ロベール1世整理後の加筆版のソースを表示

==冒頭文==
'''ノルマンディー公ロベール1世'''（{{llang|言語記事名=フランス語|fr|'''Robert I<small><sup>er</sup></small> de Normandie'''}}、[[1000年]]ないし[[1010年]]頃 - [[1035年]]7月<ref group="注">誕生年は、1000年頃、1010年頃など。死没年月日についでは、1035年7月1日、または7月2日、または7月3日など。</ref>）は、6代目の[[ノルマンディー公]]である。在位期間は1027年から1035年。

ロベール1世はノルマンディー公[[リシャール2世 (ノルマンディー公)|リシャール2世]]の息子で、兄のリシャール3世は父リシャール2世の死後、後継者としてノルマンディー公となった。それから1年も経たないうちに、ロベール1世は兄に叛旗を翻して地位を奪い取った。ロベール1世のあとは、庶子の[[ウィリアム1世 (イングランド王)|ギヨーム2世]]がノルマンディー公となり、1066年に[[イングランド]]を征服（[[ノルマン・コンクエスト]]）、[[ウィリアム1世 (イングランド王)|ウィリアム1世]]として戴冠、[[ノルマン朝]]をひらいた。

===呼称===
ロベール1世にはいくつか渾名がある。「{{llang|言語記事名=フランス語|fr|'''Robert''' '''''le Libéral'''''}}」（自由公ロベール）、「{{llang|言語記事名=フランス語|fr|'''Robert''' '''''le Magnifique'''''}}」（英語では「{{llang|言語記事名=英語|en|'''Robert''' '''''the Magnificent'''''}}」、日本語では「華麗公」ロベールなど。）など。

これとは別に、よく知られている異称として「{{llang|言語記事名=フランス語|fr|'''Robert''' '''''le Diable.'''''}}」（英語では「{{llang|言語記事名=英語|en|'''Robert''' ''''' the Devil'''''}}」、日本語では「魔公」「悪魔公」）という渾名がある。だが、実際にはロベール1世の時代にはこの渾名は見られない。

中世のヨーロッパには『[[悪魔ロバート]]』という怪奇譚・民間伝承があり、「Robert le Diable（悪魔公ロベール）」という呼称はこの伝承からの混同である、との指摘もある。なお、古典的な伝承である『[[悪魔ロバート]]』を下敷きにした『{{仮リンク|悪魔のロベール|en|Robert le diable}}』（1831年）というオペラ作品があり、現代の歴史家は、これらの民間伝承やオペラ作品の混同から、ロベール1世が「悪魔公」と呼ばれていたという通説が生じたのだろうと推測している<ref>François Neveux, ''A Brief History of the Normans'', trans. Howard Curtis (Constable & Robinson, Ltd. London, 2008), p. 97 & n. 5.</ref>。

[[ノルマンディー公]]としては、ふつう、本項の人物を「ロベール1世」とする。しかし初代ノルマンディー公の[[ロロ]]が「ロベール」に改名していることから、ロロを「初代ロベール」とし、本項の人物を「ロベール2世」とする場合もある。

==テンプレート部==
{{基礎情報 君主
|人名       =ロベール1世
|各国語表記 ={{llang|fr|Robert I<small><sup>er</sup></small> de Normandie}}<br>{{llang|en|Robert I of Normandy}}
|君主号     =[[ノルマンディー公]]
|画像       =Robert Normandy.png
|画像サイズ =
|画像説明   =13世紀の書物『''[[:en:Grandes Chroniques de France|Grandes Chroniques de France]]''』に描かれたロベール1世
|在位       =[[1027年]] - [[1035年]]
|戴冠日     =
|別号       =
|全名       =
|出生日     =1010年頃
|生地       =[[ノルマンディー]]
|死亡日     =1035年7月
|没地       =[[ニケーア]]
|埋葬日     =
|埋葬地     =
|継承者     =
|継承形式   =
|配偶者1    =
|子女       =[[ウィリアム1世 (イングランド王)|ギヨーム2世]]（[[イングランド王]]ウィリアム1世）<br>{{仮リンク|アデライード・ド・ノルマンディー (1026-1090)|fr|Adélaïde de Normandie (1026-1090)|label=アデライード}}
|王家       =[[ノルマンディー家]]
|王朝       =
|王室歌     =
|父親       =[[リシャール2世 (ノルマンディー公)|リシャール2世]]
|母親       ={{仮リンク|ユーディト・ド・ブルターニュ|fr|Judith de Bretagne}}
|宗教       =
|サイン     =
}}

==概要==
===血筋===
{{家柄3代
| bgcolor = Gainsboro
| bgcolor2 = WhiteSmoke
| name = ロベール1世
| 生 = 1010?
| 没 = 1035
| 号1 = [[ノルマンディー公]] ( 1027 - 1035 )
| 号2 = 
| 号3 = 
| f名 = [[リシャール2世 (ノルマンディー公)|リシャール2世]]
| f号 = [[ノルマンディー公]] ( 996 - 1026 )
| f生年 = 963
| f没年 = 1026
| f家 = [[ノルマンディー家]]
| m名 = {{仮リンク|ユーディト・ド・ブルターニュ|fr|Judith de Bretagne|label=ユーディト}}
| m号 = [[ブルターニュ公]][[ジョフロワ1世 (ブルターニュ公)|ジョフロワ1世]]の姉<ref group="†">リシャール2世とユーディトが結婚した1000年の時点では、ユーディトの父でブルターニュ公だったコナン1世は既に没しており、ユーディトの実弟ジョフロワ1世（[[:fr:Geoffroi Ier de Bretagne]]）がブルターニュ公を継いでいた。</ref>
| m生年 = 982
| m没年 = 1017
| m家 = 
| ff名 = [[リシャール1世 (ノルマンディー公)|リシャール1世]]
| ff号 = [[ノルマンディー公]] ( 942 - 996 )
| ff生年 = 933
| ff没年 = 996
| fm名 = {{仮リンク|グンノーラ|en|Gunnora}}
| fm号 = 
| fm生年 = 936頃?
| fm没年 = 1031
| mf名 = {{仮リンク|コナン1世 (ブルターニュ公)|fr|Judith de Bretagne|label=コナン1世}}
| mf号 = [[ブルターニュ公]]( 990 - 992 )
| mf生年 = ?
| mf没年 = 992
| mm名 = [[:en:Ermengarde-Gerberga of Anjou|Ermengarde-Gerberga ]]
| mm号 = 
| mm生年 = 
| mm没年 = 
| fff名 = [[ギヨーム1世 (ノルマンディー公)|ギヨーム1世]]
| fff号 = [[ノルマンディー公]] ( 925? - 942 )
| fff生年 = ?
| fff没年 = 942
| ffm名 = {{仮リンク|スプロタ|en|Sprota}}
| ffm号 = 
| ffm生年 = 911?
| ffm没年 = 940?
| fmf名 = 不詳
| fmf号 = 
| fmf生年 = 
| fmf没年 = 
| fmm名 = 不詳
| fmm号 = 
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| fmm没年 = 
| mff名 = [[:fr:Juhel Bérenger de Rennes|Juhel Bérenger]]
| mff号 = {{仮リンク|レンヌ伯|en|Count of Rennes}}
| mff生年 = ?
| mff没年 = ?
| mfm名 = 不詳
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| mfm没年 = 
| mmf名 = [[ジョフロワ1世 (アンジュー伯)|ジョフロワ1世]]
| mmf号 = [[アンジュー伯]] ( 960 - 987 )
| mmf生年 = 938?
| mmf没年 = 987
| mmm名 = [[:en:Adele of Meaux|アデル・ド・モー]]
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| mmm生年 = 934?
| mmm没年 = 982?
| bros = 兄：[[リシャール3世 (ノルマンディー公)|リシャール3世]] ( [[ノルマンディー公]] ( 1026 - 1027 ) )
| rels = 
| comment = 
| CoA = 
| CoAsize = 
}}

ロベール1世の父は[[ノルマンディー公]][[リシャール2世 (ノルマンディー公)|リシャール2世]]（?年 - 1026年）、祖父はノルマンディー公[[リシャール1世 (ノルマンディー公)|リシャール1世]]（932年 - 996年）、曽祖父はノルマンディー公[[ギヨーム1世 (ノルマンディー公)|ギヨーム1世]]（893?年 - 942年）である。[[高祖父]]（曽祖父の父）は[[ノルマンディー公国]]を建国した[[ヴァイキング]]の[[ロロ]]（846?年 - 930年）。この一族を[[ノルマンディー家]]と呼ぶ。

母は{{仮リンク|ユーディト・ド・ブルターニュ|fr|Judith de Bretagne|label=ユーディト}}（982年 - 1017年）といい、[[ブルターニュ]]公[[コナン1世 (ブルターニュ公)|コナン1世]]の娘であった。ただしユーディトがロベル1世に嫁いだときには既にコナン1世は没しており、ユーディトの弟[[ジョフロワ1世 (ブルターニュ公)|ジョフロワ1世]]がブルターニュ公の地位にあった。

==生涯==
父リシャール2世は生前、長男の[[リシャール3世 (ノルマンディー公)|リシャール3世]]を後継者と定め、次男のロベール1世には{{仮リンク|イエモワ伯|fr|Comté d'Hiémois}}の地位を与えた<ref>''The Gesta Normannorum Ducum of William of Jumieges, Orderic Vitalis, and Robert of Torigni'', Vol. II, Books V-VIII, ed. Elisabeth M.C. Van Houts (Clarendon Press, Oxford, 1995), pp. 40–1</ref>。

1026年8月、父リシャール2世が没すると、兄リシャール3世がノルマンディー公位を継いだ。ロベール1世はすぐに兄に対して反乱を起こした。しかしこれはあっという間に鎮圧され、ロベールは兄に対して服従を誓約させられた。<ref>David Crouch, ''The Normans, The History of a Dynasty'' (Hambledon Continuum, London, New York, 2002), p. 46</ref>

===統治初期===
[[ファイル:Keizu1.jpg|thumb|300px|ロベール1世とユーグ3世の血縁関係]]

翌年、リシャール3世が死んだ。ロベール1世が兄の死に関わっているとの疑いがもちあがったが、証拠は何もなく、ロベール1世が公位を得ることになった。<ref name="WC32">David C. Douglas, ''William the Conqueror'' (University of California Press, Berkeley and Los Angeles, 1964), p. 32</ref>

しかし、ロベール1世が兄リシャール3世に対して起こした反乱の余波で、公国内は不安定になっていた。<ref name="WC32" />

近傍の下級貴族たちのあいだでは私闘が勃発し、その帰結としてロベール1世の時代にはノルマンディー地方で地方領主の交代が起きた。<ref name="WC32" />

また、小貴族のなかからはノルマンディーを離れるものが多く出た。彼らは新たな土地をもとめて南イタリアなど各地へ移っていった。<ref name="WC32" />

公国内が一段落すると、ロベール1世は叔父の{{仮リンク|ロベール2世 (ルーアン大司教)|en|Robert II (archbishop of Rouen)|label=ルーアン大司教ロベール2世}}<ref group="注">{{仮リンク|ロベール2世 (ルーアン大司教)|en|Robert II (archbishop of Rouen)|label=ロベール2世}}は、[[ルーアン]]の[[大司教]]（[[:fr:Archidiocèse de Rouen]]、[[:en:Roman Catholic Archdiocese of Rouen]]参照）であると同時に、[[エヴルー]]の長（エヴルー伯、[[:fr:Comté d'Évreux]]・[[:en:Count of Évreux]]参照）でもあった。</ref>（父リシャール2世の実弟）に対して軍勢を送った。これはおそらく、ルーアン大司教ロベール2世が、兄リシャール3世に味方していたことに対する報復だった。ロベール1世はルーアン大司教をノルマンディーから追放してこの戦いを手仕舞いとした。ところが教会はノルマンディー全域を破門すると言い出したため、ロベール1世は叔父を呼び戻し、ルーアン大司教とエヴルー伯に復位させた<ref>David Crouch, ''The Normans, The History of a Dynasty'' (Hambledon Continuum, London, New York, 2002), p. 48</ref> 。

ロベール1世は、[[バイユー]]の司教<ref group="注">{{仮リンク|バイユー司教|fr|Évêque de Bayeux}}、[[:en:Roman Catholic Diocese of Bayeux]]参照</ref>で、ノルマンディー公家の親類でもある{{仮リンク|ユーグ3世 (バイユー司教)|fr|Hugues d'Ivry|label=ユーグ3世}}に対しても攻撃を加えた<ref group="注">ユーグ3世の祖母スプロタは、ロベール1世の父リシャール2世からみても祖母であり、ロベール1世からみると曾祖母であった。ロベール1世からみるとユーグ3世は[[従叔父]]（いとこおじ）の関係となる。</ref>。これによりユーグ3世もノルマンディーから追い出された<ref>François Neveux. ''A Brief History of The Normans'' (Constable & Robbinson, Ltd, London, 2008), p. 100</ref>。さらにロベール1世は[[フェカン]]の修道院（[[:en:Fécamp Abbey|Fécamp Abbey]]）の資産を数多く没収した<ref>David Crouch, ''The Normans, The History of a Dynasty'' (Hambledon Continuum, London, New York, 2002), p. 49</ref>。

===領外への干渉===
自分の公領内では問題を抱えていたが、ロベール1世は近接する[[フランドル]]地方で起きた[[フランドル伯]][[ボードゥアン4世 (フランドル伯)|ボードゥアン4世]]・[[ボードゥアン5世 (フランドル伯)|ボードゥアン5世]]父子の争いに介入した。この争いは、父のボードゥアン4世が息子を領地から追い出したことで始まったものだった.<ref name="DC4950">David Crouch, ''The Normans, The History of a Dynasty'' (Hambledon Continuum, London, New York, 2002), pp. 49–50</ref>。

息子のボードゥアン5世は、義理の父である[[フランス王国|フランス王]][[ロベール2世 (フランス王)|ロベール2世]]を後ろ盾としていた。しかしノルマンディー公ロベール1世が父のボードゥアン4世の側に付いて援軍を約束したことで、1030年に、ボードゥアン5世は父ボードゥアン4世と講和することを余儀なくされた<ref name="DC4950" />。

1031年にフランス王ロベール2世が死去すると、息子の[[アンリ1世 (フランス王)|アンリ1世]]がフランス王に即位した。ところがアンリ1世の弟[[ロベール1世 (ブルゴーニュ公)|ロベール]]が、王位を狙って反乱を起こした。先王ロベール2世の王妃で兄弟の母である[[コンスタンス・ダルル|コンスタンス]]はロベールの方を支援した。このとき、ノルマンディー公ロベール1世はフランス王ロベール2世の支持にまわった<ref name="NIE185">Elisabeth M C Van Houts, ''The Normans in Europe'' (Manchester University Press, Manchester and New York, 2000), p. 185</ref>。この功によりロベール1世は[[ヴェクサン]]地方を与えられた<ref name="NIE185" />。

1030年代の前半、ロベール1世の従兄弟で、[[ブルターニュ公国|ブルターニュ公領]]を治める{{仮リンク|アラン3世 (ブルターニュ公)|en|Alan III, Duke of Brittany|label=ブルターニュ公アラン3世}}が、ブルターニュとノルマンディーの国境にちかい[[レンヌ]]や[[モン・サン＝ミシェル]]周辺の支配権を狙って動き出した<ref name="DC50">David Crouch, ''The Normans'', The History of a Dynasty (Hambledon Continuum, London, New York, 2002), p. 50</ref> 。アラン3世が[[ル＝ド＝ブルターニュ|ドルの町]]を攻略し、さらに[[アヴランシュ]]も狙ったことで、ロベール1世はアラン3世討伐のため大軍勢を率いて出立した<ref name="DC50" />。

このときになってアラン3世は、両者にとって伯叔父にあたるルーアン大司教ロベール2世に助けをもとめた。ルーアン大司教は仲裁にはいり、これを収めた<ref name="DC50" />。

ロベール1世の叔母、[[エマ・オブ・ノーマンディー|エンマ]]はイギリスの[[ウェセックス家]]に嫁ぎ、イングランドの王[[エゼルレッド2世 (イングランド王)|エゼルレッド2世]]と[[クヌート1世 (イングランド王)|クヌート1世]]の2王の妻となっていた。そのうちエゼルレッド2世を父とする子が[[エドワード懺悔王|エドワード]]と{{仮リンク|アルフレッド・アシリング|en|Alfred Aetheling|label=アルフレッド}}である。ロベール1世からみて従兄弟にあたるこの2人の王子は継父クヌート1世を憚りノルマンディーに亡命中だった。あるとき、ロベール1世は彼らを奉じてイングランドへ攻め込もうとしたが、未遂におわった。伝承によれば途中で海が時化て船の多くが沈んでしまったのだという<ref>Christopher Harper-Bill; Elisabeth Van Houts, ''A Companion to the Anglo-Norman World'' (Boydell Press, Woodbridge, UK, 2003), p. 31</ref>。このときロベール1世自身は難を逃れて[[ガーンジー]]諸島に入港したという。

『''Gesta Normannorum Ducum''』{{仮リンク|ほにゃらら|en|Gesta Normannorum Ducum}}に拠れば、[[クヌート1世 (イングランド王)|クヌート1世]]はノルマンディー公ロベール1世に使者を遣わし、エドワードとアルフレッド兄弟のためにイングランド王国の半分を譲るということでどうだ、と伝えてきたという。ロベール1世は海を越えての遠征をいったん取りやめ、クヌート1世の申出を受けるかどうかは、[[エルサレム]]巡礼のあとに決めることにした<ref>''The Gesta Normannorum Ducum of William of Jumièges, Orderic Vitalis, and Robert of Torigni'', Ed. & Trans. Elizabeth M.C. Van Houts, Vol. I (Clarendon Press, Oxford, 1992), pp. 78–80</ref>。

===信仰への態度の変化===
ノルマンディ公ロベール1世の教会に対する態度は、叔父のロベール2世がルーアン大司教に復帰したことで目に見えて大きく変わった<ref name="FN102">François Neveux. ''A Brief History of The Normans'' (Constable & Robbinson, Ltd, London, 2008), p. 102</ref>。ロベール1世は騒乱によって教会が失った資産をもとに戻し、関係修復を図った。1034年までに、ロベール1世はかつて自らが[[フェカン]]の修道院から強奪したものをすべて返還した<ref>François Neveux. ''A Brief History of The Normans'' (Constable & Robbinson, Ltd, London, 2008), p. 103</ref>。

非嫡出子の[[ウィリアム1世 (イングランド王)|ギヨーム]]（のちにイギリスへ渡り[[ウィリアム1世 (イングランド王)|征服王ウィリアム1世]]となる）を跡継ぎに定めると、ロベール1世は[[エルサレム]]への巡礼に出た<ref name="GND80-5">''The Gesta Normannorum Ducum of William of Jumièges, Orderic Vitalis, and Robert of Torigni'', Ed. & Trans. Elizabeth M.C. Van Houts, Vol. I (Clarendon Press, Oxford, 1992), pp. 80-5</ref>。

『Gesta Normannorum Ducum（歴代ノルマンディー公記）』の伝うるところによると、ロベール1世は[[コンスタンチノープル]]経由でエルサレムにはいり、その後重篤な病にかかり<ref group="注">『Gesta Normannorum Ducum（歴代ノルマンディー公記）』の著者[[マームズベリのウィリアム]]（1095?年-1143年）や『[[ルー物語]]』の著者[[ウァース]]（1115?年-1183?年）の記述に拠れば、ロベール1世は毒を盛られたのだという。マームズベリのウィリアムは、ラルフ・モーウィン（Ralplh Mowin）なる人物がこれを企てたのだという。</ref>、1035年7月2日に[[ニケーア]]で死んだという<ref name="GND80-5" />。当時まだ8歳になるかどうかだった息子のギヨームがノルマンディー公位を継いだ（[[ウィリアム1世 (イングランド王)|ギヨーム2世]]）<ref>François Neveux, ''A Brief History of the Normans'', trans. Howard Curtis (Constable & Robinson, Ltd. London, 2008), p. 110</ref>。

歴史家[[マームズベリのウィリアム]]（1095?年-1143年）によると、それから数十年後、息子のギヨーム2世は、父ロベール1世を弔うために亡骸を引き取ろうと、コンスタンチノープルとニケーアに使節を送ったという<ref name="WMAn38">William M. Aird, ''Robert Curthose, Duke of Normandy: C. 1050–1134'' (Boydell Press, Woodbridge, UK, 2008), p. 159 n. 38</ref>。ところが、その交渉が成立して使節がノルマンディーに帰還する途上、イタリアの[[プッリャ州|プッリャ]]まで来たところで、本国からギヨーム2世が亡くなったという報せが届いた<ref name="WMAn38" />。そこで、使節団はロベール1世の遺体をイタリアに埋葬することにしたという<ref name="WMAn38" />。

==子女==
[[ファレーズ (カルヴァドス県)|ファレーズ]]の[[アルレット・ド・ファレーズ|エルエーヴ]],<ref>''The Gesta Normannorum Ducum of William of Jumièges, Orderic Vitalis, and Robert of Torigni'', Ed. & Trans. Elizabeth M.C. Van Houts, Vol. I (Clarendon Press, Oxford, 1992), p. lxxv</ref>（名前については「アルレット」とする説もある）との間に男子1人を設けた。ロベール1世はエルエーヴとは結婚していなかった（お互いに独身だった）ために庶子とされている。
*[[ウィリアム1世 (イングランド王)|ギヨーム]]（1028年頃 - 1087年）
:[[ウィリアム1世 (イングランド王)|ギヨーム2世]]としてノルマンディー公を継ぐ（在位：1035年 - 1087年）。1066年に[[イングランド]]を征服（[[ノルマン・コンクエスト]]）、イングランド王[[ウィリアム1世 (イングランド王)|ウィリアム1世]]（在位：1066年 - 1087年）となり、現代のイギリス王室の祖となる<ref>David C. Douglas, ''William the Conqueror'' (University of California Press, Berkeley and Los Angeles, 1964), p. 15, passim</ref>。

ほかに娘が1人いるが、母親がエルエーヴなのか、それとも別の女性であるかははっきりしない{{refnest|group="注"|アデライードの母親が誰であるかは謎である。Elisabeth Van Houtsの著書によると、『歴代ノルマンディー公記』にはギヨーム2世の「妹」についての言及が3回あり、アデライードのことを「同腹の姉妹（''soror uterina''、直訳は「子宮の姉妹）」として述べているという。そして『歴代ノルマンディー公記』の中ではロベール1世の父[[リシャール2世 (ノルマンディー公)|リシャール2世]]とその異母弟{{仮リンク|ギヨーム (ウー伯)|fr|Guillaume d'Eu|label=ウー伯ギヨーム}}を同じ表現を用いて「同腹の弟」と表現している。このことから、Elisabeth Van Houtsは、「''soror uterina''」は母親を同じくする者を意味するわけではなく、アデライードの母はエルエーヴではなくて別の女性だった、と導いている。

Kathleen Thompsonは、『歴代ノルマンディー公記』は、ギヨームとアデライードは父も母も共通だと述べていると解釈すべきだとしたうえで、それにしても『歴代ノルマンディー公記』の当該部はアデライードが生まれてから100年以上も後の時代に書かれたものであり、当てにならないとして、結局はアデライードの母は謎のままだとしている。}}

*{{仮リンク|アデライード・ド・ノルマンディー (1026-1090)|fr|Adélaïde de Normandie (1026-1090)|label=アデライード}}（英語読みではアデル）
:アデライードは3回結婚している。初めは{{仮リンク|アンゲラン2世 (ポンティユー伯)|fr|Enguerrand II, Count of Ponthieu|label=ポンティユー伯アンゲラン2世}}<ref>George Edward Cokayne, ''The Complete Peerage of England Scotland Ireland Great Britain and the United Kingdom, Extant Extinct or Dormant'', Vol. I, ed. Vicary Gibbs (The St. Catherine Press, Ltd., London, 1910), p. 351</ref>、2回目は{{仮リンク|ランベール2世 (ランス伯)|fr|Lambert II de Lens|label=ランス伯ランベール2世}}、3回目は{{仮リンク|ウード2世 (シャンパーニュ伯)|fr|Lambert II de Lens|label=シャンパーニュ伯ウード2世}}である<ref>David C. Douglas, ''William the Conqueror'' (University of California Press, Berkeley and Los Angeles, 1964), p. 380</ref>。

==脚注==
===注釈===
<references group="注"/>
===出典===
{{Reflist|colwidth=30em
|refs=
<!-- -->
*<ref name="1964WtC-15">『''William the Conqueror: The Norman Impact Upon England''』,p15</ref>


*<ref name="">[ ]年月日閲覧。</ref>
}}
===書誌情報===
*『''William the Conqueror: The Norman Impact Upon England''』,[[:en:David C. Douglas|David Charles Douglas]],[[:en:University of California Press|University of California Press]],1964,ISBN 0-520-00350-0

*『''William the Conqueror''』,[[:en:David Bates (historian)|David Bates]],George Philip Ltd,London,1989,ISBN 0-540-01175-4

*『Guillaume le Conquérant en 58 étapes／William the Conqueror in 58 stages』,OREP editions,Cully,2007,ISBN 2-912925-82-7

*『''The Normans : The Histry of a dynasty''』,[[:en:David Crouch (historian)|David Crouch]],[[:en:Hambledon and London|Hambledon and London]],2002,ISBN 1-85285-387-5

==関連図書==
==外部リンク==
==関連項目==

{{ノルマンディー公|1028年 - 1035年}}

{{DEFAULTSORT:ろへる1}}
[[Category:ノルマンディー公]]
[[Category:ノルマンディー家]]
[[Category:1035年没]]
{{history-stub}}