「扇ノ山」の版間の差分
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2015年10月9日 (金) 01:16時点における最新版
テンプレート:Infobox 山 扇ノ山(おうぎのせん)は、兵庫県美方郡新温泉町と鳥取県鳥取市、八頭郡八頭町、若桜町の境にある山である。標高1,309.9m。氷ノ山後山那岐山国定公園に属する。
目次
概要
- 南北に連なるなだらかな尾根筋と裾野に広がる広大な高原からなり、遠くから見ると扇のように見えることからこの名がある。冬から春にかけ、鳥取市からみるこの山の雪景色が扇を広げたように見えることからこの名前がついたと言われる説もある。
- 兵庫県側の北麓には畑ヶ平高原、霧ヶ滝渓谷、赤滝渓谷、上山高原と高原・渓谷が連なる。
- 鳥取県側には河合谷高原、広留野高原があり、山腹から発した袋川には雨滝、布引滝、筥滝などの滝がかかっている。
- 120万年前から40万年前にかけて活動した単成火山群で、新生代第四紀更新世に玄武岩質の溶岩を流出した。
- 山頂自体は基盤岩でつくられており、火山とは言えない。山頂に火口もないが、兵庫県側の山頂周辺には多くの単成火山がある。山頂北側の大ヅッコ(1,273m)、上山高原の上山(946m)、広留野高原北端の円錐台形の小山(930m)はスコリア、火山礫などの噴出物が火口のまわりに降り積もってできた砕屑丘である。したがって扇ノ山火山と呼称するよりは、扇ノ山単成火山群という呼称が適当である。
- 扇ノ山の溶岩流が作った玄武岩の柱状節理を山腹の各所で観察することができ、周辺の地層からは紡錘状火山弾も見つかる。
改良
概要
大山と並ぶ中国・近畿地方の代表的な火山[1]。扇ノ山は鳥取県東部を代表する山の一つである[2]。 かつては航海の目印にもされていた[3]。
山頂には二等三角点「扇ノ山」(標高1309.97m)[4]。
氷ノ山後山那岐山国定公園の北の端をなしており[5][4][6]、特に山スキーで知られている[1]。
名称
扇ノ山は鳥取平野からみえる代表的な高山である。鳥取県側から見た扇ノ山の山容は、山頂からなだらかな尾根筋が南北両翼に連なっており、扇を広げた姿に見立ててこの名がついたと考えられている[5][1][7]。古くは「扇仙」、「扇嶽」などの異表記がある[5]。
東の兵庫県側からは山容は見えず、主に「畑ヶ平」(はたけがなる)と呼ばれていた(畑ヶ平高原参照)[1]。
地形・地質
大山火山系[6]に分類され、第三紀の終わり、おおむね鮮新世から第四紀の更新世にかけて活動した火山である。ただし火山としては珍しく、もともと中新世に形成された緑色凝灰岩を中心とする堆積岩が基盤で、鮮新世にこの基盤を突き破って火山活動が起きた[5][6][7]。このとき形成されたのは主に流紋岩や安山岩である[6]。その上に凝灰岩の角礫と更新世の噴火による安山岩や安山岩が層を成している[5][6][7][8][4]。
山頂付近には「穴ヶ原」と呼ばれる窪地地形があり、かつての火口と考えられている[5][6]。
火山としては比較的新しいため、特に標高800m以上では浸食がまだ進んでおらず、火山砕屑岩がみられ、四方になだらかな溶岩台地が残っていて高原状になっている。これらの高原の辺縁部は浸食を激しく受けており、様々な滝を作り、深いV字渓谷が形成されている[5][4]。
- 主な周辺地形
- 河合谷高原 - 辺縁部に雨滝(日本の滝百選)などの「四十八滝」がある。北には天神池・天神滝があり、蒲生川へと続いている[4]。
- 広留野高原 - 南の来見野渓谷には大鹿滝(日本の自然百選[4])がある[5]。
- 上山高原 - 北に桂の滝、シワガラの滝、布滝など。南に霧ヶ滝渓谷があり、霧ヶ滝などがある[5]。
- 畑ヶ平高原 - 上山高原から霧ヶ滝渓谷を経た南側に広がる。辺縁部には赤滝渓谷がある[5]。
火山としては、かつては「楯状火山[8][9]」(アスピーデ[6][4])ないし「鐘状火山[8]」「死火山」に分類されていたが、近年はこうした用語・分類自体が用いられない。(火山#火山の分類参照)
菅野湿原
菅野湿原は扇ノ山の北西山麓にあるミズゴケ中心の湿原で、天然記念物に指定されている。南と北には千代川の支流による浸食谷があるが、菅野湿原のあたりは標高400m前後の台地となって侵食に取り残されている。湿原はその台地の中央付近の窪地状の一帯にある[10][6]。
湿原の地層は厚さ5m超の泥炭層と大山火山灰層が積み重なっていて、5mの泥炭層に含まれる花粉の分析から、このあたりの過去1万年間の気候変動を知る手がかりになる[10]。
地層の深さ | おおよその年代 | 代表的な花粉 | 推定される気候等 |
0-1m | 1500年前 | マツ、イネ科、ソバ | 気候が大きく変わり、ヒトの生活利用の影響がある |
1-2.5m | 4000年前 | ブナ、ミズナラ、スギ | 涼しくなり、植物が増える |
2.5-3m | 不明 | 花粉がほとんどみられない時代 | 植生不明 |
3-5m | 9000-8000年前 | ツガ、ミズメ | やや暖かくなり、後氷期へ移行 |
5m- | 12000-10000年前 | ブナ、ミズナラ、スギ | 現在よりも400-500mほど森林帯が低い |
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雄大なスロープももつ火山[7]。 北方に扇型に裾野を広げている[7]。
火山
角谷ではヒスイを産する[4]。
この一帯で最も雪が多い[1]。
緩やかな斜面で、男性的な大山とは対照的[1]。
なだらかな斜面が長く続き、山頂付近から山麓まで平均17度のゲレンデとなる[1]。
周辺の特徴的地形
来見野渓谷(大鹿滝)は日本の自然百選、雨滝は日本の滝百選[4]。
河合谷高原
- 河合谷高原参照。
広留野高原
上山高原
畑ヶ平高原
自然
植物
渓谷部のトチノキ、サワグルミ、カツラが自然林[6]。
自然林としては、ブナ、カエデ、ミズナラ、スギが残されている。明治以降の開発によってブナ林は大きく損なわれたが、南斜面の標高が高い部分にはブナの原始林がある。北斜面ではブナの植林が行われている[5]。
このほかではチシマザサが代表的な植物で、鳥取県内では唯一タケシマランが自生している[5][6]。
動物
扇ノ山の一帯はツキノワグマ、イヌワシ、ギフチョウの生息地になっている[5]。河谷にはハコネサンショウウオが生息[6]。
登山
大部分のエリアが氷ノ山後山那岐山国定公園に指定されている[5]。公園の北限[4][6]。
山頂には三角点がある[5]。
谷が深く、繁茂するチシマザサに阻まれて、かつては冬の雪山登山しか不可能だった[4][3][1]。
また、交通が不便でヒュッテなども整備されておらず、宣伝もされていなかった。一方、近くの氷ノ山のほうは大山に次ぐ鳥取県第2位の標高がりながら、登りやすい山で広く宣伝されていた。こうしたことも、扇ノ山の夏季登山が行われなかった理由になっていた[1]。
なだらかな斜面のため、さまざまな登山路がある[5][4]。主要なルートは北の河合谷高原経由で、中国自然歩道になっている[5]。河合谷高原には「水とのふれあい広場」が設けられており、ここから約1時間で山頂に至る[5]。
山頂には1994年に木造2階建ての避難小屋が建てられた[5]。
この小屋の2階からは、妙見山、鉢伏山、氷ノ山、東山、沖ノ山を一望し、西には大山を見ることができる。北は日本海、西は鳥取平野を望み、東は岸田川の渓谷を見下ろす[5][6]。
名称
脚注・出典
注釈
出典
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 『山と高原』(232巻)p50-51 西村公夫「関西の山々 スキーのメッカ扇ノ山」
- ↑ 『鳥取県境の山』p12「扇ノ山」
- ↑ 3.0 3.1 『増補 大日本地名辞書』第三巻 中国・四国p304
- ↑ 4.00 4.01 4.02 4.03 4.04 4.05 4.06 4.07 4.08 4.09 4.10 4.11 『日本の山1000』p601
- ↑ 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 5.11 5.12 5.13 5.14 5.15 5.16 5.17 5.18 5.19 『新日本山岳誌』p1451-1452
- ↑ 6.00 6.01 6.02 6.03 6.04 6.05 6.06 6.07 6.08 6.09 6.10 6.11 6.12 『日本大百科全書3』p808
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 『日本地誌 第16巻 中国・四国地方総論、鳥取県・島根県』p198
- ↑ 8.0 8.1 8.2 『日本地誌 第16巻 中国・四国地方総論、鳥取県・島根県』p224
- ↑ 『図説日本文化地理大系4 中国1』p276
- ↑ 10.0 10.1 『鳥取県史 第1巻 原始古代』p49-50
<references>
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- 鳥取県庁
- 『図説日本文化地理大系4 中国1』,浅香幸雄・編,小学館,1962
- 『日本地誌 第16巻 中国・四国地方総論、鳥取県・島根県』日本地誌研究所・編,二宮書店,1977
- 『鳥取県大百科事典』,新日本海新聞社鳥取県大百科事典編纂委員会・編,新日本海新聞社,1984
- 『鳥取県境の山』,日本山岳会山陰支部・山陰の山研究委員会・編,日本山岳会山陰支部・刊,1999
- 『鳥取県史 第1巻 原始古代』,鳥取県,1972
- 『ふるさとの文化遺産 郷土資料事典31 鳥取県』,ゼンリン,人文社,1998
- 『鳥取県の地名(日本歴史地名大系)』,平凡社,1992
- 『日本地名大辞典 31 鳥取県(角川日本地名大辞典)』,角川書店,1982,ISBN 978-4040013107
- 『増補 大日本地名辞書』第三巻 中国・四国,吉田東伍・著,冨山房,1900,1970
- 『新日本山岳誌』日本山岳会・編著,2005,ISBN 978-4779500008
- 『日本山名事典』三省堂.2011,ISBN 978-4-385-15428-2
- 『日本の山1000』山と渓谷社,1992,1999,ISBN 4-635-09025-6
- 『山と高原』(232巻),朋文堂,1956
- 『日本大百科全書3』,秋庭隆・編,小学館,1985,1995(二版第二刷)
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