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「<ruby>Courbe la têre<rt>頭を垂れよ</rt></ruby>, <ruby>doux Sicambre<rt>心優しきシカンブル人よ</rt></ruby>」
 
「<ruby>Courbe la têre<rt>頭を垂れよ</rt></ruby>, <ruby>doux Sicambre<rt>心優しきシカンブル人よ</rt></ruby>」
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王たるもの他者には頭を下げるものではないのだが、クローヴィスは聖職者の前で神妙に頭を下げ、油を注がれた。これによりクローヴィスは聖なるフランス王となった。このあと数百年のあいだ様々なフランクの王たちが現れては消えるのだが、あるとき、戴冠の儀式のときに古のクローヴィスと同じように聖油の儀式を行うことを思いついた王がいた。それ以降、彼らは「フランクの王」ではなく「フランス王」となったのである。
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*『フランス史【中世】I』,[[ジュール・ミシュレ]]/著,桐村泰次/訳,[[論創社]],2016,ISBN 978-4-8460-1554-1(p147)

2018年4月16日 (月) 22:10時点における最新版

Sicambre シカンブル は、古代のドイツ、すなわちゲルマニアにいた原住民(ゲルマン人)の部族の名前である。

ドイツと言ったが、この名前はフランス史のなかで特別な意味をもっている。古代フランスの英雄で、のちのフランス王家の神祖、すなわちフランク王国の初代王クローヴィスに深い関わりがある。クローヴィスはもともと、北フランスからオランダにかけての沿岸部、すなわちフランドル地方のゲルマン人だった。この地域は今ではフランドルと呼ばれているけれど、古くはカンブレーと言った。クローヴィスはカンブレーの一部族の首長からどんどん国を拡げていき、ドイツからフランス全土に匹敵する王国を築いた。クローヴィス自身は異教徒だったのだが、奥さんがまずキリスト教に改宗し、その勧めに従って洗礼を受けた。そのときに、司教の聖レミギウスはこう言った。

Courbe la têre頭を垂れよ, doux Sicambre心優しきシカンブル人よ

王たるもの他者には頭を下げるものではないのだが、クローヴィスは聖職者の前で神妙に頭を下げ、油を注がれた。これによりクローヴィスは聖なるフランス王となった。このあと数百年のあいだ様々なフランクの王たちが現れては消えるのだが、あるとき、戴冠の儀式のときに古のクローヴィスと同じように聖油の儀式を行うことを思いついた王がいた。それ以降、彼らは「フランクの王」ではなく「フランス王」となったのである。