「コリング兄弟」の版間の差分

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2016年6月6日 (月) 22:07時点における版

en:Robert Colling(oldid=705795779)より転記

ロバート・コリング(Robert Colling,1749 - 1820.3.7)とチャールズ・コリング(Charles Colling,1751 - 1836.1.16)のコリング兄弟は、イングランドの畜産家である。

ウシ、ヒツジ、穀物などの改良で目覚ましい成果をあげ、とりわけウシのショートホーン種を創出したことで知られている[1]。

生涯

コリング兄弟は、イングランド北部のダラム州／ヨークシャーで生まれた。生家はダーリントンに近いブラファトン(Brafferton)のケットン(Ketton)という地区にある。父の名はチャールズ・コリング(Charles Colling)といった[1]。

長兄のロバートは、通り一遍の教育を受けたあと、タイン川の河口にあるシールズの町[注 1]の雑貨商へ奉公に出た。しかし体調を崩し、実家に戻って父の農場を手伝うようになった。ハーワース(Hurworth)でしばらくのあいだ農業について学んだあと、バンプトン(Barmpton)にあるラムトン家(Lambton family)の農場で働くようになった[1]。

その頃のロバートは、ショートホーン種を創出することになるとは考えておらず、デイリー種(dairy cows)を飼育していた[1]。

ロバートは、弟のチャールズの進言をいれて、赤褐色と白色の毛が混じった雄牛を8ギニーで買い入れた。この雄牛は後に弟がいるケットンの農場へ売り渡した。この雄牛は、ショートホーン種創出史上、「ハバック号(Hubback)」と呼ばれている[1]。

兄弟は人付き合いが下手なところがあって、1793年3月にはとうとう仲違いに発展してしまった。しばらくのあいだ、兄の農場と弟の農場は疎遠になったが、後に関係が修復された[1]。


1810年10月に、弟のチャールズはケットン農場産の雄牛を売り払い、兄ロバートのバンプトン農場の雄牛の改良に専念することになった。これが後のショートホーン種になる[1]。

有名な白毛の雌牛（フェイヴァリット号(Favourite)産駒）、4歳の時点で1820ポンドもの目方があった、トマス・ウィーヴァー(Thomas Weaver)が絵に描いた、ウィリアム・ワード(William Ward)が彫刻にした、1811年12月13日に出版された、with a dedication to Robert Colling.[1]

この雌牛は、精肉業者に売られ、1811年のクリスマスの展示会で披露された。ピカデリー(Piccadilly)の「スリーキングス厩舎(the stables of the Three Kings)」で行われた、「畜産界における世界最大の驚異」として、そのとき体重は2488ポンドに達していた[1]。

ケットン農場で行われた系統繁殖の手法は、バンプトン農場でも徹底的に交雑を排除して絶え間なく行われた[1]。

兄のロバートは1810年9月末[注 2]に、生産した牛を競りに出したところ、61頭が7852ポンド12シリングで売れた[1]。

ロバートは1820年3月7日にバンプトン農場で死んた。農場は弟のチャールズが相続した。同年10月3日に最後の売却競りが行われている[1]。

兄は品種改良の腕はよかったが、当時はあまり有名ではなかった。弟のほうが商才に長けていた[1]。


弟

チャールズ・コリング(Charles Colling,1751 - 1836.1.16)は、父チャールズ・コリング(1725-1795)と母ドロシー(Dorothy Robson,?-1779)との間に生まれた次男である[2]。

チャールズは父が持っていたケットンの農場を継いだ。1782年に、畜産家のロバート・ベイクウェルに師事した。一般に考えられているのは、チャールズは3週間の短期間、ディッシュレー(Dishley)にあるベイクウェルの農場で学び、そこで選抜された優良個体の近親交配による系統繁殖の手法を集中的に教授された。ディッシュレーで学んだ最も重要なことは、ウシの「質」を正しく見分けることだった。チャールズはそこで学んだ知識をもとに、自ら地元のウシを徹底的に観察し、ウシの質のみきわめの技術を磨いていった[2]。

1783年7月23日に、チャールズはメアリ(Mary Colpitts,1763.2.2 - 1850.4.25)という女性と結婚した。メアリもウシの改良に並々ならぬ関心をもっていた女性で、チャールズの事業を大いに手助けした[2]。

チャールズが手がけた最初の雄牛は「ハバック号(Hubback)」と名付けられている。ハバック号は兄のロバートから買い入れ、ハバック号と命名されたものだった。ハバック号はケットンの農場で種牛となり、後に有名となる「ダッチェス号(Duchess)」、「デイジー号(Daisy)」、「チェリー号(Cherry)」、「レディメイナード号(Lady Maynard)」などの雌牛に配合された。1795年に父ハバック号の娘が産んだ、父「フェイヴァリット号(Favorite)」から生まれた粕毛の仔牛（Durham Ox）は、のちに地元で有名なウシになっていった[2]。

この仔牛は、5歳半になる頃には体重3024ポンドにまで成長し、展示用として140ポンドで買い手がついた。5ヶ月の間展示用に供用された後、持ち主のもとへ2000ポンドで買いたいと言う申し出があったが、これは断った。6歳になる頃には、このウシはイングランド中に知れ渡った。このウシの肖像画が描かれ、スコットランドの15代サムヴィル卿(John Southey Somerville, 15th Lord Somerville)に献じられた。10歳になる頃には3800ポンドの大きさになった。しかし、腰骨の脱臼によって1807年4月にオックスフォードで殺処分となった[2]。

ほかの有名なウシはコメット号(Comet)という。1804年秋に生産されたもので、チャールズはコメットを、自分が見たり生産したウシのなかで最高傑作だと評した。一般に、コメット号がショートホーン種の始祖とみられている。コメット号の肖像画も各地に残されている。

1810年10月11日に、チャールズはじぶんのウシを残らず競売に出品し、大変な注目を浴びた。その値段は様々な場所で言及された。コメット号には1000ギニーの値がついた。57頭の総売却額は7116ポンド18シリングだった。平均151ポンド8シリングである。のちに、49名の畜産家が共同で、チャールズの偉業を称える銀杯を贈呈した。この銀杯には「the great improver of the short-horned breed of cattle（ショートホーン種の偉大な創設者）」と刻まれていた[2]。

兄は1820年に亡くなった。チャールズはその16年後まで生き、1836年に亡くなった[2]。

1811年頃にThomas Weaverによって描かれた兄弟の肖像画が残されている[2]。

ショートホーン

ショートホーン種のもとになったウシは、この地方の畜産家たちが育ててきたウシである。それを体系的な手法で改良したのがコリング兄弟である。

チャールズのいたケットンはダーリントンの4マイル北西にある。ダーリントンはウシを取引する市が立つ重要な町だった。

ロバートのほうはバンプトンに拠点を置いていた。こちらはダーリントンから3マイルに位置していた。

1783年に兄弟はベイクウェルのもとで、彼の配合理論を学んだ。

兄弟は、ベイクウェルの配合理論をウシの生産で実践した。コメット号の血統にそれが如実に現れている。コメット号は1804年に生産され、競り市でとんでもない高値がついて大変な話題になった[3]。

次のフェイヴァリット(Favorite)産のウシは「ダラムオックス(Durham Ox)」の名で知られている。このウシは3400ポンドもの目方があったと報じられている。このウシは全国で展示された。当時の展示の仕方は現在とは違っている。このウシはイングランド中で展示されて回った[3]。

ロバートは飼育した。「ザホワイトハイファーザットトラベルド号(The White Heifer that Traveled、直訳すると「旅回りの白雌牛」)」という名前で有名になったウシを。これもフェイヴァリット産のウシで、2300ポンドの体重があった。雄牛の「ダラムオックス号」と雌牛の「ザホワイトハイファーザットトラベルド号」は、ショートホーン種の品種としての確立を喧伝するものだった[3]。

次のことは疑いがない。コリング兄弟の創出したショートホーン種がイギリスやアメリカの現在のショートホーン種の直系先祖であることは。彼らの生産した牛、たとえば「Foljambe」号や「Favorite」号、「Comet」号、そして「Hubback」号がその創出に関わっている[3]。





牛

下記はコメットの血統表である[4]。

Comet／コメット（ショートホーン種）　1804　　牡
　　
生産地 ／[5][6][7][8][9][10][11]
生産者
調教師 調教師／厩舎／厩舎
馬主 　
　Favourite (252)

　　 1793
　Bolingbroke (86)
　　 1788
　Foljambe (263) 不詳 {{{fffff}}}
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不詳 {{{fffmf}}}
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　Young Strawberry 不詳 {{{ffmff}}}
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Favourite Cow {{{ffmmf}}}
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　Phoenix
　　
　Foljambe (263) 不詳 {{{fmfff}}}
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不詳 {{{fmfmf}}}
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　Favourite Cow 不詳 {{{fmmff}}}
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不詳 {{{fmmmf}}}
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　Young Phoenix

　　
　Favourite (252)
　　
　Bolingbroke (86) Foljambe (263) {{{mffff}}}
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Young Strawberry {{{mffmf}}}
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　Phoenix Foljambe (263) {{{mfmff}}}
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Favourite Cow {{{mfmmf}}}
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　Phoenix
　　
　Foljambe (263) 不詳 {{{mmfff}}}
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不詳 {{{mmfmf}}}
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　Favourite Cow 不詳 {{{mmmff}}}
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不詳 {{{mmmmf}}}
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牝系 ／　
戦績 　戦　勝 　
獲得賞金／　
繁殖成績

彼らが農業をはじめたのは1782年である。[4]

彼らが創出したショートホーン種は世界中に広まり、アメリカ、アルゼンチン、カナダ、イギリスで最も多く飼育されているウシになった。[4]

肉乳両用で高い評価を獲得した[4]

1822年にショートホーン種の血統を記した『Coate's Shorthorn Herd Book』が出版された。これは半世紀の間、世界で最も重要な家畜動物となった[4]。

コメットはフェイヴァリットの一番有名な子ども。（犢）。

こうした系統繁殖を30年以上にわたって続けた[4]。


弟が生産したウシで、初期のショートホーン種の祖となったものとして4頭の名が記録されている。Duchess, Cherry, Strawberry, and Old Favourite。[12]

それと同じ頃、兄が入手したのがHubback[12]。

コメットは1810年に1000ギニーの値がついた。[12] これはウシ1頭の値段としては当時の最高記録で、1000ギニーに到達した最初の例である。[12]

しかし、この価格は、のちにコメットが伝説的な名種牛になったことで、その価格の妥当性が裏付けられた。[12]


コメット号は、家畜を近親交配することによる系統繁殖の好例として引き合いにだされることがある。[13]


たとえば、牛の乳を得るために、「乳量を多く(large milk production)」したいのか、「上質な乳(rich milk production)」を得たいのか、はっきりする必要がある。これらは両立できないものであり、方向性を明確に定め、求めようとする優れた形質を固定化するために近親交配を行うのである。[13]

コメットはすべてのショートホーン種の祖。[13]

サラブレッドでいうと、エクリプスとマッチエムとヘロドを合わせたのがコメットである。[13]



同時代の人々の多くは、コリング兄弟が「たまたま運が良かった」のだと考えていた。しかし「この分野での最高の権威[14]」であるヘンリー・ベリー牧師(Rev. Henry Berry)は当時から、コリング兄弟の成功は「入念でよく練られた計画」の賜物と評している[15][14]。

ショートホーン種の祖先は、地元の在来種、とくにダラム種、ギャロウェイ種だっただろうと推測されている[14]。なかでも名前が知られているのが「ハバック」号である[14]。

コリングは、ティーズウォーター種は古いショートホーン種の欠点を受け継いでいると考えていた[14]。

ダラム種よりも成長に時間がかかり、それでいてしばしば大きくなりすぎて体のバランスが悪くなる傾向があった。

牛乳は生産量こそやや低下したが、栄養価は大きく高まった。産肉量は大幅に増え、従来の肉牛の倍ぐらいになった。[14]

アメリカでは「イングランド種」の名で伝わり、高い能力をもつ乳牛として広まり、最も普及した品種となった。商業的には「ティーズウォーター種」「ダラム種」などの名前で売買されてもいる。[14]

コメットの仔の雌牛「アロイ号(Alloy)」は14歳にもかかわらず高値がついた。アロイ号はのちにショートホーン種で最も繁栄した牝系の祖となった。[14]


脚注

注釈

  1. ↑ 現在はタイン川を挟んで北岸がノース・シールズ([[en:North Shields|]])、南岸がサウス・シールズ([[en:South Shields|]])という2つのタウンに分かれている
  2. ↑ 正確には「聖ミカエルの日」、これは概ね9月29日ないし9月30日にあたる。

出典

  1. ↑ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 『Dictionary of National Biography』,Sidney Lee,Ernest Clarke,Smith, Elder & Co.,ロンドン,1901,ウィキソース版 Colling, Robert (DNB01) 2016年6月6日閲覧。
  2. ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 『Dictionary of National Biography』,Sidney Lee,Ernest Clarke,Smith, Elder & Co.,ロンドン,1901,ウィキソース版 Colling, Charles (DNB01) 2016年6月6日閲覧。
  3. ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 オクラホマ州立大学 Breeds of Livestock - Shorthorn Cattle 2016年6月6日閲覧。
  4. ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 『Evolution and the Genetics of Populations, Volume 3:Experimental Results and Evolutionary Deductions』p533-534「Inbreeding in Livestock」
  5. ↑ 『The general short-horned herd-book vol.2』p434
  6. ↑ 『The general short-horned herd-book vol.2』p508
  7. ↑ 『The general short-horned herd-book vol.2』p310
  8. ↑ 『The general short-horned herd-book vol.2』p433
  9. ↑ 『The general short-horned herd-book vol.2』p20
  10. ↑ 『The general short-horned herd-book vol.2』p57
  11. ↑ 『The general short-horned herd-book vol.2』p55
  12. ↑ 12.0 12.1 12.2 12.3 12.4 The Shorthorn Society of United Kingdom & Ireland History of the Breed 2016年6月6日閲覧。
  13. ↑ 13.0 13.1 13.2 13.3 『The Estes Formula for Breeding Stakes Winners』p26-28「The Problem of Inbreeding」
  14. ↑ 14.0 14.1 14.2 14.3 14.4 14.5 14.6 14.7 『Proceedings of the Annual Meeting』p259-267
  15. ↑ ベリー牧師は当時のイングランドの有力な畜産家だった。
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参考文献

  • http://www.ansi.okstate.edu/breeds/cattle/shorthorn
  • Evolution and the Genetics of Populations, Volume 3:Experimental Results and Evolutionary Deductions,Sewall Wright,University of Chicago Press,1984,Google Books版
  • The Estes Formula for Breeding Stakes Winners,Joseph Alvie Estes,The Russell Meerdink Company Ltd.,1998,Google Books版
  • Proceedings of the Annual Meeting,New York State Agricultural Society,1842,Google Books版
  • The general short-horned herd-book vol.2,George Coates,Shorthorn society,1822,Google Books版
  • 『品種改良の世界史　家畜編』,正田陽一／編,松川正・伊藤晃・楠瀬良・角田健司・天野卓・三上仁志・田名部雄一／著,悠書館,2010,ISBN 9784903487403
  • 『日本の家畜・家禽』秋篠宮文仁／著、学習研究社,2009,ISBN 9784054035065
  • 『世界家畜品種事典』社団法人畜産技術協会・正田陽一／編,東洋書林,2006,ISBN 4887216971
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