
　ソルティコフ公は、父馬と母馬の名前から考えたさまざまなタイプの馬名を与えている。

　メグメリリーズ（Meg Merrilies）やメフィスト（[[Mephisto]]）などは物語の登場人物の名前で、シューリオ（[[Thurio]]）はシェイクスピアの喜劇『ヴェローナの二紳士』の主要登場人物である。メフィストの場合、父馬が[[ロバートザデヴィル]]なので悪魔つながり、シューリオの場合は母馬の名がヴェローナ、という具合だ。（ヴェローナはイタリア北部の都市名で、『ロミオとジュリエット』の舞台でもある。）

　メテオ産駒では、アルゴネーヴィス（Argo Navis）は星座の「アルゴ船座」、スター（Star）はそのものズバリ「星」と、「天体つながり」である。このほか、ヴァルペキュラ（Vulpecula）「こぎつね座」などの名も見える。ラディエンシー（Radiancy）やその子シーン（[[Sheen]]）は「輝く」という意味。

　カメオの場合、その全兄のキュリオ（[[Curio]]）が「骨董品」という意味だ。これは父馬「Thurio」と祖母の「Meteor」と韻を踏んだ格好になっている。「Cameo」も同じように音韻を意識した命名になっていて、カメオというのは宝石に彫刻（浮き彫り）を施した工芸品のことをさす。

　<ruby><rb>浮き彫り</rb><rt>カメオ</rt></ruby>と対になる工芸技法が「<ruby><rb>沈み彫り</rb><rt>インタリオ</rt></ruby>」（Intaglio）である。<ruby><rb>インタリオ</rb><rt>Intaglio</rt></ruby>は、とくに宝石の裏側から沈み彫りを施すと、表側から見ると宝石の中に映像が浮かび上がって見えるという細密な美術工芸で、最上級の美しい工芸品とされている。Intaglioはもともとイタリア語なので「g」は発音しないのだが、本馬の場合はイギリスから日本へ輸入されてカタカナ馬名を授かる際に「インタグリオ」と読まれることになった。

　余談だが、日本には1960年代にインタグリオーという同名の繁殖牝馬が輸入されている。これはあの三冠牝馬メルド（[[Meld]])の直仔という超良血馬で、曾孫に[[金杯(西)]]や[[愛知杯]]を勝った[[ホワイトアロー]]が出た。

===インタグリオーとハリーオン===
　Meteorの晩年の産駒にStar（父Thurio）というのがおり、この孫に[[ハリーオン]]が出た。ハリーオンは無敗のまま種牡馬になると、ヨーロッパで滅びかけていたゴドルフィンアラビアンの直系を復活させ、サラブレッド史上に残る大ステイヤー父系を世界中に発展させた。ただし、それは第一次世界大戦以後の1920年代の話であり、インタグリオーが日本へ輸入された頃にはまだハリーオンは生まれてすらいない。

　簡単に言うと、インタグリオーの母系には大した馬はいないし、血統表には影響力のある種牡馬も見当たらない。裏を返して言うと、インタグリオーを種牡馬として牝馬に交配する際には、セントサイモン以外の血脈を気にする必要がなく、セントサイモンだけを強調する配合がいくらでもできた、ということになる。「サラブレッド血統研究家」の笠雄二郎は『日本サラブレッド配合史』のなかで、小岩井農場がセントサイモンのラインブリードを行うために選んだのがインタグリオーである、と評している。

==小岩井農場のサラブレッド生産==
　鉄道の父として知られる鉄道庁長官の井上勝、三菱初代社長・岩崎弥太郎の側近で日本鉄道会社副社長の小野義真、そして三菱二代目社長の岩崎彌之助の3人は明治24年（1891年）に岩手の原野を30万円をかけて開墾し、大規模な西洋式近代農場を創設した。上野・青森間の鉄道敷設に伴う損失を埋めるための企だったが、この広大な牧場運営はすぐに頓挫してしまった。

　明治32年（1899年）に岩崎家が農場の再建に乗り出し、創業者の三人の名から一文字ずつとって'''[[小岩井農場]]'''と命名した。はじめ牛・羊や、ハクニー種などの軽種馬の生産を行っていたが、明治39年（1906年）に若い頃から乗馬に興じた二代目の岩崎久弥が農場場主になると彼は馬産に力を注ぎ、明治40年（1907年）、英国からサラブレッド種牡牝馬21頭を輸入した。

　この駿馬の購買を依頼された[[下総御料牧場]]長の[[新山荘輔]]は、自ら英国の牧場を巡り、[[ビューチフルドリーマー]]、[[アストニシメント]]、[[プロポンチス]]、[[フラストレート]]、[[フロリースカップ]]、[[ヘレンサーフ]]など、これぞという優良牝馬20頭と種牡馬1頭を選定した。この時代、サラブレッド原産国の英国においてさえも、30頭規模の牧場は極めて稀であり、なおかつ厳選した優良馬ばかり21頭を集めた牧場というのはほとんど無いといえる。この点で、当時の小岩井農場は世界有数のサラブレッド生産地であったといえよう。
 
　当時はまだ他の軽種に比べてサラブレッドは飼育が難しいと考えられていた。前年の明治39年（1906年）に内閣に馬政局が設けられると、軍馬改良の一環として国家事業としてサラブレッドも導入されることになった。馬政局が明治40年（1907年）に輸入したサラブレッドは牡15頭、牝7頭の計22頭で、購入価格は総額12万7,711円である。また、皇室の[[下総御料牧場]]のサラブレッド輸入は僅かに4頭であった。

　同じ年に小岩井農場が21頭を輸入するのに13万2,000円を費やしている。これは国が鳴り物入りで創設した機関である馬政局の購買額を上回っており、小岩井農場の輸入の規模がいかにエポックメイキングであったか想像することができよう。もちろん、再建を果たしたばかりの小岩井農場にとってもこの金額はまる2年分の売上総額に匹敵する巨額であり、一大ベンチャーだった。このようなベンチャーを可能にしたのは、政府と馬政局による後押しがあってのことである。

　インタグリオー*自身の購買価格は10,000円である。21頭の総額が13万円だから、1頭で1万円というのは大きく平均を超えている。このことからも、インタグリオーを重要と考えていたかが窺い知れる。

==種牡馬==
===年譜===
:1907（明治40年） 輸入
:1908（明治41年） 供用開始（岩手県・小岩井農場）
:1922（大正11年） 供用停止

==代表産駒==

==父系==
===父系概略図===
{{インタグリオー系}}

===父系図===
{{Form父系 
|線 = ｜
|imp = 
|馬名 = {{BT1|[[St.Simon]]}}
|… = …………………………………<br>｜<br>｜<br>｜<br>｜
|性 = 牡
|生年 = 1881
|生国 = GB
|成績 = {{BT1|英愛種牡馬チャンピオン}}（1890-1896年・1900-1901年）<br>{{BT1|英愛BMSチャンピオン}}（1903-1907年・1916年）<br>{{BT2|[[アスコット金杯]]}}（1884年）、{{BT2|[[グッドウッドC]]}}（1884年）、{{BT2|[[エプソム金杯]]}}（1884年）
}}
{{Form父系 
|線 = ｜｜
|imp = 
|馬名 = {{BT2|[[Childwick]]}}
|… = …………………………………<br>｜｜
|性 = 牡
|生年 = 1890
|生国 = GB
|成績 = {{BT2|[[ロシア皇太子H]]}}
}}
{{父インタグリオー系}}

===父系テンプレート===
*[[Template:インタグリオー系]]
*[[Template:父インタグリオー系]]
**[[Template:父インタグリオー系1908]]
**[[Template:父インタグリオー系1909]]
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**[[Template:父インタグリオー系1919]]
**[[Template:父インタグリオー系1920]]
**[[Template:父インタグリオー系1921]]
**[[Template:父インタグリオー系1922]]

*[[インタグリオー系]]

==システム==
===外部リンク===
{{外部リンク馬
| JBISurl = https://www.jbis.or.jp/horse/0000333061/
| JBISname =インタグリオー(GB)
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| AHname =
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| OIname =
| 凪url = http://www.ne.jp/asahi/nagi/aflo/horse/intaglio.html
| 凪name =Intaglio (GB)/インタグリオー
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| 種Purl = http://keiba.no.coocan.jp/data/Intaglio.html
| 種Pname =*インタグリオー Intaglio
| bogusurl = http://p.bogus.jp/ped.php?id=8259
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| 世界name =
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}}

===リダイレクト===
*[[Intaglio]]
===カテゴリ===

==脚注==
{{Reflist}}

==カテゴリー==
{{DEFAULTSORT:インタグリオー}}
[[Category:イギリスの競走馬]]
[[Category:1899年生|英]]
[[Category:日本輸入種牡馬]]