タカイホーマのソースを表示

{{Spanish Express}}
__NOTOC__
'''タカイホーマ'''は、


{{五代血統表α
|name =
|和=[[タカイホーマ]] 
|国 = JPN
|主 = 高井嘉輔
|種 = サラブレッド
|年 = 1969
|性 = 牝馬
|毛 = 黒鹿毛
|誕 = 1969.03.25
|死 = 1972.11.19
|国 = {{F-JPN}}
|県 = 北海道・新冠町
|牧 = 
|者 = 吉田勇
|調 = 仲住達弥
|厩 = 
|厩地 = 美浦
|f = {{Imp}}[[スパニッシュイクスプレス]]
|f毛=鹿毛
|f年=1962
|m = ホマレタカイ
|m毛=鹿毛
|m年=1960
|ff = [[Sovereign Path]]
|ff毛=芦毛
|ff年=1956
|fm = Sage Femme
|fm毛=栗毛
|fm年=1954
|mf = [[ハクリョウ]]
|mf毛=鹿毛
|mf年= 1950
|mm = シマノオー
|mm毛=鹿毛
|mm年=1953
|fff = [[Grey Sovereign]]
|ffm = Mountain Path
|fmf = [[Le Sage]]
|fmm = Sylvia's Grove
|mff = {{Imp}}[[プリメロ]]
|mfm = [[第四バッカナムビューチー]]
|mmf = [[クモハタ]]
|mmm = [[昇正]]
|ffff = [[Nasrullah]]
|fffm = [[Kong]]
|ffmf = [[Bobsleigh]]
|ffmm = Path of Peace
|fmff = [[Chamossaire]]
|fmfm = Miss Know All
|fmmf = [[Fairway]]
|fmmm = Trustful
|mfff = [[Blandford]]
|mffm = [[Athasi]]
|mfmf = {{Imp}}{{×b1|[[ダイオライト]]}}
|mfmm = [[バッカナムビューチー]]
|mmff = {{Imp}}[[トウルヌソル]]
|mmfm = {{Imp}}[[星旗]]
|mmmf = {{Imp}}{{×b1|[[ダイオライト]]}}
|mmmm = {{Imp}}[[種正]]
|fffff = '''''[[Nearco]]'''''
|ffffm = [[Mumtaz Begum]]
|fffmf = [[Baytown]]
|fffmm = Clang
|ffmff = {{×r1|[[Gainsborough]]}}
|ffmfm = Toboggan
|ffmmf = [[Winalot]]
|ffmmm = Grand Peace
|fmfff = [[Precipitation]]
|fmffm = Snowberry
|fmfmf = [[Rhodes Scholar]]
|fmfmm = Dalmary
|fmmff = [[Phalaris]]
|fmmfm = [[Scapa Flow]]
|fmmmf = [[Bachelor's Double]]
|fmmmm = Credenda
|mffff = [[Swynford]]
|mfffm = [[Blanche]]
|mffmf = [[Farasi]]
|mffmm = [[Athgreany]]
|mfmff = [[Diophon]]
|mfmfm = Needle Rock
|mfmmf = {{imp}}[[シアンモア]]
|mfmmm = [[第三ビューチフルドリーマー]]
|mmfff = {{×r1|[[Gainsborough]]}}
|mmffm = Soliste
|mmfmf = [[Gnome]]
|mmfmm = Tuscan Maiden
|mmmff = [[Diophon]]
|mmmfm = [[Needle Rock]]
|mmmmf = [[Junior]]
|mmmmm = Enthusiast's Last
|FN = 5-h
|母系 = [[種正]]
|初出 = 2
|終出 = 3
|戦 = 13
|勝 = 6
|勝備考 = 
|タイトル = 
|鞍 = サンスポ杯4歳牝馬特別（オークスTR）、クイーンS、クイーンC、カーネーションC、②オークス
|金 = 58,591,400円
|CS = 
|CJS = 
|CBMS = 
|駒 = 
}}

==血統背景==
タカイホーマは、チャンピオンホース・[[ヒカルタカイ]]の妹として誕生した。ヒカルタカイは1966年（昭和41年）に[[大井競馬場|大井]]の3歳チャンピオン牡馬になり、翌年には[[羽田盃]]、[[東京ダービー]]、[[東京王冠賞]]を制して大井競馬場史上初の三冠馬となった。古馬になったヒカルタカイは中央入りすると、京都競馬場の[[天皇賞（春）]]を大差で圧勝、続く[[宝塚記念]]もレコード勝ちをおさめた。それっきり秋を全休したにも関わらず、この年の古馬チャンピオンに選出された。

その翌春にタカイホーマが誕生したのである。ヒカルタカイの父馬がいかにも米国ダート血統の{{imp}}[[リンボー]]だったのに対し、タカイホーマの父は最新鋭の欧州快速血統、[[スパニッシュイクスプレス]]にかわった。
===母系===
:{{imp}}[[種正]]
:｜[[トクマサ]]　JPN　1933　牡（{{imp}}[[ダイオライト]]）千葉産　9戦9勝　日本ダービー、帝室御賞典
:｜神正　JPN　1938　牝（{{imp}}[[ダイオライト]]）千葉産　6戦0勝
:｜｜[[ボストニアン]]　JPN　1950　牡（{{imp}}[[セフト]]）浦河産　28戦16勝　日本ダービー、皐月賞、②菊花賞
:｜昇正　JPN　1944　牝（{{imp}}[[ダイオライト]]）千葉産　2戦0勝
:｜｜シマノオー　JPN　1953　牝（[[クモハタ]]）　27戦2勝
:｜｜｜コウギョレントゲン　1958　牡（[[ヤサカ]]）浦河産　67戦4勝（障害特ハン）
:｜｜｜シマノボリ　1959　牝（[[ホウシュウ]]）浦河産
:｜｜｜ホマレタカイ　1960　牝（[[ハクリョウ]]）浦河産
:｜｜｜｜'''[[ヒカルタカイ]]'''　1964　牡（{{imp}}[[リンボー]]）新冠産　（中央）11戦3勝　天皇賞（春）、宝塚記念、東京王冠賞、東京ダービー、羽田盃ほか
:｜｜｜｜フクタカイ　1965　牝（{{imp}}[[リンボー]]）新冠産
:｜｜｜｜チカラタカイ　1966　牡（{{imp}}[[アドミラルバード]]）新冠産
:｜｜｜｜'''タカイホーマ'''　1969　牝（{{imp}}[[スパニッシュイクスプレス]]）新冠産
:｜｜｜｜タカイオーザ　1970　牝（{{imp}}[[スパニッシュイクスプレス]]）新冠産　17戦2勝
:｜｜｜｜ヒカルオーバー　1974　牝（{{imp}}[[セダン]]）新冠産
:｜｜｜｜｜ヒカリホマレ　1980　牝（{{imp}}[[テスコボーイ]]）新冠産
:｜｜｜｜｜｜[[マックスフリート]]　1987　牝（{{imp}}[[ダンサーズイメージ]]）新冠産　23戦15勝　東海ゴールドC、全日本サラブレッドCほか
:｜｜｜｜｜｜[[マックスブレイン]]　1987　牝（{{imp}}[[タイテエム]]）新冠産　57戦21勝　東海大賞典、ゴールド争覇ほか
:｜｜｜｜｜｜[[ナリタホマレ]]　1995　牝（[[オースミシャダイ]]）新冠産　69戦6勝　ダービーグランプリ、オグリキャップ記念
:｜｜｜ホマレマーチ　1967　牡（[[シモフサホマレ]]）鹿児島産　11戦0勝
:｜｜｜ホープタカイ　1968　牝（{{imp}}[[ティエポロ]]）鹿児島産　26戦0勝
:｜｜｜ブルカズサ　1696　牝（{{imp}}[[ニルコス]]）鹿児島産
:｜｜｜ホシタカイ　1970　牝（{{imp}}[[ニルコス]]）鹿児島産　3戦0勝

*[[下総御料牧場の基礎輸入牝馬]]参照

==戦績==
1970年代は関西馬が強くなり始めた時代だった。これは完全に、昭和44年（1969年）に開設された栗東トレーニングセンターの影響である。それ以前は、関東ならば中山と東京、関西ならば京都と阪神競馬場に厩舎があり、競走馬はみなそこで調教を積んでいた。栗東は滋賀県にあり、関西の阪神競馬場や京都競馬場からちょっと離れていたのだが、そこに調教に特化した専用施設ができたのだ。

何十年も経ったあとから見ると効果ははっきりしていたのだが、当時の競馬関係者、とくに関東の競馬関係者は栗東トレセンの効果を過小評価していた。1970年代前半から関西馬が重賞レースを席巻しても、たまたまだと言っていた。日本経済新聞の記者、千草伊三郎は「それはないね。トレセンができて関西馬が強くなったっていうのは、競馬会の宣伝みたいのものや」と一蹴している。彼らによれば、2歳戦線や3歳クラシック路線の春先には関西馬が活躍するが、それは関西の調教師が数多くレースを使うことで馬が早く仕上がるせいなのだという。関東の調教師は良血馬をじっくり仕上げるのを好む。だから、早い時期は関西馬が走るが、夏から秋になり古馬になると、関東馬がはっきり優勢になるのだという。

しかしタカイホーマがクラシックを争った1972年に限って言うと、関西馬と関東馬にはあまりにも大きな環境の差がつくことになった。馬インフルエンザの大流行である。関東では6000頭以上がインフルエンザにかかり、競馬が3ヶ月近く中止になった。単に開催できないだけでなく、全く調教もできないわけだから、関西に比べると半年分も仕上がりが遅れることになる。一方、関西の側からすると、このインフルエンザ騒ぎで1972年の日程が軒並み1ヶ月から2ヶ月も遅れることになり、これが大打撃になった。4月の桜花賞や5月のオークスに狙いを定めてスケジュールを組んでいたのに、その計画が大きく狂ったのだ。当然これは競走馬の体調や疲労に大きな影を落とすことになる。この世代はそれにふりまわされることになった。

===全出走履歴===
{| style="width:97%; margin-left:1em; border-width:0px 0px 2px 0px; border-color:#00366c; border-style:solid; border-collapse:collapse; ; text-align:left;color:#00366c;background-color:rgba(255, 255, 255, 0.20 )"
|-style="border-bottom:2px solid #00366c"
| 齢
| 年
| 月
| 日
| 場
| レース名
| 種
| 距
| 着順
| 1着馬(2着馬)
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 2
| 1971
| {{0}}9
| 12
| [[札幌競馬場|札幌]]
| 新馬戦
| D
| 1000
| style="font-size:1.3em;"| 5
| シュウエイホープ
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}9
| 25
| 札幌
| 新馬戦
| D
| 1000
| style="font-size:1.3em;"| '''1'''
| (ハシエイユウ)
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| 11
| {{0}}7
| [[東京競馬場|東京]]
| 黄菊賞<small>200万下</small>
| 芝
| 1400
| style="font-size:1.3em;"| '''1'''
| (パワーライフ)
|-style="border-bottom:1px solid #00366c"
| 
| 
| 11
| 27
| 東京
| さざんか賞<small>400万下</small>
| 芝
| 1400
| style="font-size:1.3em;"| 3
| [[メイジザオウ]]
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 3
| 1972
| {{0}}3
| 19
| 中山
| '''[[京成杯]]'''
| 芝
| 1600
| style="font-size:1.3em;"| 4
| [[ヒデハヤテ]]
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}4
| {{0}}2
| 中山
| '''[[クイーンC]]'''
| 芝
| 1600
| style="font-size:1.3em;"| '''1'''
| （[[ナオユキ]]）
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}5
| 21
| 中山
| [[カーネーションC]]
| 芝
| 1600
| style="font-size:1.3em;"| '''1'''
| ([[カミノチドリ]])
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}6
| 11
| 中山
| '''[[4歳牝馬特別]]'''
| 芝
| 1800
| style="font-size:1.3em;"| '''1'''
| （[[タケフブキ]]）
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}7
| {{0}}2
| 府中
| '''[[優駿牝馬|オークス]]'''
| 芝
| 2400
| style="font-size:1.3em;"| 2
| [[タケフブキ]]
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}7
| 30
| 府中
| '''[[日本短波賞]]''' GI
| 芝
| 1800
| style="font-size:1.3em;"| 3
| [[スガノホマレ]]
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| {{0}}9
| 17
| 中山
| '''[[クイーンS]]'''
| 芝
| 2000
| style="font-size:1.3em;"| '''1'''
| （[[キョウエイグリーン]]）
|-
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| 10
| 29
| [[京都競馬場|京都]]
| '''[[京都牝馬特別]]'''
| 芝
| 1600
| style="font-size:1.3em;"| 4
| [[セブンアロー]]
|-style="border-bottom:1px dotted #00366c"
| 
| 
| 11
| 19
| 京都
| '''[[ビクトリアC]]'''
| 芝
| 2400
| style="font-size:1.3em;"| 中止
| [[アチーブスター]]
|-
|}

===2歳時(1971年)===
{| style="float:left;width:120px;margin-left:1em;margin-top:0.5em;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|-style="background-color:rgba( 140, 188, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:タカイホーマオークス.png|240px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|11月のさざんか賞（400万下）時のタカイホーマ
|}
2歳のタカイホーマは、能力の片鱗はみせていたものの、本格的な一流馬としてはまだ頭角を表していない。当時の2歳馬路線は最下級クラスのうえに100万条件、200万条件、400万条件、オープン級と階層化されていたのだが、タカイホーマは新馬戦と200万条件を勝って400万条件で敗れた。それだけである。

しかしそれでもまったく注目されていなかったわけではなく、この年の『優駿』フリーハンデでは関東の2歳牝馬のなかでは4位にランクされた。全国ランキングでは6位である。

しかしそれにしても、この世代には東西に図抜けたチャンピオン牝馬がいた。関東の[[トクザクラ]]と関西の[[シンモエダケ]]である。

'''[[トクザクラ]]'''は、デビューからレコード勝ちを含む3連勝。[[京成杯3歳S]]では牡馬を相手に7馬身ちぎり、[[朝日杯3歳S]]も牡馬を負かして勝った。5戦4勝うち重賞2勝は文句なしの成績で、この年の[[啓衆賞]][[最優秀3歳牝馬]]に選出されている。フリーハンデでも関東の全3歳馬の首位、全国の3歳馬のなかでも2位、牝馬に限定すると全国首位である。（全国1位は[[ヒデハヤテ]]。）

対する関西の3歳女王'''[[シンモエダケ]]'''は、こちらもデビュー戦をレコード勝ちして3連勝、[[阪神3歳S]]ではヒデハヤテにこそ千切られたものの、他の牡馬をおさえて2着になっている。啓衆賞こそ逃したが、フリーハンデではトクザクラと同値で首位を分け合った。

ところで、この年の3歳牡馬のチャンピオンは[[ヒデハヤテ]]だった。不良馬場で行われた2戦目の条件線では敗れたが、[[阪神3歳S]]は2着シンモエダケに8馬身差をつけるレコード勝ち。その勝ちタイムは当時の日本レコードに迫るもので、2歳馬としては驚異的な時計だった。ただし当時から、ヒデハヤテをもちあげることには異論も呈されていた。[[武田文吾]]調教師は「マスコミが先走りすぎ」だと切り捨てた。シンザンやメイズイの時代には、どんなに活躍しても競走馬が新聞の記事になることはまれだった。しかし最近は、スポーツ新聞が毎日2面も使うようになった―。

===3歳時(1972年)===
タカイホーマは3歳春の時点で馬体重480kgから470kg台で出走しており、「牝馬ながら大柄で逞しい」「牡馬並みの馬格」の馬だった。

====流感と厩務員ストライキの影響====
1971年（昭和46年）の暮れ、競馬界は[[馬インフルエンザ]]（流感）に襲われた。日本国内での発症は初めてであり、対策は遅れた。気づいた頃には、中央競馬だけで2000頭 ― ほぼすべての関東馬が発症した ― 、地方競馬や乗馬クラブも含めると関東一円で6782頭が発症した。12月には多くの馬が出走ができなくなり、[[有馬記念]]でも本命視されていた[[メジロアサマ]]や[[アカネテンリュウ]]らが出走取消となった。

翌1972年は、関東の中央競馬開催は年初から全面的に休止となった。単に競馬を開催しないだけでなく、調教コースも併催になったからトレーニングもできない。（インフルエンザにかかった馬はそれどころではないのだが。）結局、2月26日に中山競馬が再開されるまで、ほぼまるまる2ヶ月間の中止となった。2ヶ月のあいだトレーニングができなければ、競走馬がまともに出走できる体勢が整うまでにはさらに何週間かを要すだろう。これに追い打ちをかけたのが馬丁（厩務員<ref group="注">当時は「馬丁」と呼ばれていた。この呼称を「厩務員」に改めたのは後のことである。</ref>）によるストライキである。

こうしたわけで、1972年の開催日程はは軒並み乱れ、1ヶ月から2ヶ月遅れで開催されることになった。牝馬のクラシック競走第1弾である[[桜花賞]]は通常の4月前半ではなく5月21日に開催、続く[[優駿牝馬]]（オークス）は5月半ばではなく7月2日に行うことになった。関東地区の重賞はほとんどが1、2ヶ月ずれ込むことになった。

関西では競馬は休止されることなく通常通り行われた。のだが、なにしろ日程が2ヶ月も変わってしまったので、こちらはこちらで予定が狂ってしまった。桜花賞にピタリと狙いを定めてスケジュールを組んでいたのが、修正を余儀なくされたのだ。これが関西の有力馬の調整過程に大きな影響を及ぼすことになった。関西牝馬の筆頭格、シンモエダケの調教師は当時、次のように述べている。「こちらも、以前の日程にあわせて馬をつくっているんで、狂いが出ていることはたしかです。これは関東でも同じでしょうが、関東では競馬を休み、こっちは競馬をしていてた、という違いがあります。これがどう現れるか、ですね。」

====京成杯====
2月末に関東地区でようやく競馬が再開にこぎつけると、[[京成杯]]（芝1600m）が3月19日に[[中山競馬場]]で行われた。驚いたことに、関西のチャンピオンで5連勝中の[[ヒデハヤテ]]が遠征してきた。本来、京成杯は1月に行われ、同じ日に関西では[[シンザン記念]]をやっている。だから京成杯に関西のトップホースが出走するなんてことはない。しかし今年に限っては、関東と関西は異なるスケジュールで動いていて、3月中旬といえばふだんの年なら皐月賞トライアルの[[スプリングS]]をやるような時期なのだ。ヒデハヤテは「ふだんの年」のスケジュールで、関西のオープン戦、[[きさらぎ賞]]と連勝して東上してきたのだ。

この関西の「星」をみるために、この時期としては異例の10万を超す観衆が中山競馬場に集まった。ヒデハヤテは単勝支持率74％（1.0倍）の圧倒的な人気を集めた。この強力な大本命の出走によって、関東馬は続々と回避してしまい、出走馬はヒデハヤテ以外にわずか6頭となった。そのなかには2頭の牝馬がいた。タカイホーマと[[キョウエイグリーン]]である。

5番人気のタカイホーマは序盤こそ2番手につけたものの、まもなく最後方に下がった。3番人気のキョウエイグリーンは、逃げるヒデハヤテと競り合う形で先頭を争う格好になり、1ハロン11秒台から12秒フラットとなるハイペースを作り出した。第4コーナーをまわって最後の直線に入り、ヒデハヤテがスパートすると簡単に後続を離し、追いかけていたキョウエイグリーンは失速した。ヒデハヤテはゴール前で手綱を抑える余裕をみせての勝利をおさめた。それでも優勝タイムは1分35秒8、当時、関東の4歳馬のトップクラスと目されていた[[イシノアラシ]]の持ちタイムが1分36秒1だった。

無謀にもヒデハヤテに突っかかったキョウエイグリーンは最下位に沈んだ。タカイホーマは最後の直線だけで追い込んで4着に入ったのだが、走破タイムは1分36秒7で、牝馬としてはかなり好タイムだった。
{{Template:結果5
|和暦 = 昭47
|西暦 = 1972
|月 = {{0}}3
|日 = 19
|競馬場 = [[中山競馬場|中山]]
|レース名 = [[京成杯]]
|格 = 
|1着賞金 = 1000万
|芝ダ障 = 芝
|距離m = 1600
|馬場状態 = 良
|重量方式 = 別定
|頭数 = 7
|馬番 = 1
|騎手 = [[大崎昭一]]
|斤量 = 52kg
|人気順 = 5
|単勝 = 
|着順 = 4着
|1着馬 = [[ヒデハヤテ]]
|1着斤量 = 57
|勝時計 = 1.35.8
|2着馬 = [[ランドプリンス]]
|2着斤量 = 56
|2着差 = 1 3/4
|3着馬 = [[カネアキバ]]
|3着斤量 = 55
|3着差 = 1 3/4
|4着馬 = [[タカイホーマ]]
|4着斤量 = 52
|4着差 = 1 3/4
|5着馬 = [[インターブレイン]]
|5着斤量 = 54
|5着差 = クビ
|備考 = 
}}
ヒデハヤテの単勝は1.0倍だった。2着にブービー人気の[[ランドプリンス]]が潜り込んだおかげで、複勝は110円ついた。ヒデハヤテはこのあと皐月賞の直前に、スプリングステークスに圧倒的な1番人気で出走した。しかしレース中に蹄鉄が外れて折れ曲がってしまい、それをつけたまま走り2着に敗れるアクシデントがあった。ヒデハヤテはこれで休養に追い込まれてしまった。

====クイーンカップ====
桜花賞は4月9日に開催のはずだったが、インフルエンザの影響で5月21日に順延になっていた。本来は関東における桜花賞の前哨戦として2月に行われるはずの[[クイーンカップ]]は、4月2日に中山競馬場で行われた。

関東の牝馬の中で最強と目されていた[[トクザクラ]]は、年明け緒戦のオープン競走を楽勝したあと、桜花賞にむけて早めに関西入りしており、クイーンカップには出てこなかった。そのため、クイーンカップの中心は、前走の京成杯で牡馬の最強馬ヒデハヤテと張り合って見せ場を作ったキョウエイグリーンとタカイホーマとなった。

しかし両馬には、不安材料もあった。激戦だった京成杯からレース間隔が短く、疲労や体重減が心配された。特にタカイホーマは京成杯出走時の馬体重が476kgだったのに対し、今回は464kgとかなり馬体が細くなっていた。調教師の仲住は、タカイホーマの食欲が衰えていることを公に認めたうえで、疲労や体重減を考慮し、クイーンカップに出たあとは関西遠征はせず、桜花賞に出走しないことを予定していると述べていた。

これまでタカイホーマは「腰に甘さがある」ために道中は無理せず、最後の直線での追い込みにかける戦法をとっていた。しかしこのクイーンカップでは先行し、逃げ馬を後ろから突っついてハイペースを作り出した。最後の直線に入るとやすやすと抜け出し、2着に5馬身差をつけて圧勝した。この走破タイムは、同日の古馬オープン競走で[[ベルワイド]]が記録したものを上回っていた。（ベルワイドはこのあと[[天皇賞]]（春）に出て逃げ切り勝ちを収めた。）
{{Template:結果5
|和暦 = 
|西暦 = 
|月 = {{0}}4
|日 = {{0}}2
|競馬場 = [[中山競馬場|中山]]
|レース名 = [[クイーンカップ]]
|格 = 
|1着賞金 = 1000万
|芝ダ障 = 芝
|距離m = 1600
|馬場状態 = 良
|重量方式 = 馬齢
|頭数 = 10
|馬番 = 3
|騎手 = [[大崎昭一]]
|斤量 = 52kg
|人気順 = 2
|単勝 = 3.1
|着順 = '''1着'''
|1着馬 = [[タカイホーマ]]
|1着斤量 = 52
|勝時計 = 1.36.6
|2着馬 = [[ナオユキ]]
|2着斤量 = 52
|2着差 = 5馬身
|3着馬 = [[マツソブリン]]
|3着斤量 = 52
|3着差 = 3馬身
|4着馬 = [[カミノチドリ]]
|4着斤量 = 52
|4着差 = 1 3/4
|5着馬 = [[ホウゲッコー]]
|5着斤量 = 52
|5着差 = 2 1/2
|備考 = 
}}
この勝利の結果、血統的に2400メートルの優駿牝馬（オークス）は長過ぎる懸念があるものの、タカイホーマはオークスでも好走できるのではないか、と期待を集めることになった。

====カーネーションカップと桜花賞の結果====
予定通り、タカイホーマはクイーンカップのあと西下せず、関東に留まった。そして5月21日に中山競馬場のカーネーションカップ（芝1600メートル）に出走し、2着に4馬身差をつけて1分36秒5という好タイムで勝利した。
{{Template:結果5
|和暦 = 
|西暦 = 
|月 = {{0}}5
|日 = 21
|競馬場 = [[中山競馬場|中山]]
|レース名 = [[カーネーションカップ]]
|格 = 
|1着賞金 = 
|芝ダ障 = 芝
|距離m = 1600
|馬場状態 = 良
|重量方式 = 
|頭数 = 9
|馬番 = 1
|騎手 = [[大崎昭一]]
|斤量 = 55kg
|人気順 = 1
|単勝 = 
|着順 = '''1着'''
|1着馬 = [[タカイホーマ]]
|1着斤量 = 55
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|2着差 = 
|3着馬 = 
|3着斤量 = 
|3着差 = 
|4着馬 = [[タケフブキ]]
|4着斤量 = 
|4着差 = 
|5着馬 = 
|5着斤量 = 
|5着差 = 
|備考 = 
}}

同日、[[阪神競馬場]]では4歳牝馬クラシック競走第一弾の[[桜花賞]]が行われた。前年から関西の4歳牝馬のトップと目されていた[[田之上勲]]厩舎の[[シンモエダケ]]は、前哨戦の[[フィリーズレビュー|阪神4歳牝馬特別]]を制しており、3割近い支持を集めて1番人気になった。関東のトップ牝馬として早めに関西入りしていた[[トクザクラ]]は2番人気となり、東西のトップ牝馬の直接対決として注目を集めた。関東からはほかにキョウエイグリーンも参加し、3番人気となっていた。

そのキョウエイグリーンがスタートと同時に飛び出し、猛烈なスピードで先頭を奪った。キョウエイグリーンによる2ハロン目のラップは10秒6、3ハロン目が11秒1、4ハロン目が11秒7と、相当なハイペースになった。一般に、桜花賞は前半がハイペースになる「桜花賞ペース」となることが多いが、それでもたいていは4ハロン（800メートル）47秒を切るかどうかという水準である。しかしこの年のキョウエイグリーンのラップタイムは4ハロン46秒1だった。『優駿』に桜花賞のレビューを書いた[[志摩直人]]は「絶対に突っ走ってはいけない」レベルの「壊滅への疾走」と表現した。

この結果、先行しながら大外をまわってキョウエイグリーンを中途半端に追いかけて道中で脚を使った人気各馬は、直線を向いたことにはもう末脚を失ってしまっていた。大変なハイペースだった前半4ハロンに比べて、後半4ハロンは51秒5と時間がかかった。報知新聞の後藤田正人記者は「あれほど前半と後半の時計の差がひどいレースはなかった」と評した。本来、シンモエダケとトクザクラは最後の直線での末脚を武器とするタイプだったのに、両馬とも直線に入った頃にはバテてしまっていた。トクザクラはなんとか4着に入ったが、シンモエダケは6着に終わった。

このレースを制したのは、ずっとインコースを回って目立たない位置にいた、人気薄の[[アチーブスター]]である。アチーブスターは桜花賞出走時の通算戦績が15戦2勝、未勝利戦を勝ち上がるまでに8戦を要し、オープン戦の優勝歴もなく、前走の阪神4歳牝馬特別4着が最良という成績だった。アチーブスターは、本命馬シンモエダケを出走させた田之上勲調教師の所属馬だったのだが、田之上はシンモエダケが直線で伸びを欠く姿にショックを受けていて、勝った馬がなんであるかを知らず、その優勝馬が自分の管理馬であることにもしばらく気づかなかったという。

アチーブスターの勝因は「絶妙な位置と追い出しの勝利（志摩直人）」と、騎手の[[武邦彦]]による好騎乗によるものとする声が多くあげられた一方、人気の2頭のコンディションが悪かったという指摘も行われた。シンモエダケは大事をとって休ませすぎて体重が重すぎ{{refnest|group="注"|シンモエダケを管理する田之上勲調教師は、元気なときは1ヶ月に1回は出走させる、という方針をもっていた。シンモエダケは3歳のときに5ヶ月で7戦、4歳になっても桜花賞の前までに5戦している。この年は桜花賞が延期になったので、桜花賞の前の出走回数も増えることになった。2月の時点で田之上調教師は、シンモエダケを出走させすぎではないかとの指摘に対して、そんなことはない、1ヶ月に1度は出走させるべきだとしていた。しかし、桜花賞が近づくにつれてハードワークを批判する報道が増え（「いかにも使い過ぎだ」朝日新聞・大島輝久）、調教師はその批判の影響をうけてシンモエダケのトレーニングを緩めてしまったという。その結果、ベストコンディションよりも体重が重くなってしまった。これについて「（世間の声に負けて休ませたことが）シンモエダケにとってはマイナスになった（中略）それぞれに流儀があるんだから、第三者の声に惑わされることなく、調教師は自分の流儀を押し通すべき（[[日本経済新聞]]・千草伊三郎）」としている。}}、トクザクラはハードワークがたたって体重が落ちていたのだという。アチーブスターの勝利は「本当に漁夫の利（日本経済新聞・千草伊三郎）」「過去の桜花賞馬で勝率が1割台というのはおそらくない（報知新聞・後藤田正人）」と評価された。

====オークスへ向けて====
ところが、桜花賞馬アチーブスターは、優駿牝馬（オークス）には出ることができなかった。オークスのためのクラシック登録をしていなかったのだ。アチーブスターは、第3回登録を行う4歳1月の時点で、8戦目にしてやっと未勝利戦を勝ったばかりだった。地元で行われる桜花賞の登録は一応済ませてあったが、東京競馬場で行われる優駿牝馬の登録は行っていなかった。「とても関東へ行くほどの成績をあげるとは思わなかったのだろう（宇佐美恒雄）」「当たり前だよ。未勝利と200万条件だけで、特別勝ってないんだ（朝日新聞・大島輝久）」と伝えられている。第3回の登録料は3000円で、優駿牝馬の優勝賞金が2300万円だったので、「3000円をケチって2300万円を逃す」と報じた新聞もあった。

6月11日に東京競馬場で、優駿牝馬（オークス）の本番3週前となる前哨戦、[[フローラステークス|4歳牝馬特別（オークストライアル）]]（芝1800メートル）が行われた。関東ナンバーワンとされていたトクザクラは、大目標の優駿牝馬を見据えて体調の回復に専念するためこのトライアルは見送りすることになった。オークス出走権のない桜花賞馬アチーブスターもいなかった。関西のナンバーワンとされていたシンモエダケは遠征してきたが、桜花賞の時と同じように状態はいまひとつとみられた。このためタカイホーマは単勝1.5倍と人気を集めることになった。

レースは序盤からハイペースで進んだが、これを先行集団で楽に追走したタカイホーマが、直線の坂の下で簡単に抜け出し、楽に勝った。走破タイムは1分49秒2と速く、オークストライアルで1分50秒を切ったのは7年ぶりだった。シンモエダケは7着に終わり、ほかに人気になっていた[[ナオユキ]]やセンコウミドリも奮わなかった。

タカイホーマは「強さが再認識された（サンケイスポーツ・岩村光恭）」と高く評価され、もしも桜花賞に出走いていれば「制覇できていたであろうはず（サンケイスポーツ・岩村光恭）」と持ち上げられた。

一方で、ゴール前で2着の[[タケフブキ]]に1馬身差まで詰め寄られたことから「勝ち振りがあまりよくなかったと聞いた（加藤みどり）」という声もあった。タカイホーマに騎乗していた[[大崎昭一]]も「2着に来たのがタケフブキとは…」との談話を残している。タケフブキは以前、トクザクラに7馬身離されて負けている馬であり、このレースでも12頭中最低人気のの低評価の馬に過ぎなかった。（タケフブキに対する低評価について文芸評論家の[[武蔵野次郎]]は、オークスの後に「こんな強い馬を知らなかったファンのほうがどうかしてる」と語った。）

そして、タカイホーマのスピードは高く評価されたものの、2400メートルに距離が伸びる優駿牝馬（オークス）では、血統的にいかにも距離が長過ぎるだろうと評された。タカイホーマの勝ちっぷりを「一点の非も打ちどころのない」としたサンケイスポーツの岩村光恭も、「オークス馬への可能性はかなり薄い」とした。もともと距離が伸びれば長距離血糖のシンモエダケが強いと言われており、オークスに出られないアチーブスターの騎手の武邦彦が、オークスではシンモエダケに騎乗するだろうとも報じられ、シンモエダケ優勢の見方がされていた。

ところが結局、「東西の両横綱」のはずのトクザクラとシンモエダケは、コンディションが悪いまま復調せず、7月のオークスには出ないことになった。

====オークス====
こうして、時期外れの7月2日の優駿牝馬（芝2400メートル）では、血統から来る距離不安説があったものの、タカイホーマが1番人気となった。注目は「タカイホーマがどう長丁場を克服するか（[[武蔵野次郎]]）」だった。トライアル4着の[[ナオユキ]]が2番人気で、同2着の[[タケフブキ]]と9着の[[センコウミドリ]]が差のない3番・4番人気となった。

このときのタカイホーマについては、見解が分かれている。マスコミ各社は、オークスの調教をみて、タカイホーマはピークを過ぎた、調子落ちだと報じた。「最近どうも三連勝していた当時の出来にないような気がする」「そろそろ下降気味になっても不思議はない」（[[大川慶次郎]]）、「追いきり見た感じはいくぶん調子落ちの兆候」（笹西司郎（「競馬ニホン」トラックマン））などなど…。当の厩舎サイドでは「乗った感じではコズミはみられず、ほぼ完調。いくらか、ほんのちょっと気合が足らんかな、とは思いますがねェ。」（大崎騎手）と言っていた。

レースはまたしてもスタートからキョウエイグリーンが逃げた。人気の一角センコウミドリがこれを2番手で追いかけるが、第2コーナー付近で馬群がバラけたところで、センコウクインが抑えきれなくなってあがっていってしまった。同馬主・同厩舎であるセンコウミドリは味方同士での「潰し合い」を避けて先をセンコウクインに譲り、キョウエイグリーンも2番手に抑えた。センコウクインは後続を離して飛ばし続け、前半5ハロン（1000メートル）の通過タイムは60秒1、9ハロン（1800メートル）の通過タイムは1分50秒9と、2400メートルのレースのラップタイムとしては稀に見る早さとなった。

このハイペースのため、タカイホーマは普段よりもやや抑えて中団を進んだ。第3コーナーから最終コーナーを中団でまわり、直線に入って抜け出し先頭にたった。タカイホーマが「そのままゴールするかと思われたが（福田喜久男）」、タカイホーマをさらに後ろでマークしていたタケフブキが「目覚ましいばかりのゴボウ抜き（武蔵野次郎）」で大外から一気に伸び、タカイホーマを抜き去った。ゴールまでのあいだに両馬の差は少しづつ開き、最終的に1馬身半差でタケフブキが優勝、タカイホーマは2着となった。タケフブキの走破タイムは2分28秒8と、優駿牝馬のレースレコードとなった<ref group="注">従前のレコードは1967年の[[ヤマピット]]による2分29秒6。このときヤマピットは前半1000メートル通過62秒4のペースで逃げ切っている。</ref>。

====日本短波賞====
このあと、タカイホーマは7月末の[[ラジオNIKKEI賞|日本短波賞]]（東京競馬場・芝1800メートル）に出走した。この競走にはイシノヒカルや[[ハクホオショウ]]ら関東の4歳牡馬トップクラスが集い、「関東四歳陣のいわばNo.1を競う<ref name="優駿_1972-09_80-81"/>」一戦となった<ref name="優駿_1972-09_80-81"/>。

タカイホーマは13頭の出走馬のなかで唯一の牝馬だったが、イシノヒカルに次ぐ2番人気に支持された。3番人気は3度のレコード勝ちをもつスガノホマレで、この馬は実績からするとハクホオショウらよりも下だったのだが、騎乗していた[[野平祐二]]騎手の現役最多勝利数記録樹立に王手がかかっており、人気を集めたものだった。そのスガノホマレが直線で最後方から追い込んで、12頭全馬をまとめてかわして勝ち、競馬場は野平騎手の記録達成に湧いた。タカイホーマは先行策からしぶとく伸びて3着に入った<ref name="優駿_1972-09_80-81"/><ref name="優駿_1972-10_30-33"/>。敗れたとはいえ、一流牡馬に伍して上位に入ったタカイホーマには改めて高評価が与えられた。文芸評論家で『[[優駿]]』に連載を持つ[[武蔵野次郎]]はタカイホーマについて「四歳No1牝馬と認められている<ref name="優駿_1972-11_20-23"/>」としている。

====クイーンステークス====
秋競馬が始まると、タカイホーマは9月17日のクイーンステークス（中山競馬場・芝2000メートル）に出走した。収得賞金による加増重量のため、タカイホーマだけは他馬より2kgから3kg重い55kgを背負った。このレースにはキョウエイグリーンも出走し<ref group="注">キョウエイグリーンはここまで5勝をあげているもののオープン戦ばかりで、他の馬と同じ52kgでの出走だった。</ref>、2頭の強豪に、夏の間に力をつけた新興勢力が挑むという図式になった<ref name="優駿_1972-11_70-71"/>。

レースはスタートと同時にキョウエイグリーンが先頭に立ってリードした。キョウエイグリーンは2番手以降に2馬身から3馬身の差をつけて逃げ、最終コーナーをまわって最後の直線に入ると、後続を突き放した。しかし、後方に控えていたタカイホーマが一気に伸びてきて、残り100メートルあたりでキョウエイグリーンを捉えると、さらに2馬身差をつけて勝ち、単勝1.8倍の人気に応えた。「タカイホーマの強さばかりが目立（[[共同通信]]・山田信夫）<ref name="優駿_1972-11_70-71"/>」ち、タカイホーマは「秋の四歳牝馬No.1の位置を確定した（武蔵野次郎）<ref name="優駿_1972-11_20-23"/>」「秋の女王の座についた（共同通信・山田信夫）<ref name="優駿_1972-11_70-71"/>」と言われるまでになった<ref name="優駿_1972-11_70-71"/>。

====京都牝馬特別====
タカイホーマは関西に遠征し、10月29日の[[京都牝馬特別]]（京都競馬場・芝1600メートル）に出走、初めての古馬との挑戦になった。同世代で「関西ナンバーワン」とされていたシンモエダケや、桜花賞を制したアチーブスターも出てきた。タカイホーマは、出走16頭のなかで最も重い斤量となる55kgを背負わされたにも関わらず、圧倒的な1番人気となった。1600メートル戦に実績のあるフセノスズラン、3連勝中のウキミドリといった古馬陣がこれに続いたものの、単勝支持率は大きく離れていた。4歳勢のシンモエダケは6番人気、アチーブスターは10番人気と低評価に留まった<ref group="注">アチーブスターは桜花賞優勝のあと休養にあて、秋競馬で復帰したものの、サファイアステークス7着、神戸新聞杯6着とふるわなかった。シンモエダケもオークストライアルで敗れたあと休み、10月の復帰緒戦のオープン戦で12着に大敗していた。</ref><ref name="優駿_1972-12_100-101"/>。

レースは全馬がほとんどひとかたまりとなって進んだ。2番人気のフセノスズランが2番手につけ、タカイホーマは5番手から6番手の位置取りで、馬群の外側にいた。古馬の有力馬がそのタカイホーマをマークして控えていた<ref name="優駿_1972-12_100-101"/>。

最終コーナーをまわって最後の直線に入るとフセノスズランが先頭に立った。タカイホーマは外を回って追い込んできた。しかし、最終コーナーでうまくインコースをついたセブンアローが内側から一気に伸びてきて、大外からはカツヤヨイも迫ってきた。ゴールまで残り50メートルのあたりで、この4頭の接戦になった。ゴールではタカイホーマが僅かに遅れ、残り3頭はほぼ並んでゴールした。勝ったのはセブンアロー、ハナ差の2着にカツヤヨイ、さらにハナ差の3着にフセノスズランとなり、タカイホーマはクビ差の4着だった。結果からすると、4歳のタカイホーマにとっては、まだ「古馬の壁は厚かった（[[新大阪 (新聞)|新大阪新聞]]・河野寛）<ref name="優駿_1972-12_100-101"/>」。

====ビクトリアカップでの死====
3回目となる[[ビクトリアカップ]]は格式こそクラシック競走ではないが、1着賞金は2100万円と桜花賞やオークスと同水準であり、4歳牝馬にとっての大レースだった。とは言え、京都競馬場では前週に関西での秋の最大のレースである[[菊花賞]]が行われたばかりで、ビクトリアカップ当日の入場者数は菊花賞に及ばない6万5000人あまりとなった。馬券の売り上げも菊花賞の10分の1ほどにとどまった<ref name="優駿_1973-01_98-99"/>{{refnest|group="注"|菊花賞の売上は約70.5億円<ref name="優駿_1972-12_16-18"/>、ビクトリアカップは約7.5億円<ref name="優駿_1973-01_98-99"/>。}}。

タカイホーマは、関東から遠征したただ1頭の出走馬となった。関西勢では、夏の札幌競馬で力をつけてきたタイラップが2番人気に推された。春の早い時期には「関西ナンバーワン」と呼ばれていたシンモエダケが3番人気、オークスで離れた3着だったカンツォーネが4番人気と続いた。だが、タカイホーマの単勝はこの3頭を合わせたよりも売れていて、圧倒的な1番人気になっていた。桜花賞優勝のアチーブスターも出ていたものの、桜花賞のあと休養を挟んで秋に復帰したあとの7着、6着、9着といいところがなく、5番人気でしかなかった<ref name="優駿_1973-01_98-99"/>。

公式発表による馬場状態は「稍重」だったが、秋晴れに恵まれて芝は「信じられないほどに<ref name="優駿_1973-01_98-99"/>」乾いていた。観客スタンド前のホームストレッチから発走してまもなく、大方の予想通りシュウエイホープが先頭に立った。が、これに続く2番手の位置につけたのが、普段は後方待機作をとるアチーブスターだった。これは意表をついた先行策であり、観客はどよめいた。レースはこの2頭が後続を3馬身ほど離して進み、前半6ハロン（1200メートル）の通過タイムが1分18秒6と、桜花賞やオークスのときとは打って変わってスローペースになった。タカイホーマは中団に控えた形になり、ほかの有力馬のほとんどがタカイホーマをマークする形で中団から後方に下げた。結果的には、この位置取りが勝負を分けることになった<ref name="優駿_1973-01_98-99"/>。

京都競馬場は向こう正面の後半から第3コーナー付近にかけて上り坂になっており、そこが「勝負どころ」とされている。各馬は順調に隊列を組んで走ってきたのだが、第3コーナーでこれが大きく乱れた。中団を走っていたタカイホーマが突如失速して一気に最後方まで下がり、タカイホーマをマークしていた有力馬は軒並みそのあおりを受け、後手を踏むことになった。スローペースを利して楽に先行していたアチーブスターは最後の直線に入っても余力を充分に残しており、タカイホーマのアクシデントの影響を受けた後続各馬の追い込みをかわして逃げ切った。桜花賞のときと同じように、アチーブスターの勝因はレース展開をよみきった武邦彦騎手の「好騎乗にあずかるところが大きかった」とされた<ref name="優駿_1973-01_98-99"/>。
[[file:Horse anatomy kyusetu2.png|thumb]]
タカイホーマは、第3コーナーの時点で骨折していたという<ref name="優駿_1973-01_98-99"/>。そこで停止することができず、片脚が不如意のままさらに1ハロン（200メートル）あまりも駆けてしまった<ref name="優駿_1973-01_98-99"/>。しかし、脚が不自由な状態で第4コーナーを曲がりきることができず、「くずれるように<ref name="優駿_1973-01_98-99"/>」転倒し、落馬してしまった。タカイホーマの症状は、両脚の第一指関節完全脱臼に加え、右後ろ脚にも浅屈腱断裂を起こしていた<ref name="優駿_1973-01_86-87"/>。それだけでも競走馬にとっては完全に致命傷であるが、折れた骨が心臓に刺さってしまい、出血多量で死亡した<ref name="優駿_1973-01_86-87"/><ref group="注">当時、中央競馬ではまだ、致命傷を負った競走馬に対する安楽死処置は一般的ではなかった。タカイホーマの事故の翌1973年に[[ハマノパレード]]が競走中に致命傷を負ったあと、丸一日放置されたあと屠殺された件が物議を呼び、それ以来、速やかな安楽死処分が行われるようになった。</ref>。


{{refnest|group="注"|ウマの第一指骨は、上部の第三中手骨と繋がっている。（図を参照。）その接続部には種子骨が付随している。第一指骨、第三中手骨、種子骨は頑強な靭帯で取り巻かれており、これら全体からなる関節を球節と呼ぶ。ウマが全力疾走する際には、球節自体が直接地面に接するまでになる。地面を蹴ったり着地したりして生じる強大な衝撃は、通常であれば球節の関節運動で吸収するのだが、全力疾走時に球節にトラブルが生じると、球節を構成する骨や靭帯に直接強大な負荷がかかり、ウマにとって致命的な重大な症状を引き起こすことになる。<ref>日本中央競馬会・競走馬事故防止対策委員会「競走馬と骨折」{{PDFlink|http://www.equinst.go.jp/JP/arakaruto/siryou/j2.pdf}},1985</ref>}}

====その後====
タカイホーマはこの年、父スパニッシュイクスプレスの産駒の中でもっとも賞金を稼いだ。LS12位。あと、タカイホーマの球節の件は、母の父ハクリョウの遺伝的特徴で、プリメロに遡る。（優駿1973-02特集）

桜花賞とビクトリアカップという2つの大レースを制したアチーブスターだが、そのあと12月に[[阪神牝馬特別]]に出て11着と大敗した。オークス馬のタケフブキは、オークスのあと長く休み、11月に関東で復帰したものの12着、4着といいところがなかった。春まで「関東ナンバーワン」と呼ばれていたトクザクラは桜花賞で負けたあと秋まで休み、11月に復帰して[[牝馬東京タイムズ杯]]と[[ダービー卿チャレンジトロフィー]]の2レースで古馬を破って連勝した<ref group="注">その後トクザクラは予定を変更し、有馬記念に唯一の4歳牝馬として出走した。しかし最下位に終わっている。</ref>。これらの成績を受けて、この年の[[JRA賞最優秀4歳牝馬|最優秀4歳牝馬]]の選考は紛糾した<ref name="優駿_1973-02_12-16"/>。

当時の選考方法は、各委員が1位馬と2位馬を投票する方式になっており、アチーブスターは「1位」票が最多だったものの、2位を含めた合計得点ではトクザクラのほうが上だった。委員はアチーブスター派とトクザクラ派に真っ二つに割れて譲らず、議論は平行線を辿ったままだった。結局、2頭を選出するという提案が行われ、安易な2頭選出は悪しき前例になるという批判もあったものの、異例の2頭同時受賞となった<ref name="優駿_1973-02_12-16"/>。

===評価===


と、センコウクインてハイペースになった。

==ん==
{{Template:結果5
|和暦 = 昭47
|西暦 = 1972
|月 = {{0}}3
|日 = 19
|競馬場 = [[中山競馬場|中山]]
|レース名 = [[京成杯]]
|格 = 
|1着賞金 = 
|芝ダ障 = 芝
|距離m = 1600
|馬場状態 = 良
|重量方式 = 別定
|頭数 = 7
|馬番 = 1
|騎手 = [[大崎昭一]]
|斤量 = 52kg
|人気順 = 5
|単勝 = 
|着順 = 4着
|1着馬 = [[ヒデハヤテ]]
|1着斤量 = 57
|勝時計 = 1.35.8
|2着馬 = [[ランドプリンス]]
|2着斤量 = 56
|2着差 = 1 3/4
|3着馬 = [[カネアキバ]]
|3着斤量 = 55
|3着差 = 1 3/4
|4着馬 = [[タカイホーマ]]
|4着斤量 = 52
|4着差 = 1 3/4
|5着馬 = [[インターブレイン]]
|5着斤量 = 54
|5着差 = クビ
|備考 = 
}}
{{Template:結果5
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|西暦 = 
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|日 = {{0}}2
|競馬場 = [[中山競馬場|中山]]
|レース名 = [[クイーンカップ]]
|格 = 
|1着賞金 = 
|芝ダ障 = 芝
|距離m = 1600
|馬場状態 = 良
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|騎手 = [[大崎昭一]]
|斤量 = 52kg
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|単勝 = 
|着順 = '''1着'''
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|1着斤量 = 52
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}}
{{Template:結果5
|和暦 = 
|西暦 = 
|月 = {{0}}5
|日 = 21
|競馬場 = [[中山競馬場|中山]]
|レース名 = [[カーネーションカップ]]
|格 = 
|1着賞金 = 
|芝ダ障 = 芝
|距離m = 1600
|馬場状態 = 良
|重量方式 = 
|頭数 = 9
|馬番 = 1
|騎手 = [[大崎昭一]]
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|3着斤量 = 
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|5着斤量 = 
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|備考 = 
}}

==脚注==
===注釈===
<references group="注"/>

==関連項目==
*[[花の47年組]]
*{{AH}}[http://ahonoora.com/takai_homa.html タカイホーマ]

==カテゴリー==
{{DEFAULTSORT:タカイホーマ}}
[[Category:日本の競走馬]]
[[Category:1969年生|日]]