Cremorneのソースを表示

{{Parmesan}}
__NOTOC__
{| style="width:840px;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Cremorne.png|830px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
| ジョン・フレデリック・ヘリングJrによる『クレモルヌとメイドメント騎手』
|}
{{見出A|大食らいで怠け者の最強馬。}}
　'''クレモルヌ''' (Cremorne)は19世紀後半のイギリスの最強馬の1頭である。

　1872年の[[ダービー|英国ダービー]]馬であるほか、[[パリ大賞]]と[[アスコット金杯]]に勝った。[[ハイフライヤー]]系の[[パルメザン]]の産駒。

==血統==
{{五代血統表α
|name =Cremorne
|和=クレモルヌ
|主 = [[Henry Savile|ヘンリー・ラムリー＝サビル]]大尉 (Capt.Henry Savile)
|種 = サラブレッド
|年 = 1869
|性 = 牡馬
|毛 = 鹿毛
|誕 = 1869
|死 = 1883
|国 = イギリス{{F-GB}}
|県 = 
|牧 = Rufford Abbey Stud
|者 = [[Henry Savile|ヘンリー・ラムリー＝サビル]]大尉
|調 = [[William Gilbert]]
|厩 = 
|厩地 = 
|f = [[Parmesan]]
|f毛=黒鹿毛
|f年=1857
|m = Rigolboche
|m毛=栗毛
|m年=1861
|ff = [[Sweetmeat]]
|ff毛=黒鹿毛
|ff年=1842
|fm = Gruyere
|fm毛=鹿毛
|fm年=1851
|mf = [[Rataplan]]
|mf毛=栗毛
|mf年=1850
|mm = [[Gardham mare]]
|mm毛=
|mm年=1845
|fff = [[Gladiator]]
|ffm = Lollypop
|fmf = [[Verulam]]
|fmm = Jennala
|mff = [[The Baron]]
|mfm = Pochahontas
|mmf = [[Gardham]]
|mmm = [[Langar mare 1837|Langar mare]]
|ffff = [[Partisan]]
|fffm = Pauline
|ffmf = [[Voltaire]]
|ffmm = Belinda
|fmff = [[Lottery]]
|fmfm = Wire
|fmmf = [[Touchstone]]
|fmmm = Emma
|mfff = [[Birdcatcher]]
|mffm = Echidna
|mfmf = [[Glencoe]]
|mfmm = Marpessa
|mmff = [[Falcon]]
|mmfm = Muta
|mmmf = [[Langar]]
|mmmm = Clinker mare

|fffff = [[Walton]]
|ffffm = Parasol
|fffmf = [[Moses]]
|fffmm = Quadrille
|ffmff = {{×g4|[[Blacklock]]}}
|ffmfm = Phantom mare
|ffmmf = {{×g4|[[Blacklock]]}}
|ffmmm = Wagtail
|fmfff = {{×b3|[[Tramp]]}}
|fmffm = {{×p4|[[Mandane]]}}
|fmfmf = [[Waxy]]
|fmfmm = Penelope
|fmmff = [[Camel]]
|fmmfm = Banter
|fmmmf = [[Whisker]]
|fmmmm = Gibside Fairy
|mffff = [[Sir Hercules]]
|mfffm = Guiccioli
|mffmf = [[Economist]]
|mffmm = Miss Pratt
|mfmff = [[Sultan]]
|mfmfm = Trampoline
|mfmmf = [[Muley]]
|mfmmm = Clare
|mmfff = [[Interpreter]]
|mmffm = Miss Newton
|mmfmf = {{×b3|[[Tramp]]}}
|mmfmm = {{×p4|[[Mandane]]}}
|mmmff = [[Selim]]
|mmmfm = Walton mare
|mmmmf = [[Clinker]]
|mmmmm = Bronze
|FN = 2-n
|母系 = 
|初出 = 2
|終出 = 4
|戦 = 26
|勝 = 19
|勝備考 = 
|タイトル = 
|鞍 = '''[[ダービー]]'''(1872)、'''[[パリ大賞]]'''(1872)、'''[[アスコット金杯]]'''(1873)、[[アレクサンドラP]](1873)、[[ハーストバーンS]](1871)、[[チェスターフィールドS]](1871)、[[シャンペンS]](1871)、[[グレートヨークシャーS]](1872)、[[ウッドコートS]](1871)、[[ニューマーケットダービー]](1872)
|金 = 
|CS = 
|CJS = 
|CBMS = 
|駒 = [[Thurio]]（[[パリ大賞]]）、[[Kermesse]]（2歳牝馬チャンピオン）、[[Voluptuary]]（[[グランドナショナル]]）
}}
===スカボロー＝サビル家に伝わる2号族===
{| style="float:right;background-color: rgba(255,255,255,0.33);width:440px;"
|- 
|<small>
【アレクサンダーの牝駒(1790)の子孫】
:Highflyer mare 1780
:｜[[Alexander mare]] 1790　-　2-nの祖
:｜｜[[Castrel]] 1801　種牡馬
:｜｜[[Selim]] 1802　種牡馬
:｜｜[[Bronze]] 1803　[[オークス]]
:｜｜｜Busto 1812　ダービー3着
:｜｜｜Clinker mare 1816
:｜｜｜｜[[Langar mare 1837|Langar mare]] 1837
:｜｜｜｜｜[[Gardham mare]] 1845
:｜｜｜｜｜｜[[Skirmisher]] 1854　[[アスコット金杯]]
:｜｜｜｜｜｜[[The Ranger]] 1860　[[パリ大賞]]
:｜｜｜｜｜｜Rigolboche 1861
:｜｜｜｜｜｜｜[[Mabille]] 1868　-　2-oの祖
:｜｜｜｜｜｜｜'''Cremorne''' 1869　[[ダービー]]、[[パリ大賞]]、[[アスコット金杯]]
:｜｜｜[[Miss Chantrey]] 1818　-　2-pの祖
:｜｜[[Rubens]] 1805　種牡馬
:｜｜[[Orville mare]] 1809　-　2-sの祖
:｜｜[[Election mare]] 1814　-　2-rの祖
</small>
|-
|}
　クレモルヌから母系を3代遡った「ランガルの牝駒（[[Langar mare 1837|Langar mare]]）」は、ヘロド系の極めて強い近親交配が行われている。祖父の[[セリム]]([[Selim]])と祖母のブロンズ([[Bronze]])が全兄妹なうえに、母の父クリンカー([[Clinker]])も父ランガル([[Langar]])の母の父ウォルトン([[Walton]])もみんな[[サーピーターティーズル]]([[Sir Peter Teazle]])産駒だ。

　そこへマッチエム系のなかでもマイナーな系統、[[ソーサラー]]([[Sorcerer]])の末裔であるガーダム([[Gardham]])が交配されている。この祖母「ガーダムの牝駒([[Gardham mare]])」も名無し馬で、毛色すら記録に残されていない。しかしこの名無しの牝馬は強力なスタミナを伝える母馬となった。1854年に産んだスカーミッシャー([[Skirmisher]])は[[アスコット金杯]]に勝ち、1860年の産駒ザレンジャー([[The Ranger]])は第1回[[パリ大賞]]に勝った。

　スカーミッシャーとザレンジャーは全兄弟で、父馬が[[ヴォルティジュール]]([[Voltigeur]])だった。クレモルヌの母リゴルブシェ(Rigolboche)は父馬が[[ラタプラン]]([[Rataplan]])に変わっている。

　「リゴルブシェ」というのは当時パリで人気だった踊り子の名前（芸名）なんだそうで、あのフレンチカンカンの創始者の1人とされている。リゴルブシェは問題のある牝馬だったらしく、何度か出走したものの、勝ち鞍なく終わったようである。

　繁殖に上がったリゴルブシェはなかなか仔出しのよい馬だったが、なかでも1868年に産んだ牝馬メイビーユ([[Mabille]])と翌年の産駒クレモルヌ(Cremorne)の全姉弟はサラブレッド血統史に名を残すことになった。メイビーユは[[Eglentine]]や[[Re-Echo]]といった娘を通じてファミリーを発展させ、[[2号族]]「2-o」分枝の祖となったのである。この分枝の代表馬には、1000ギニーの優勝馬[[Briar-Root]]や大種牡馬[[ザテトラーク]]、アメリカの快速血統の祖[[ピーターパン]]などがいる。

===生産者のヘンリー・ラムレー＝サビル大尉はラフォード・アビーの所有者===
　ザレンジャー、リゴルブシェなどを生産したのは馬主でもあるヘンリー・サビル（Captain Henry Lumley-Savile）氏で、クレモルヌの父パルメザンの馬主でもある。サビル氏はスカボロー伯爵位とサビル准男爵位をもつ[[8代スカボロー伯爵]]の子だったが、母が正式な妻でなかったために爵位を継ぐことができなかった。そのため伯爵位は父の従兄弟が継いだのだが、伯爵家がサビル准男爵家から受け継いでいたノッティンガムシャーのラフォード・アビー([[:en:Rufford Abbey]])の所領と、サラブレッド資産を遺贈された。（残念ながら、父が死んだ年に生まれた牡馬は売られてしまい、それが1859年のダービー馬[[Musjid]]になった。）これらのサラブレッドを受け継いで、サビル氏は様々な活躍馬を出していくことになり、なかでもクレモルヌは父母ともサビル氏の自家生産馬で、サビル氏の最高傑作といえる戦績を残すことになる。

==競走成績==
===デビュー前===
　クレモルヌは明るい鹿毛をした大柄の馬で、成長すると15.3ハンドの大きさになった。その大きな体を支えていたのが、クレモルヌの代名詞とも言える旺盛な食欲で、それはもはや悪食・大食の域　―　最終的にはそのせいで生命を落とすことになる　―　に達していた。しかも生来の怠け者で、ちょっとでも餌が足りないと全く走らず、そのうえ歩き運動の途中でしょっちゅう居眠りをすることで有名だった。しかし駆けさせると大きな体を使って迫力のある走りを見せるのだった。

　1歳（1870年）の冬、厩舎ではクリスマスの数日前に1歳馬を集めて走らせる習わしがあり、クレモルヌはそこで同世代の馬たちを大きく引き離してみせた。このとき一緒に走ったのが牝馬のモデナ([[Modena]])とリリアン([[Lilian]])、そして牡馬ウーラン([[Uhlan]])である。モデナはのちに[[スチュワードC]]を、リリアンは[[イボアH]]を、ウーランは[[ドンカスターS]]や[[アスコットS]]を勝つ。

　さらに調教では13歳の騙馬レインディア(Reindeer)を2馬身差で破った。このときリリアンはさらに20馬身も遅れていた。

===2歳時 1871年===
{| style="float:left;width:100px;margin-right:1em;background-color:rgba( 255, 255, 255, 0.25 )"
|[[ファイル:Charlse maidment2.jpg|180px|link=]]
|-style="font-size:0.8em;color:#2d3a49;"
|主戦のメイドメント騎手
|}
　クレモルヌは2歳時に11戦9勝の成績をあげ、[[ハーストバーンS]]や[[チェスターフィールドS]]などの当時の重要な2歳戦に勝っている。当時の新聞などでは、シーズン終盤まで2歳馬のトップクラスと評価されているが、シーズンの終わりにいくつか取りこぼしたせいで「完全なトップ」とは言えない成績に終わってしまった。しかし今となっては、むしろその負けたレースのほうでいろいろな逸話が残されている。

　クレモルヌは2000ギニーなどが行われる春のニューマーケットでデビューした。2戦目の[[ウッドコートS]]はダービー開催の[[エプソム競馬場]]で行われる2歳戦で、ランドマーク([[Landmark]])という馬を下している<ref group="注">ランドマークは、「16-c」分枝の祖となったリトルアグネス([[Little Agnes]])の半弟。また、2年下の半弟Couronne de Ferはダービー2着馬</ref>。ランドマークはこのシーズンの最後に[[ホープフルS(GB)|ホープフルS]]を勝つ馬である。

　ダービー開催のあとはロイヤルアスコット開催にまわり、[[アスコット競馬場]]で「バイエニアル」と「トライエニアル」を勝っている。「バイエニアル（意味は「2年続く」）」「トライアエニアル（意味は「3年続く」）」というのは第一次世界大戦前まであちこちで行われていたレースで、同じメンバーで2歳のときと3歳のときに争うのが「バイエニアル」、さらに4歳のときにも争うのが「トライエニアル」である。競馬場や年代によっても違いはあるが、たとえばアスコット競馬場の「トライエニアル」の場合、1年目の2歳戦は5ハロン、2年目の3歳戦は1マイル、3年目の4歳戦は2マイルというように距離が伸びてゆく。何年も前から対戦相手と競走条件が決まっているレースという意味ではクラシック登録と似たような意味合いがある。馬主にとっては、各馬の能力が未知数のうちに何年も先の登録料を納めるわけで、ギャンブル性が高いレースだっただろう。レースは「第19次トライエニアル競走の1年目(First Year of 19th Ascot Triennial Stakes)」というような名称になっている。「第19次」が世代を表しており、つまりこのロイヤルアスコット開催では「第17次トライエニアルの3年目（1867年生まれの世代）」と「第18次トライエニアルの2年目（1868年生まれの世代）」と「第19次トライエニアルの1年目（1869年生まれの世代）」のレースが行われることになる。クレモルヌの頃のアスコット競馬場では、「バイエニアル」「トライエニアル」のほか、さらに「ニュー・バイエニアル」というシリーズも行われており、このタイプのレースが人気があったのだろう。

　クレモルヌがロイヤルアスコット初日の「バイエニアル」を3馬身差で楽勝すると、2日目の「トライエニアル」には1頭しか相手が現れず、10馬身差で圧勝している<ref group="注">当時の記録では、このときのクレモルヌに20対1（21倍）という「大穴」相当の倍率がつけられていたことになっているが、おそらくこれは何かの間違いだろう。2対1（3倍）か1対20（1.05倍）ならまだ話はわかる。</ref>。

　アスコット開催が終わると、当時の一流馬は[[ストックブリッジ競馬場]]へ転戦する。ストックブリッジ競馬場は19世紀に人気があった競馬場で、19世紀の三冠馬やダービー馬がしばしばここでデビューしている。クレモルヌはその名物レースである[[ハーストバーンS]]に勝った。2着・3着とはアタマ差・クビ差の接戦だったが、2着馬ニューナム([[Nuneham]])とは3ポンドの斤量差があった。ハーストバーンSの賞金や1500ポンド（当時のダービーの約1/3
で、この年のクレモルヌが勝ったレースのなかでは一番賞金が高いレースである。

　その後、[[ニューマーケット競馬場]]の<ruby><rb>7月開催</rb><rt>ジュライフェスティバル</rt></ruby>で[[チェスターフィールドS]](賞金1000ポンド)も勝ち、6連勝で夏の[[ヨーク競馬場]]へ乗り込んだ。この頃には既に、クレモルヌはこの世代の2歳馬の一番手の評価ができつつあった。

　イングランド北部にあるヨーク競馬場につくと、8月23日の「北イングランド・バイエニアル」を勝って連勝を7に伸ばした。ただ、他馬より12ポンド（5.4kg）も重い斤量に苦しんだのか、2着の牝馬に短頭差まで迫られた。陣営はこの日、さらに王太子賞(Prince of Wales's Stakes)という小レース<ref group="注">「プリンスオブウェールズ」は「イギリス皇太子」であるが、このレースの名称は「Prince of Wales<u>'s</u> Stakes」であり、「皇太子が賞金を提供するレース」ぐらいの意味合いでしかない。賞金は200ポンドほどに過ぎず、1走目の「バイエニアル」より低い。この名前のレースは当時そこらじゅうの競馬場で行われている。もちろん、現在のG1「[[プリンスオブウェールズステークス]]」とはほぼ全く関連性がない。</ref>にも出走させた。午後だけで2走目になるわけだが、かつてのヒート戦時代には一日に何度も走るのは当たり前だったし、たったの4頭立てで、相手との斤量差もなくなるから楽勝だろうと踏んだのだろう。

　ところが、この2戦目の小レースで、クレモルヌはオンスロー(Onslow)という馬に1馬身半差及ばず、初敗北を喫してしまう。敗戦の理由がよくわからない陣営はクレモルヌを調べると、どうやら疝痛を起こしていることがわかった。これはかなり前から起きていたらしく、そのせいでフォームを崩していることがわかった。しかし、肝心の疝痛の理由はよくわからなかった。

　そのまま秋の[[ドンカスター競馬場]]へ移り、[[シャンペンS]]、さらに2日後のスイープ戦と勝ち、クレモルヌはこの年の2歳馬のトップとの評判を固めつつあった。しかし、理由はよくわからないが<ref group="注">もしかすると、負担重量が重くなりすぎるので敬遠したのかもしれない。当時のミドルパークプレートの規定では、賞金1000ポンド以上のレースの優勝馬は+7ポンド（3.17kg）の加増重量があり、出走馬の中で唯一9ストーン2ポンドを背負うことになる。他には1000ポンドレースの勝ち馬はおらず、これがデビュー戦のプリンスチャーリーなどは逆に-3ポンドのアローワンスを受けられるので、トータル10ポンド（約4.5kg）の重量差が生じる。</ref>、クレモルヌは当時のイギリスの最大の2歳戦、[[ミドルパークプレート]]に出なかった。このレースは「2歳馬ダービー」との別称があるような大レースで、賞金は約2500ポンドと、2歳戦の中では群を抜くレースだったのに。クレモルヌと2歳牝馬のなかでトップクラスの評価があったショペット(Chopette)が出なかったため、10月11日のミドルパークプレートは興ざめの感が漂った。

　ミドルパークプレートの本命に祭り上げられたのは初夏の[[ニューS]]（賞金810ポンド）（現在の[[ノーフォークS]]）の勝ち馬ヘルメット([[Helmet]])という牡馬である。ただしヘルメットは[[フィンドンS]]で着外に敗れており、そのときの2着馬リヴァプール(Liverpool)や3着馬ティンブレル(Timbrel)というのは、クレモルヌが既に負かしている馬である。2番人気のニューナムと3番人気のアルモナー(Almoner)もハーストバーンSで勝負付けが済んでいる馬だった。しかしこれらの人気馬は総崩れになった。勝ったのは、ミドルパークプレートがデビュー戦という[[プリンスチャーリー]]([[Prince Charlie]])である。プリンスチャーリーはダービー馬[[ブレアアソル]]産駒で、17ハンドもある大きな馬だった。接戦の2着にもラバーナム([[Laburnum]])という新興勢力が入り、これはどうもクレモルヌはたまたま弱い馬に勝ってきただけではないか、という疑いが急に持ち上がってきた。

　プリンスチャーリーと雌雄を決する機会は、最後の重要な2歳戦、[[クリテリオンS]]（賞金1080ポンド）で訪れた。陣営は大きな期待をかけていたが、クレモルヌはここであっさりと負けてしまった。2着どころか、ニューナムにも敗れてしまった。シーズン終盤での失点のせいでクレモルヌの評価は損なわれ、2歳王座はプリンスチャーリーのものになってしまった。

　それにしても、両馬とは13ポンド（5.89kg）の斤量差があったとはいえ、初対戦の快速プリンスチャーリーはともかく、既に一度負かしているニューナムにまで先着を許すというのは不可解で、陣営はふたたびクレモルヌをよくよく調べてみた。するとやっぱり疝痛を患っていることがわかってきた。どうやらふだんの餌だけでは足りずに、馬房の寝藁まで食べていて、それで疝痛を起こしていたのである。陣営は、それからはしっかりと給餌することにした。
====1871全出走履歴====

{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}5.{{0}}9
|競馬場 = [[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]
|開催 = SECOND SPRING
|曜日 = 火
|レース名 = 2歳戦<br>2YO Plate
|距離 = 5F<!--R.M.コース-->
|m = 1006
|賞金 = ￡200
|頭数 = 20
|オッズ = 7/4
|倍率 = 2.75
|人気順 =1
|ストーン = 8st10lbs
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = 2馬身
|2着馬 = Niochi
|2着斤量 = 119
|3着着差 = ?<!--a bad-->
|3着馬 = Capitulation
|3着斤量 = 122
|出典 =
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}5.23
|競馬場 = [[エプソム競馬場|エプソム]]
|開催 = SUMMER
|曜日 = 火
|レース名 = '''[[ウッドコートS]]'''<br>Woodcote Stakes
|距離 = a6F<!--New T.Y.C. コース-->
|m = 約1207
|賞金 = ￡555
|頭数 = 9
|オッズ = 11/8
|倍率 = 2.375
|人気順 =1
|ストーン = 8st10lbs
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = 1馬身
|2着馬 = [[Landmark]]
|2着斤量 = 122
|3着着差 = 半馬身
|3着馬 = Adieu
|3着斤量 = 122
|出典 =
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}6.{{0}}6
|競馬場 = [[アスコット競馬場|アスコット]]
|開催 = ROYAL ASCOT
|曜日 = 火
|レース名 = バイエニアルS(1年目)<br>1 of 14th Ascot Biennial Stakes
|距離 = 5F136yds<!--T.Y.C. コース-->
|m = 1130
|賞金 = ￡645
|頭数 = 8
|オッズ = 2/1
|倍率 = 3.0
|人気順 =1
|ストーン = 8st10lbs
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = 3馬身
|2着馬 = Bethnal Green
|2着斤量 = 122
|3着着差 = ?<!--a bad-->
|3着馬 = Liverpool
|3着斤量 = 122
|出典 =
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}6.{{0}}7
|競馬場 = [[アスコット競馬場|アスコット]]
|開催 = ROYAL ASCOT
|曜日 = 水
|レース名 = トライエニアルS(1年目)<br>1 of 19th Ascot Triennial Stakes
|距離 = 5F136yds<!--T.Y.C. コース-->
|m = 1130
|賞金 = ￡404
|頭数 = 2
|オッズ = 20/1
|倍率 = <ref group="注">当時の記録には間違いなく20to1（＝21.0倍）と書かれているのだが、2頭立てで、しかも3戦全勝の馬にこんな大穴の倍率がつけられるはずがないので、きっと何かの間違いだろう。1to20(＝1.05倍)ならば合点がいく。</ref>
|人気順 =1
|ストーン = 8st10lbs
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = 10馬身
|2着馬 = Peristera
|2着斤量 = 122
|3着着差 = 
|3着馬 = 
|3着斤量 = 
|出典 =
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}6.22
|競馬場 = [[ストックブリッジ競馬場|ストックブリッジ]]
|開催 =
|曜日 = 木
|レース名 = '''[[ハーストバーンS]]'''<br>Hurstbourne Stakes
|距離 = a5F<!--Bush in コース-->
|m = 約1005
|賞金 = ￡1500
|頭数 = 4
|オッズ = 7/4
|倍率 = 2.75
|人気順 =1
|ストーン = 8st10lbs
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = アタマ
|2着馬 = [[Nuneham]]
|2着斤量 = 119
|3着着差 = クビ
|3着馬 = Almoner
|3着斤量 = 122
|出典 =
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}7.{{0}}6
|競馬場 = [[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]
|開催 = JULY
|曜日 = 木
|レース名 = '''[[チェスターフィールドS]]'''<br>Chesterfield Stakes
|距離 = 3F217yds<!--last half of Ab.M-->
|m = 801
|賞金 = ￡1090
|頭数 = 8
|オッズ = 5/2
|倍率 = 3.5
|人気順 =1
|ストーン = 9st3lbs
|lbs = 129
|Kg = 58.51
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 129
|着差 = 1馬身
|2着馬 = Meteor<!--インタグリオーに出てくるMeteorじゃない-->
|2着斤量 = 122
|3着着差 = <!--a bad-->
|3着馬 = Peak
|3着斤量 = 122
|出典 =
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}8.23
|競馬場 = [[ヨーク競馬場|ヨーク]]
|開催 = AUGUST
|曜日 = 水
|レース名 = 北部バイエニアルS(1年目)<br>1 of 16th North of England Biennial Stakes
|距離 = a5F<!--T.Y.C-->
|m = 約1206
|賞金 = ￡340
|頭数 = 7
|オッズ = 100/30
|倍率 = 4.3
|人気順 =1
|ストーン = 9st3lbs
|lbs = 129
|Kg = 58.51
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 129<ref group="注">当時の資料には間違いなく「8ストーン3ポンド」と書かれているのだが、これは誤植だろう。8ストーン3ポンド（＝115ポンド＝52.16kg）だと、全出走馬で最軽量になってしまう。他馬は全て、牝馬でさえ8ストーン5ポンド、牡馬が8ストーン10ポンドで出走しており、クレモルヌが一番斤量が軽くなるはずがない。</ref>
|着差 = 短頭
|2着馬 = Indian Princess
|2着斤量 = 117
|3着着差 = <!--a bad-->
|3着馬 = Timbrel<ref group="注">実際には、このレースの時点では名無し馬。記録上は「B f by Scottish Chief - Gong」（父スコティッシュチーフ、母ゴングの鹿毛の牝馬）である。なお、母馬のGongはダービー馬[[Kettledrum]]の全妹。</ref>
|3着斤量 = 117
|出典 =
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}8.23
|競馬場 = [[ヨーク競馬場|ヨーク]]
|開催 = AUGUST
|曜日 = 水
|レース名 = プリンスオブウェールズS<br>Prince of Wales's Stakes
|距離 = a5F<!--T.Y.C-->
|m = 約1206
|賞金 = ￡215
|頭数 = 4
|オッズ = 5/8
|倍率 = 2.6
|人気順 =1
|ストーン = 9st3lbs
|lbs = 129
|Kg = 58.51
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = 2
|1着馬 = Onslow
|1着斤量 = 129
|着差 = 半馬身
|2着馬 = Cremorne
|2着斤量 = 129
|3着着差 = 4馬身
|3着馬 = Marquis of Montrose
|3着斤量 = 119
|出典 =
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}9.12
|競馬場 = [[ドンカスター競馬場|ドンカスター]]
|開催 = SEPTEMBER
|曜日 = 火
|レース名 = [[シャンペンS]]<br>Champagne Stakes
|距離 = 5F152yds
|m = 約1144
|賞金 = ￡975
|頭数 = 3
|オッズ = 100/30
|倍率 = 4.3
|人気順 =1
|ストーン = 8st10lbs
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = クビ差
|2着馬 = Bethnal Green
|2着斤量 = 122
|3着着差 = ?<!--a bad-->
|3着馬 = Stornoway
|3着斤量 = 122
|出典 =
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1871.{{0}}9.14
|競馬場 = [[ドンカスター競馬場|ドンカスター]]
|開催 = SEPTEMBER
|曜日 = 木
|レース名 = スイープ戦<br>Sweepstakes
|距離 = 6F
|m = 約1206
|賞金 = ￡470
|頭数 = 6
|オッズ = 5/2
|倍率 = 3.5
|人気順 =1
|ストーン = 9st3lbs
|lbs = 129
|Kg = 58.51
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 129
|着差 = 1馬身
|2着馬 = Xanthus
|2着斤量 = 122
|3着着差 = ?<!--a bad-->
|3着馬 = 名無し(Knowsleyの牡馬)
|3着斤量 = 122
|出典 =
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1871.10.23
|競馬場 = [[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]
|開催 = HOUGHTON
|曜日 = 月
|レース名 = [[クリテリオンS]]<br>Criterion Stakes
|距離 = 6F<!--Criterion Course-->
|m = 1206
|賞金 = ￡1080
|頭数 = 7
|オッズ = 5/4
|倍率 = 2.25
|人気順 = 1
|ストーン = 9st11lb
|lbs = 137
|Kg = 62.14
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = 3
|1着馬 = [[Prince Charlie]]
|1着斤量 = 124
|着差 = 1馬身
|2着馬 = [[Nuneham]]
|2着斤量 = 124
|3着着差 = 2馬身
|3着馬 = Cremorne
|3着斤量 = 137
|出典 =
}}

===3歳時 1872年===
　シーズンの最後にプリンスチャーリーらにあっけなく敗れて2歳チャンピオンにはなれなかったものの、距離が伸びればクレモルヌが真価を発揮するとみた者は多かった。冬につけられたダービーの早売りの倍率では、クレモルヌはラバーナム([[Laburnum]]、ミドルパークSで2着)とならんで1番人気をわけあった。プリンスチャーリーにはノド鳴りがあって、長距離は無理だとみなされたのだ。

　そのプリンスチャーリーとの再戦になった[[2000ギニー]]では、やはり距離の短さがモノを言った。クレモルヌはそれでもクビ差の接戦に持ち込んでの2着だった。4馬身離された3着にはクイーンズメッセンジャー([[Queen’s Messenger]])が入ったのだが、この馬はそのあと[[セントジェイムズパレスS]]を勝つのだから、クレモルヌがマイル戦では全く無能というわけでもなかった。と言うより、実際にはクレモルヌは2000ギニーに勝つだけの能力があったかもしれない。実は2000ギニーで騎乗した[[チャールズ・メイドメント]]騎手は目方があって所定の斤量より3ポンド（1.4kg）超過していたし、相手のプリンスチャーリーの[[ジョン・オズボーン]]騎手は名手だったのだから。

　クレモルヌは、当時ダービーのトライアルレースとしてよく使われた、10ハロンの[[ニューマーケットS]]に出て、古馬のリポンデン([[Ripponden]])を6馬身ちぎって勝った。相手は1歳年上で、しかも14ポンド（6.3kg）リポンデンのほうが負担重量が軽かったのだから、距離が伸びてクレモルヌが実力を発揮するのは明らかだった。リポンデンはそのあとハントカップというレースを勝つのだから、べらぼうに弱い馬だったというわけでもない。

{{H6|ダービー}}
　ダービーでは、プリンスチャーリーが5対2（3.5倍）、クレモルヌは3対1（4.0倍）と人気を二分した。お互いを警戒し合ったのか、大観衆による不埒な妨害を心配したのかわからないが、両馬とも所定の時間にパドックに現れなかった。これはルール違反であり、クイーンズメッセンジャーの馬主、[[ファルマス卿]]のような一部のくちやかましい年寄りは審判にクレームをつけたが、実際には大した問題にはならなかった。そのクイーンズメッセンジャー（6対1＝7.0倍）や[[ウェンロック]]([[Wenlock]])（8対1＝9.0倍）らは予定通りパドックにやってきた。この日は好天に恵まれており、どの馬も体毛が輝いて素晴らしくよく見えたというが、遅れてやってきた（つまり、入念に手入れをしてきたということになっているはずなのに）本命のプリンスチャーリーは2000ギニーを勝った時に比べるとずいぶん見栄えが悪かったと伝えられている。対するクレモルヌは万全の様子だった。

　この年からダービーのコースが一部変更になっている。エプソム競馬場の12ハロンコースは、右に左にカーブが連続していて非常にトリッキーで難しい、危険なコースとして知られていた。そのスタート位置が変更になり、スタート直後のカーブと上り坂が無くなったのである。この変更によってコースの難易度は多少下がったはずだが、どの騎手にとっても初めてのコースということになり、その意味ではむしろ難しいレースになる可能性があった。

　スタートすると、クレモルヌは先行した。ウェンロック、ラバーナムあたりの有力どころもそこそこ前につけたが、プリンスチャーリーは後方に控えていた。難所の一つである丘の下りは各馬とも無難に抑えていくことができたが、下りきった底でプリンスチャーリーは躓いてバランスを崩す不利があった。さらに難しいタッテナムコーナーではシャロナー(Chaloner)が大きく外に膨らんで、近くにいたの何頭かがそのアオリを受けた。スタミナのありそうだったラバーナムやウェンロックあたりも直線で伸びず、クレモルヌは独走態勢に入った。

　そこでメイドメント騎手はヘマをやらかした。後ろにずいぶん差をあけたと思って油断したメイドメント騎手はクレモルヌの手綱を緩めてしまい、スピードを落としてしまった。実際にはペルメル([[Pell Mell]])という馬<ref group="注">正確には、ダービーの時点ではペルメルはまだ名無し馬で、「フラリーの半弟(brother to Flurry)」と呼ばれていた。ペルメルと命名されるのはダービー後のことである。</ref>が猛追してきて、一気に並びかけてきた。両馬は一瞬並び、わずかにペルメルが前に出た。大慌てでメイドメント騎手が再びクレモルヌを追い出すと、クレモルヌの闘志に火がつき、数完歩で追いつき、ゴールの時点ではアタマ差だけクレモルヌが勝っていた。3着にはクイーンズメッセンジャー、4着にウェンロックが入っている。

{{H6|パリ大賞}}
　ダービー優勝のあと、クレモルヌは大急ぎで船を手配し、ドーバー海峡を渡った。フランス・[[ロンシャン競馬場]]の[[パリ大賞]](3000m)を目指すためである。パリ大賞は9年前の1863年に創設されたレースで、英仏のダービー馬の対決を実現するために1着14万フランもの高額の賞金が提供されていて、これはイギリスの通貨に換算して6000ポンドにもなった。この年のダービーの賞金は4850ポンドだったので、それを上回る額ということである。

　一番手ごわい相手は地元フランスの牝馬レーヌ([[Reine]])だった。どのぐらい手強いかと言うと、レーヌはこの年にイギリスに遠征し、ニューマーケットで[[1000ギニー]]を、エプソムで[[オークス]]を勝っているのである。レーヌの父馬は[[モナルク]]([[Monarque]])で、3年前の1869年にイギリス三冠を制したフランス最強馬[[グラディアトゥール]]と同じ。パリっ子はフランスの勝利を確信していた。彼らの予想では、クレモルヌはどちらかと言えば1マイルか1マイル半までの「短距離」馬で、本格的な3000m戦ではスタミナがもたないだろう（当時の基準では、2400mは短い部類の距離）、地元のフランス馬のほうがスタミナに富んでいると考えていた。だが実際は、フランスの有力馬はどれも春先から使い詰めできていたのに対し、クレモルヌはまだ今シーズンたったの3戦しかしておらず、余裕が残っていた。

　今回はメイドメント騎手は卒なく乗って、最終コーナーで抜け出すと、2馬身差で快勝した。2着争いは激しかったが、最終的には地元のバルビヨン([[Barbillon]])が2着に入り、レーヌはさらに4馬身遅れた3着止まりだった。しかし勝ったとはいえ、と言うより勝ってしまったせいで、馬主のサビル大尉とクレモルヌは危険に晒されることになった。

　実はパリ大賞は前年中止になっている。今回2年ぶりに再開されたのだが、なぜ中止になったかというとフランスとプロイセン（ドイツ）の間で普仏戦争があったからである。普仏戦争は、ヨーロッパ各地に乱立していた王家の覇権争い、とりわけスペイン王位の後継問題をめぐる外交的対立が引き金になったのだが、フランス側はプロイセンをナメていた。フランスはクリミア戦争などこのところ連戦連勝で、軍備も最新式、ドイツの小国など捻り潰すことができるとタカをくくっていた。

　ところが蓋を開けてみると、ドイツ系の諸侯がこぞってプロイセン側で参戦、一方、フランスがいざとなったら味方してくれると期待していたイギリスは高みの見物を決め込んだ。全てはプロイセン宰相ビスマルクの事前の根回しによるものである。フランスの方から仕掛けた戦争だったが、プロイセンのほうがフランス本国へ攻め込み、パリも占領された。それどころか、皇帝ナポレオン3世が捕虜になってフランス帝政は崩壊、パリでは無政府主義者たちが「パリ・コミューン」なる「共産主義政権」を自称して大暴れし、2万人の市民が死んだ。パリ市民は飢えに苦しみ、屈辱的な降伏条件を受け入れてプロイセンに降ったのである。戦争の代償としてフランスはアルザス・ロレーヌ地方をドイツに譲り渡すことになった。

　そんなわけでフランス国民、とりわけ多大な被害を出したパリ市民は復讐心に燃えていて、それは日和見をしたイギリスにも向けられていた。そんな中でイギリスからやってきたクレモルヌがフランスで一番の大レースを勝ってしまったのだ。実はこの時、2着のバルビヨンと3着のレーヌにもイギリス人騎手が乗っており、フランス人の観衆はそれも気に食わなかった。イギリス人騎手が乗っていたのは両馬ともイギリス人調教師が管理していたからなのだが、それまでイギリス馬がフランスへ遠征に来た場合にはフランス人騎手を乗せるのが慣わしだったのだ。こうしたことでロンシャン競馬場に大挙していたパリ市民の鬱憤は爆発寸前になっていた。そんな空気を察したある人物が、サビル大尉にクレモルヌを連れて急いでロンシャン競馬場から逃げ去るべきだと耳打ちした。怯えたサビル大尉は、賞金のほとんどにあたる5000ポンドを「貧しいパリ市民」へ寄付すると宣言して気を逸らしているうちに、クレモルヌとともに密かにブローニュの森を抜け出し、ハラハラしながら5人乗りのボートにクレモルヌを乗せてセーヌ川をくだり、大慌てでイギリスへ逃げ帰った。クレモルヌにとってもこの船旅はずいぶん不愉快だった。

{{H6|夏から秋}}
　パリから帰国したクレモルヌはすぐに[[アスコット競馬場]]へ行き、バイエニアルSとトライエニアルSの「2年目レース」に出た。バイエニアルSでは8対1もの倍率がつけられているが、これは1600mが短いと思われたのか、それともパリ大賞から中2日で出走するわけがないと思われたのだろうか。これを4馬身差で楽勝すると、2日後のトライエニアルSでは36頭の登録馬の中から挑戦者が現れず、単走になった。

　7月は出走せず（と言っても、はるばるヨークまでの150マイルもの徒歩移動があるが）、8月下旬に北部の[[ヨーク競馬場]]で北部イングランドバイエニアルSの「2年目」に出た。ここにも挑戦者は1頭もおらず（登録馬はクレモルヌを含めて30頭いた）、2マイルを1頭で走って賞金を得た。クレモルヌにとってはこのレースは足慣らしに過ぎず、狙いは2日後の[[グレートヨークシャーS]]（現[[グレートヴォルティジュールS]]）である。ヨーク競馬場と[[セントレジャー]]を行う[[ドンカスター競馬場]]はお隣同士の位置にあり、3週間前に本番と同じ1マイル<sup>3</sup>/<sub>4</sub>で行うこのレースはセントレジャーの最も重要な予選の一つになっている。クレモルヌはこのレースを4馬身差で楽勝した。

　しかし、理由は分からないが、クレモルヌはセントレジャーのあるドンカスター競馬場へは向かわなかった。登録はしていたのだが、南のニューマーケットへ引き返してしまった。9月11日のセントレジャーではメイドメント騎手の[[ウェンロック]]が本命の[[プリンスチャーリー]]を5馬身差で下して優勝し、4450ポンドの賞金を得ている。

　ニューマーケットに戻ったクレモルヌは[[ニューマーケットセントレジャー]]というレースに出たが、クビ差で[[Laburnum]]に敗れてしまった。どうも、このレースの前、クレモルヌは虫歯のせいでじゅうぶんに餌を食べていなかったらしい。ふだんは底なしの大食いだったのに、この時期は食欲不振に陥っていて、それが敗因だったと伝わっている。なおこのときクレモルヌは勝馬よりも1ストーン（＝14ポンド＝6.35kg）重い負担重量を課されている。勝ったLaburnumはロスチャイルド男爵の持ち馬で、2000ギニーは着外（10着）、ダービー着外（14着）だった馬である。クレモルヌが出ないレースではLaburnumにメイドメント騎手が騎乗しており、同騎手にとってはまさかの敗戦だったのではないだろうか。

　このあと、平地競馬のシーズンも終わりに近い10月のニューマーケットでニューマーケットダービーに出て、ほとんど無名馬ばかりを相手に楽勝してこのシーズンを終えている。

====1872年の全出走履歴====

{{Template:Result
|年月日 = 1872.{{0}}5.{{0}}1
|競馬場 = [[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]
|開催 = First Spring Meeting
|曜日 = 水
|レース名 = '''[[2000ギニー]]'''<br>2000 Guineas
|距離 = 8F<!--RM-->
|m = 1609
|賞金 = ￡4350
|頭数 = 14
|オッズ = 11/4
|倍率 = 3.75
|人気順 = 2
|ストーン = 8st10lb
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = 2
|1着馬 = [[Prince Charlie]]
|1着斤量 = 122
|着差 = クビ
|2着馬 = Cremorne
|2着斤量 = 122
|3着着差 = 4馬身
|3着馬 = [[Queen's Messenger]]
|3着斤量 = 122
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=snippet&q=Prince%20Charlie&f=false],p65
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1872.{{0}}5.{{0}}3
|競馬場 = [[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]
|開催 = First Spring Meeting
|曜日 = 金
|レース名 = [[ニューマーケットS]]<br>Newmarket Stakes
|距離 = 7F210yds<!--DM-->
|m = 1600
|賞金 = ￡400
|頭数 = 1
|オッズ = 
|倍率 = 
|人気順 = 1
|ストーン = 8st10lb
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = 単走
|2着馬 = 
|2着斤量 = 
|3着着差 = 
|3着馬 = 
|3着斤量 = 
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=snippet&q=Prince%20Charlie&f=false],p71
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1872.{{0}}5.29
|競馬場 = [[エプソム競馬場|エプソム]]
|開催 = Summer Meeting
|曜日 = 水
|レース名 = '''[[ダービー]]'''<br>Derby
|距離 = 12F<!--atarting at the New High Level starting-post-->
|m = 2414
|賞金 = ￡4850
|頭数 = 23
|オッズ = 3/1
|倍率 = 4.0
|人気順 = 2
|ストーン = 8st10lb
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = アタマ
|2着馬 = [[Pell Mell]]
|2着斤量 = 122
|3着着差 = 3馬身
|3着馬 = [[Queen's Meesenger]]
|3着斤量 = 122
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=onepage&q=Cremorne&f=false],p127
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1872.{{0}}6.{{0}}9
|競馬場 = [[ロンシャン競馬場|ロンシャン]]
|開催 = Summer Meeting
|曜日 = 日
|レース名 = '''[[パリ大賞]]'''<br>Grand Prix de Paris
|距離 = 
|m = 3000
|賞金 = F10000
|頭数 = 9
|オッズ = 
|倍率 = 
|人気順 = 
|ストーン = 
|lbs = 
|Kg = 55
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 55kg
|着差 = 2馬身
|2着馬 = [[Barbillon]]
|2着斤量 = 55kg
|3着着差 = 4馬身
|3着馬 = [[Reine]]
|3着斤量 = 53.5
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=onepage&q=Paris&f=false],p18
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1872.{{0}}6.12
|競馬場 = [[アスコット競馬場|アスコット]]
|開催 = Ascot
|曜日 = 水
|レース名 = バイエニアルS(2年目)<br>2 of 14th Ascot Biennial Stakes
|距離 = 8F<!--Old Mile-->
|m = 1609
|賞金 = ￡645
|頭数 = 4
|オッズ = 8/1 
|倍率 = 9.0
|人気順 = 1
|ストーン = 8st10lb
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = 4馬身
|2着馬 = [[Malahide]]
|2着斤量 = 122
|3着着差 = 2馬身
|3着馬 = [[Whortlton]]
|3着斤量 = 122
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=onepage&q=Cremorne&f=false],p155
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1872.{{0}}6.14
|競馬場 = [[アスコット競馬場|アスコット]]
|開催 = Ascot
|曜日 = 金
|レース名 = トライエニアルS(2年目)<br>2 of 19th Ascot Triennial Stakes
|距離 = 8F<!--New Mile-->
|m = 1609
|賞金 = ￡350
|頭数 = 1
|オッズ =  
|倍率 = 
|人気順 = 
|ストーン = 8st10lb
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = 単走
|2着馬 = 
|2着斤量 = 
|3着着差 = 
|3着馬 = 
|3着斤量 = 
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=onepage&q=Cremorne&f=false],p159
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1872.{{0}}8.20
|競馬場 = [[ヨーク競馬場|ヨーク]]
|開催 = August Meeting
|曜日 = 火
|レース名 = 北部バイエニアルS(2年目)<br>2 of 16th North of England Biennial Stakes
|距離 = 16F<!--　-->
|m = 3218
|賞金 = ￡290
|頭数 = 1
|オッズ =  
|倍率 = 
|人気順 = 
|ストーン = 9st4lb
|lbs = 130
|Kg = 58.96
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 130
|着差 = 単走
|2着馬 = 
|2着斤量 = 
|3着着差 = 
|3着馬 = 
|3着斤量 = 
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=onepage&q=Great%20Yorkshire&f=false],p332
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1872.{{0}}8.22
|競馬場 = [[ヨーク競馬場|ヨーク]]
|開催 = August Meeting
|曜日 = 木
|レース名 = '''[[グレートヨークシャーS]]'''<br>Great Yorkshire Stakes
|距離 = 14F<!--　-->
|m = 2816
|賞金 = ￡575
|頭数 = 4
|オッズ = 100/30 
|倍率 = 4.33
|人気順 = 1
|ストーン = 9st3lb
|lbs = 129
|Kg = 58.51
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 129
|着差 = 4馬身
|2着馬 = [[King Lud]]
|2着斤量 = 122
|3着着差 = 1馬身半
|3着馬 = [[Muddle]]
|3着斤量 = 117
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=onepage&q=Great%20Yorkshire&f=false],p336
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1872.{{0}}9.24
|競馬場 = [[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]
|開催 = First October Meeting
|曜日 = 水
|レース名 = ニューマーケットセントレジャー<br>Newmarket St.Leger
|距離 = 2M5Y<!--D.I　-->
|m = 3223
|賞金 = ￡925
|頭数 = 4
|オッズ = 7/4 
|倍率 = 2.75
|人気順 = 1
|ストーン = 9st3lb
|lbs = 129
|Kg = 58.51
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = 2
|1着馬 = [[Laburnum]]
|1着斤量 = 115
|着差 = クビ
|2着馬 = Cremorne
|2着斤量 = 129
|3着着差 = 1馬身
|3着馬 = [[Alava]]
|3着斤量 = 115
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=onepage&q=St.Leger&f=false],p431
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1872.10.11
|競馬場 = [[ニューマーケット競馬場|ニューマーケット]]
|開催 = Second October Meeting
|曜日 = 金
|レース名 = ニューマーケットダービー<br>Newmarket Derby
|距離 = <!--last mile and a half of BC　-->
|m = 
|賞金 = ￡615
|頭数 = 4
|オッズ = 100/30 
|倍率 = 4.33
|人気順 = 1
|ストーン = 9st4lb
|lbs = 130
|Kg = 58.96
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 130
|着差 = 4馬身
|2着馬 = [[Alava]]
|2着斤量 = 123
|3着着差 = ?<!--a bad-->
|3着馬 = [[Khedive]]
|3着斤量 = 123
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=Je8NAAAAQAAJ&dq=Cremorne+Fourteenth+Biennial+Stakes&q=Prince+Charlie#v=onepage&q=Laburnum&f=false],p473
}}

===4歳時 1873年===
　古馬になって最初の出走は、春のエプソム競馬場の名物レース、[[シティアンドサバーバンハンデ]]である。このハンデ戦は1 <sup>1</sup>/<sub>4</sub>マイル、すなわち10Fで行われ、賞金は1330ポンドとかなりの高額である。クレモルヌはトップハンデの9ストーン2ポンド（約58.05kg）を背負わされたが人気は4対1（5.0倍）の本命だった。ハンデの上での2番手は一昨年の三冠牝馬ハンナ([[Hannah]])で8ストーン12ポンド（約56.24kg）だったが全く人気はなく50対1（51倍）、人気の上での2番手はウルフホール(Wolfhall)という4歳馬で、6ストーン3ポンド（約39.46kg）の軽ハンデで6対1（7.0倍）となっている。（ハンデ最軽量馬は6ストーン（38.10kg）だった。）

　しかし勝ったのは50対1の大穴、モーニントン([[Mornington]])という馬で、クレモルヌは3/4馬身差の2着に終わった。優勝馬とはハンデ差が17ポンド（約7.7kg）あり、それで着差が3/4馬身であれば敗因はハンデのせいにできそうなものだが、この敗戦はメイドメント騎手の騎乗ミスだと伝えられている。ギルバート調教師はこのレース後、メイドメント騎手をひどく叱りつけたという。

{{H6|アスコットでの勝利}}
　出だしでいきなり躓いたが、そのあと陣営は大目標のアスコット金杯まで、1ヶ月あまりの間隔をとった。この間、クレモルヌが同厩馬と併せ馬をした記録が残されている。それによれば、この時クレモルヌはカイザー([[Kaiser]]、2000ギニー2着馬)、ウーラン（このあとアスコット開催で[[アスコットS]]優勝）、リリアンらよりも18ポンド（8.16kg）重い斤量を背負って、そのうえクレモルヌだけは20ハロンを走り、ほかの各馬は後半10ハロンで併せたにもかかわらず、これらを4馬身離して先着したという。
　
　6月のアスコット開催がはじまると、まずは初日のトリエニアルSの3年目（3マイル）を単走で勝った。ちなみに、同じ日の[[キングズスタンドS|クイーンズスタンドS]]（現[[キングズスタンドS]]）をプリンスチャーリーが勝っている。こっちのレースは「2歳戦コース」すなわち5ハロン戦で、いまでいうスプリント戦である。プリンスチャーリーは（セントレジャー2着のの実績もあるのだが）この短距離路線を歩んで「2歳戦コースのプリンス」の異名を取るようになった。

　その2日後が[[アスコット金杯]]である。ただ、賞金は「金貨500枚相当の値うちのある金杯」を含めて890ポンドなので、当時の各レースの中で特別高額賞金というわけでもない。賞金がそう多くないのは、登録馬が23頭しかいなかったことも影響しているだろう。この時代の各レースの価値や格付けが相対的にどうであったかはよくわからないが、少なくとも賞金面でみると、このアスコット金杯よりも次走の[[アレクサンドラプレート]]のほうが上である。

　アスコット金杯でのクレモルヌの倍率は11対8（2.375倍）なので、相当堅い本命と見られていたのだろう。（当時も今も、イギリスでは2.0倍以下の馬券はリスクのほうが大きすぎて買うに値しないとみなされている。）相手はフランスから来た3歳馬のフラジュレ([[Flageolet]])である。3歳馬とはいえ、フラジュレは2歳の時に[[ミドルパークS]]、[[クリテリオンS]]と[[モルニ賞]]を勝っており、今で言う欧州2歳チャンピオンである。それがクレモルヌよりも19ポンド（8.6kg）軽い斤量で出てくるのだから、侮ってばかりはいられなかったのではないか。ほかの主な出走馬には、初日の[[クイーンズヴェース|ゴールドヴェース]]（現クイーンズヴェース、2マイル）を勝ったソーン([[Thorn]])と、そのレースでクビ差の2着だった三冠牝馬ハンナ、あとは一昨年の[[シザーウィッチ]]を制した[[Corisande]]などがいた。しかし、クレモルヌはフラジュレに8馬身差をつけて圧勝し、最強ステイヤーの座についたのである。

　クレモルヌはさらに翌日、[[アレクサンドラプレート]]に出た。このレースは当時のイギリス国王[[エドワード7世]]の[[アレクサンドラ王妃]]が賞金1000ポンドを出す3マイルのレースで、ほかに20頭の登録料を合わせて1195ポンドの賞金になった。（2着の賞金は200ポンド。）ただし、20頭の登録馬のうち、実際に出走したのはクレモルヌともう1頭だけで、クレモルヌはこの馬を15馬身ちぎっている。

{{H6|グッドウッドの敗戦}}
　続く[[グッドウッドカップ]]がクレモルヌの最後の出走になった。このレースはわずか3頭で争われたのだが、その3頭というのは、1871年英国ダービー馬のファヴォニアス([[Favonius]])、1872年英国ダービー馬クレモルヌ、それに1872年2歳チャンピオンのフラジュレだから、ドリームレースである。ただ、アスコット金杯の時はフラジュレとは19ポンドの斤量差があったが、グッドウッドカップではそれが27ポンド（12.24kg）に広がった。そしてクレモルヌはこのレースで大きく離されて殿負けを喫するのである。2着ファヴォニアスと3着クレモルヌの着差は当時のレーシングカレンダーに記録されていないので不明だが、1着フラジュレと2着ファヴオニアスのあいだは30馬身も離れており、少なくともクレモルヌはそれ以上、フラジュレより遅れたことは間違いない。レーシングカレンダー記載の倍率にしたがうと、ファヴォニアスは11対10（2.1倍）、フラジュレは9対4（3.25倍）、クレモルヌは9対2（4.5倍）と、3頭中クレモルヌは最低人気である。当時の人たちにはクレモルヌの殿負けが「予想通り」だったのだろうか。

　実は、このレースには19世紀の英国らしい逸話が残されている。

　それによれば、グッドウッドカップのしばらく前からクレモルヌは飛節を痛めて腫れ上がっており、とてもまともに走れる状態ではなかった。そのことを情報屋のタレコミで知ったあるブックメーカーが、うっかり（本人はまんまと出し抜くつもりだったのだが）「クレモルヌがグッドウッドカップに出走しない」に大きく賭けたのである。ところがこの賭けを受けたのがほかでもない、クレモルヌの馬主のサビル大尉だった。大尉はとにかくクレモルヌが出走さえすれば賭けに勝てるのだから、ギルバート調教師に頼み込んでクレモルヌを無理やり出走させ、キャンターで一周してきたという。

　これには異説がある。どこかのブックメーカーがクレモルヌとファヴォニアスの両ダービー馬のどちらかが勝つに決まっていると考え、うっかりフラジュレに高い倍率をつけてしまったのだ。だから、ファヴォニアスとクレモルヌの馬主はそのブックメーカーのところでフラジュレにたっぷり賭けておいて、レースでは2頭揃ってわざと負けたというのである。

　どっちにしろ、クレモルヌはこのレースで終始最後方のまままともに走らずにゴールしたと伝わっており、この話であれば30馬身も離されたのも合点がいく。もちろん今ではありえない話だが、19世紀にはよくある話である。今では「いんちき」と看做されることだが、当時は「出し抜いた」で済んだ話なのだ。

　いずれにせよ、クレモルヌはこのレースで無理をしてしまい、結局そのあとのシーズンを全休して脚の回復を待つことになった。翌1874年のシティアンドサバーバンHを目指す予定だったが、結局5歳になっても回復せず、引退して種牡馬になった。

　なお、フラジュレはその後[[ジョック―クラブC]]にも勝った。フラジュレは引退後にイギリスのリーディングサイヤーになり、アメリカに売られ、さらにドイツのレーンドルフ大臣が購入してドイツの種牡馬になった。

====1873全出走履歴====

{{Template:Result
|年月日 = 1873.{{0}}4.22
|競馬場 = [[エプソム競馬場|エプソム]]
|開催 = Spring Meeting
|曜日 = 火
|レース名 = '''[[シティアンドサバーバンH]]'''<br>City and Suburban Handicap
|距離 = a10F<!--about one mile and a quater-->
|m = 2011
|賞金 = ￡1330
|頭数 = 25
|オッズ = 4/1
|倍率 = 5.0
|人気順 = 1 
|ストーン = 9st2lb
|lbs = 128
|Kg = 58.05
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = 2
|1着馬 = [[Mornington]]
|1着斤量 = 111
|着差 = 3/4馬身
|2着馬 = Cremorne
|2着斤量 = 128
|3着着差 = <!--a bad-->
|3着馬 = [[Bertram]]
|3着斤量 = 119
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?id=veINAAAAQAAJ&pg=PR100&dq=the+racing+calendar,+for+the+year+1873&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwiv4o7ApsjLAhVMI44KHTbBCFkQ6AEIGzAA#v=onepage&q=Suburban&f=false],p51
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1873.{{0}}6.10
|競馬場 = [[アスコット競馬場|アスコット]]
|開催 = Ascot Heath
|曜日 = 火
|レース名 = トライエニアルS(3年目)<br>3 of 19th Ascot Triennial Stakes
|距離 = a24F<!--onve round and in,starting opposite the Grand Stand、出典のLXXXVI参照-->
|m = 4828
|賞金 = ￡350
|頭数 = 1
|オッズ = 
|倍率 = 
|人気順 = 
|ストーン = 8st10lb
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = [[Cremorne]]
|1着斤量 = 122
|着差 = 単走
|2着馬 = 
|2着斤量 = 
|3着着差 = 
|3着馬 = 
|3着斤量 = 
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?id=veINAAAAQAAJ&pg=PR100&dq=the+racing+calendar,+for+the+year+1873&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwiv4o7ApsjLAhVMI44KHTbBCFkQ6AEIGzAA#v=onepage&q=Triennial&f=false],p159
}}

{{Template:Result
|年月日 = 1873.{{0}}6.12
|競馬場 = [[アスコット競馬場|アスコット]]
|開催 = Ascot Heath
|曜日 = 木
|レース名 = '''[[アスコット金杯]]'''<br>Gold Cup
|距離 = a20F<!--about two miles and a half-->
|m = 4023
|賞金 = ￡890
|頭数 = 7
|オッズ = 11/8
|倍率 = 2.375
|人気順 = 1 
|ストーン = 8st10lb
|lbs = 122
|Kg = 55.33
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 122
|着差 = 8馬身
|2着馬 = [[Flageolet]]
|2着斤量 = 103
|3着着差 = 
|3着馬 = [[Revigny]]
|3着斤量 = 122
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?id=veINAAAAQAAJ&pg=PR100&dq=the+racing+calendar,+for+the+year+1873&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwiv4o7ApsjLAhVMI44KHTbBCFkQ6AEIGzAA#v=onepage&q=Gold%20Cup&f=false],p163
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1873.{{0}}6.13
|競馬場 = [[アスコット競馬場|アスコット]]
|開催 = Ascot Heath
|曜日 = 金
|レース名 = '''[[アレクサンドラP]]'''<br>Alexandra Plate
|距離 = a24F<!--start at the New Mile post,and go once round,about three miles-->
|m = 4828
|賞金 = ￡1195
|頭数 = 2
|オッズ = 7/1
|倍率 = 8.0
|人気順 = 1 
|ストーン = 9st5lb
|lbs = 131
|Kg = 59.42
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = '''1'''
|1着馬 = Cremorne
|1着斤量 = 131
|着差 = 15馬身
|2着馬 = [[Vanderdecken]]
|2着斤量 = 126
|3着着差 = 
|3着馬 = 
|3着斤量 = 
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?id=veINAAAAQAAJ&pg=PR100&dq=the+racing+calendar,+for+the+year+1873&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwiv4o7ApsjLAhVMI44KHTbBCFkQ6AEIGzAA#v=onepage&q=Gold%20Cup&f=false],p166
}}
{{Template:Result
|年月日 = 1873.{{0}}6.13
|競馬場 = [[グッドウッド競馬場|グッドウッド]]
|開催 = 
|曜日 = 
|レース名 = '''[[グッドウッドC]]'''<br>Goodwood Cup
|距離 = a20F<!--two miles and a half-->
|m = 4023
|賞金 = ￡470
|頭数 = 3
|オッズ = 9/2
|倍率 = 5.5
|人気順 = 3 
|ストーン = 9st6lb
|lbs = 132
|Kg = 59.87
|騎手 = [[チャールズ・メイドメント|メイドメント]]
|着順 = 3
|1着馬 = [[Flageolet]]
|1着斤量 = 105
|着差 = 30馬身
|2着馬 = [[Favonius]]
|2着斤量 = 133
|3着着差 = 
|3着馬 = Cremorne
|3着斤量 = 132
|出典 =[https://books.google.co.jp/books?id=veINAAAAQAAJ&pg=PR100&dq=the+racing+calendar,+for+the+year+1873&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwiv4o7ApsjLAhVMI44KHTbBCFkQ6AEIGzAA#v=snippet&q=Cremorne&f=false],p290
}}

==種牡馬成績==
　クレモルヌは、自身の生地でもあるサビル氏の牧場で種牡馬になった。前述の通り、結果的にクレモルヌの最終出走は4歳（1873年）だったが、5歳（1874年）の現役出走も見据えていたので、種牡馬として供用されるのは1874年からになった。したがって、1875年生まれの世代が初年度産駒となる。

　クレモルヌの種牡馬としてのデビューは成功したと言っていいだろう。1877年に産駒が走り始めると、まず牝馬の[[Bellicent]]がアスコット競馬場の[[ニューS]]を勝ち、早々と2歳戦のステークスウィナーとなった。さらにこの世代が3歳になると'''シューリオ'''('''[[Thurio]]''')が当時世界最高賞金の[[パリ大賞]]を勝ち、このレース父子制覇を成し遂げている。この世代からはアスコットS優勝馬の[[Ridotto]]も出た。

　2世代目からも'''カドガン'''('''[[Cadogan]]''')が2歳時に[[ウッドコートS]]を勝ち、3歳になって2000ギニーで2着に入っている。不運なことにカドガンはダービーで本命に祭り上げられながら落馬で競走を中止しており、大成できなかった。もし父子2代ダービー馬となっていれば、また血統史が変わっていたかもしれない。カドガンはオセアニアで種牡馬になり、そこそこの成功を残している。

　しかし、その後の種牡馬成績は今ひとつである。どうも、種牡馬になっても食べすぎて太ってしまい、種付けがうまくこなせなかったらしい。代表産駒のシューリオは種牡馬としては不首尾におわり、ほかの主な活躍馬もほとんど南半球に送られてしまったので、クレモルヌの父系はイギリスではまもなく途絶えてしまった。ただ、シューリオは牝馬を通じて活躍馬を出しており、ドイツの[[ダークロナルド]]([[Dark Ronald]])や日本の[[インタグリオー]]の母の父として血統表によく登場する。どステイヤーの[[ハリーオン]]や、アメリカのブラックサーバント([[Black Servant]])も祖母の父にシューリオを持っている。

　シューリオ以外の活躍馬は牝馬の'''ケルメス'''('''[[Kermesse]]''')である。ケルメスは2歳時に主要レースを勝ちまくってイギリスの2歳チャンピオンになった。カドガン同様に不運なことに、ケルメスは3歳クラシックを怪我で棒に振ってしまい、そのためにメジャーなところには名前が出てこない。ケルメスはのちにセレクトSで同世代の二冠馬[[ショットオーヴァー]]（[[Shotover]]）を破っている。

===母の父として===
　ケルメスの産駒で牝馬の[[Montem]]も[[ジュライS]]などに勝っている。さらにその子孫には、2000ギニー、チャンピオンS、セントジェイムズパレスSを制したイーランゴーワン([[Ellangowan]])、2歳チャンピオン・2000ギニー優勝の[[コロンボ]]([[Colombo]])、アイルランド二冠牝馬のサントップ([[Suntop]]、[[愛1000ギニー]]・[[愛オークス]])などが出ている。ほかにもケルメスの子孫はあちこちで活躍しており[[エクリプスS]]の勝ち馬エプソムラッド([[Epsom Lad]])など、そのファミリーは大西洋を越えて北米や南米に広がった。第二次世界大戦中にアメリカで活躍したミスグリヨ([[Miss Grillo]]、アルゼンチン産)はケルメスから数えて5代目の子孫にあたる。

　フットライト（[[Footlight]]）は1号族の牝系の分枝(1-m)の始祖となった。この系統からは、1000ギニー優勝馬[[フレア]]([[Flair]])、ベッティナ([[Bettina]])、名ステイヤーのプリンスパラタイン([[Prince Palatine]]、[[セントレジャー]]・[[アスコット金杯]]・[[ドンカスターC]]ほか)などを筆頭に無数の活躍馬が出ている。

===主な産駒と父系===
:PARMESAN
:｜'''CREMORNE''' 1869 牡 [[ダービー]],[[パリ大賞]],[[アスコット金杯]],[[アレクサンドラP]]
:｜｜[[Bellicent]] 1875 牝 [[ニューS]]
:｜｜[[Ridotto]] 1875 牡 [[アスコットS]],(エプソム)Her Majesty's Plate,②[[シティ&サバーバンH]]
:｜｜'''[[Thurio]]''' 1875 牡 [[パリ大賞]],[[クイーンアレクサンドラP]],[[クレイヴンS]]
:｜｜｜Matin Bell 1884 牝 Northumberland Plate(1888)
:｜｜｜[[Ruddigore]] 1884 牡 Somersetshire S、Her Majesty's Plate
:｜｜｜Sirocco 1887 牡　アルゼンチン種牡馬
:｜｜｜Star 1887 牝 Tout Suiteの母
:｜｜｜[[Curio]] 1889 牡　③[[2000ギニー]]　種牡馬
:｜｜｜[[Royal Red]] 1889 牡　West of Scotland Steeplechase
:｜｜｜Cameo 1891 牝 *[[インタグリオー]]の母
:｜｜｜Villiers 1892 牡 Great Lancashire H
:｜｜｜[[Gluten]] 1893 牡　[[グッドウッドS]] NZ種牡馬
:｜｜｜｜[[Gluepot]] 1909　騙　Great Northern Steeplechase(1917)
:｜｜｜｜[[Dick]] 1914 騙　Great Northern Steeplechase(1926)
:｜｜[[Cadogan]] 1876 牡 [[ウッドコートS]],②[[2000ギニー]]。ダービー1番人気も競走中止。NZ種牡馬
:｜｜｜[[St.Swithin]] 1884 牡
:｜｜｜｜[[Merloolas]] 1891 騙 [[シドニーC]],[[AJCオータムS]],[[AJCプレート]]
:｜｜｜｜[[Dandalla]] 1900 牡 [[トゥーラクH]](VATC)
:｜｜｜[[Lethe]] 1886 牡
:｜｜｜｜[[Letherin]] 1900 騙
:｜｜[[Chelsea]] 1876 牡　[[サセックスS]]。オーストリア種牡馬
:｜｜[[Footlight]] 1876 牝　1-m牝祖
:｜｜[[Roysterer]] 1878 牡　[[シティアンドサバーバンH]] 南アフリカ種牡馬
:｜｜[[Voluptuary]] 1878 騙　[[グランドナショナル]]
:｜｜'''[[Kermesse]]''' 1879 牝　英2歳牝馬チャンピオン。[[シャンペンS]]、[[ジュライS]]、[[ミドルパークS]]、[[ニューS]]
:｜｜[[Siren]] 1879 牝 Olympian Welter H
:｜｜[[Zagzig]]　1882 牡 Surbiton H
:｜｜[[St.George]] 1883 牡　アメリカ種牡馬 毛色は諸説あり
:｜｜｜[[Aladdin]] 1899 牡 シェリダンS、オークウッドH。③アメリカンダービー
:｜｜｜[[Bearcatcher]] 1901 牡　米種牡馬
:｜｜｜[[Grey Friar]] 1900 牡　[[グランドユニオンホテルS]]、[[アルバニーH]]

===クレモルヌの最期===
　牧場の管理も任されていたギルバート調教師は、大食漢で怠け者のクレモルヌのために、雨天でも濡れずにすむ屋根付きの屋内馬場をこしらえて、毎日3時間の歩き運動（その途中で寝てしまうのだが）を日課にした。しかしその効果は限定的だった。クレモルヌは運動する時間よりも長く、日がな寝藁を食べて過ごしていたと言う。

　1880年に馬主のサビル氏が亡くなり、当時の慣例にしたがって所有馬は売りに出された。クレモルヌは5400ギニーでA.S.Lumley氏（詳細は不明だが、ラムレー姓なので家系につながりがあるのだろう。）が競り落とした。ところが1年後に死んでしまった。死因は食べ過ぎによる肥満で、心臓に脂肪がつきすぎて心臓発作を起こしたのだった。

==注==
===注釈===
<references group="注"/>
===出典===
{{Reflist|colwidth=30em |refs= 

}}

===LINK===
*{{JBIS}} [http://www.jbis.or.jp/horse/0000337333/ Cremorne]
*{{EQ}} [https://www.equineline.com/Free-5X-Pedigree.cfm?page_state=ORDER_AND_CONFIRM&reference_number=2056491&registry=T&horse_name==Cremorne%20(GB)&dam_name==Rigolboche%20(GB)&foaling_year=1869&nicking_stats_indicator=Y Cremorne]
*{{PO}} [http://www.pedigreequery.com/cremorne Cremorne]
*{{TH}} [http://www.tbheritage.com/Portraits/Parmesan.html Parmesan#Cremorne]
*{{GS}} [http://www.galopp-sieger.de/galoppsieger/en/pferd_html?pschl=CremorneParmesan Cremorne]
*[[:en:Cremorne (horse)]]
*[http://blog.nhrm.co.uk/index.php/legends-of-the-turf-cremorne/ Legends of the Turf:Cremorne]

==カテゴリー==
{{DEFAULTSORT:Cremorne}}
[[Category:イギリスの競走馬]]
[[Category:1869年生|英]]
[[Category:パリ大賞馬]]
[[Category:英国ダービー馬]]