最後の戦い

提供: Test Wiki
2020年2月14日 (金) 00:52時点におけるJulyfestival (トーク | 投稿記録)による版

移動: 案内、 検索

テンプレート:工事中 テンプレート:Otheruses テンプレート:Infobox Film

最後の戦い（原題：Le Dernier Combat[注 1]）は、リュック・ベッソン監督による1983年の映画作品[2]。

作品のあらまし

リュック・ベッソン監督（1959年 - ）のデビュー作品[3]。ベッソン監督はパリとハリウッドで映画の助手を務めながら映画作りを学び、24歳で初めて発表した長編が本作である[3]。

白黒作品で、作中には台詞が一切ない[2][4][注 2]。これは大気汚染によって、声帯の機能を喪失して発語ができなくなっている、という設定によるもの[1][4]。

制作前夜

製作会社の創設

1959年生まれのリュック・ベッソンは、15歳の頃から映画に興味をもち[5]、18歳で本気で映画の道を志すことを決めた[6]。まもなく『Le Pétite Siren[注 3]』という短編を8,000フランで完成させた[6][注 4]。

フランスでは、文化省の中央映画庁（CNC,Centre National du Cinéma）が映画産業への補助金を管轄していた[7]。同庁に登録するためには法人格が必要で、ベッソンは『Le Pétite Siren』を登録するため一人で映画製作会社「ル・フィルム・デュ・ルー」(Les Film du Loup)をたちあげた[7]。ベッソンは、親戚の遺産を相続した友人から5万フランを借り、これを担保としてUBP銀行（Union Bancaire Privée）へ映画製作のための融資を申し込んだが、にべもなく断られた[7][注 5]。

その後、ベッソンはパリで映画関連の職に就きながら[注 6]、短編や広告、記録映像などの製作にも係わり[9]、はじめは助手として、のちに第2助監督を任されるようになった[注 7][8][10]。

主要スタッフとの出会い

この頃ベッソンは、映画・演劇・音楽活動をしているピエール・ジョリヴェ（Pierre Jolivet）という友人を得た[10]。ジョリヴェは自身のレコードの売り上げが芳しくないことを悩んでおり、ベッソンはミュージック・ビデオ製作を提案した[12]。1980年に16ミリフイルムで撮影したこのビデオクリップは、世に出たものとしてはベッソンの初作品となった[8][12]。そして、撮影にギタリストとして参加していたエリック・セラと懇意になった[8]。

1981年には、ラファエル・デルパール監督の『Les bidasses aux grandes manoeuvres』で助監督となり、出演していたジャン・レノと知遇を得た[13]。また同じ年、TV向けのフォーミュラ2の記録映像の仕事に携わり、撮影のカルロ・ヴァリーニや編集のソフィー・シュミットと知り合った[13][14]。

『最後から二番目の男』

この頃までに、ベッソンは自身の長編デビュー作として『サブウェイ』の構想をおおよそかためていた[13]。ベッソンの作成した脚本第一稿をジョリヴェと共同で修正し、さらに別のシナリオライターによる修正を経て脚本の完成にこぎつけていた[14]。しかし予算確保の問題があり[注 8]、『サブウェイ』を棚上げして、短編を作ることにした[13]。これが『最後の戦い』の原型となる『最後から二番目の男』（原題：「L'avant Dernier」）である[13]。

『最後から二番目の男』の撮影は35ミリフイルム・シネスコサイズで行い、8分の短編に仕上げた[13]。台詞はなく、音楽はエリック・セラがつけた[13]。主演はピエール・ジョリヴェとジャン・レノである[13][注 9]。その内容は、偏屈な男性医師（ピエール・ジョリヴェ）が、壊滅した世界で唯一生き残った女性を、乱暴者（ジャン・レノ）から守るため、監禁している、というものだった[13]。完成した作品を1981年のアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭短編部門に上梓したものの、何の賞も得られなかった[15][16]。

製作

この『最後から二番目の男』を長編化したのが『最後の戦い』である[17][16]。

脚本

ストーリーは『最後から二番目の男』を基にして、リュック・ベッソンとピエール・ジョリヴェが共同で長編に脚本化した[16]。この脚本はわずか20ページほどのもので、10日で完成したという[16]。大異変によって荒廃した世界を舞台や、故郷への帰還をめざす主人公、生き残った貴重な女性を監禁しつつ保護している「少々おかしい」医師というキャラクター像は『最後から二番目の男』を発展させたものである[16]。

資金確保の問題

『最後の戦い』製作には、総額およそ350万フランの予算を見込んだ[18]。

フランスの大手映画会社ゴーモンのドゥニ・シャトーという人物は、『サブウェイ』の企画が頓挫した頃から、ピエール・ジョリヴェを評価していた数少ない人物だった[16]。ベッソンとジョリヴェは『最後の戦い』の構想をシャトーのもとへ持ち込んだ[16]。シャトーは、短期間に新たな映画構想を持ち込んできたことに驚きつつも、ゴーモン社へ『最後の戦い』製作へ出資するよう働きかけたという[16]。しかしゴーモン社はこれを却下した。ゴーモン社としての支援ができなくなった後も、シャトーは個人として、映画完成の暁には上映館を確保するよう約束した[16]。

ベッソンとジョリヴェは、ほかの製作会社・配給会社へも手当たり次第に交渉にでかけたが、全て出資を断られた[16]。あるとき、配給業を営むと称する「怪しげな」人物に出会うと、20万フランでフランス国内での『最後の戦い』配給を請け負うと持ちかけられた[18]。ベッソンらはこの人物と契約したが、この人物はまもなくこの契約を無断で第三者へ50万フランで転売してしまい、30万フランの利ざやを稼いで逃げた[18]。そのうえ、この人物は実際にはパリ地区・ボルドー地区の配給権をもっていなかった[18]。ベッソンらはこうした事情を知らないまま、この20万フランの契約金を支払うための銀行融資を受けるべく、中央映画庁へ信用保証の申請を行ったのだが、却下されてしまった[18]。却下の理由は、この人物には実際の配給能力がなく、詐欺師であるというものだった[18]。結局ベッソンらには、20万フランの負債だけが残ることになった[18]。

ベッソンらは、映画会社をあきらめ、経済力のある個人を訪ねて出資を頼んで回ることにした[16]。そのうち見つかったのが、旅行代理店経営者のコンスタンタン・アレグザンドロフ（Constantin Alexandrov）である[16]。ベッソンらがアレグザンドロフに脚本を読ませ、予告編として『最後から二番目の男』を見せたところ、50万フランの出資を約束してくれた[16]。このまとまった資金のあてがついたことで、『最後の戦い』製作が具体的に進むことになった[18]。

ほかに出資をした者としては、編集のソフィー・シュミットの伝手でみつけたエリック・プルイエという人物がいる[16]。プルイエは自動車事故に遭って保険金を受け取っており、その一部を『最後の戦い』製作に出資することを約束した[18]。このほか、リュック・ベッソンの義父も少々出資をしたという[16]。

総額350万フランのあてはないが、アレグザンドロフの50万フランという当座の資金の目処が立ったことで、ベッソンらはあらためて銀行へ融資を申し込んだ[18]。しかしクレディ・リヨネ銀行は、『サブウェイ』の企画が頓挫した際に200フランを滞納していたせいで謝絶された[18]。UBP銀行は融資を認めたが、その額はわずかに1500フランだったという[18]。ベッソンらが増額を求めて食い下がると、最終的に2500フランまでは融資を承諾した[18]。予算からするとあまりに端金ではあったものの、資金の乏しいベッソンらはこの融資を受けることにした[18]。

こうしてベッソンらは総予算350万フランのうち、当座の資金として70万フランほどの目処を立てたことで、映画撮影に着手することにした[18]。だが資金の大半を占めるアレグザンドロフからの50万フランは、アレグザンドロフが海外出張中のために振り込みが遅れ、開始から1週間もすると早速資金難に陥った[18]。このため、ジョリヴェの友人ミシェル・ド・ブロカが、つなぎ資金の貸付を図ってくれたという[18]。





『サブウェイ』の製作が頓挫した頃から、 リュック・ベッソンの理解者として





制作費は、政府からの借入金1500フランを含め、総額5万フランだった[19]。映像は70ミリフイルム・スコープサイズ・モノクロで作成された[17]。音声はドルビーSRが採用されている[17]。撮影は1982年に行われた[17]。

フランスでの公開とその後の影響

『最後の戦い』は、1983年1月のアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭で一般公開に先駆けて披露、審査員特別賞と批評家賞を受賞した[20]。このときの審査員にはジョージ・ミラー（『マッドマックス』シリーズ監督）やアラン・J・パクラ（『大統領の陰謀』『ソフィーの選択』などの監督）、ジャン＝ジャック・アノー（『ブラック・アンド・ホワイト・イン・カラー』『人類創世』など）の名がある[17]。これは、国際的評価を得たフランス製SF映画としては、1902年の『月世界旅行』（ジョルジュ・メリエス（1861-1938）監督）以来の快挙となった[17]。

フランスでは1983年4月6日から公開された[21]。観客動員数は57,000人となった[19]。世界各地で14の賞を受賞した[19]。

あらすじ

気候変動の結果、文明が荒廃した近未来が舞台[2][4]。生き残った4人の男が、1人の女をめぐって戦う[2]。

評価

登場人物の台詞を排除し、映像だけで語る作品である[2]。高い評価を受けた[3]。

まだ若いリュック・ベッソン監督の初作品であり、「才気がうかがえる野心の込もった力作」（『ぴあ』[2]）、「奇をてらったというよりはひねくれてるとしか思えない造りにも覇気が感じられる[1]」（allcinema）と評されている。

脚注

注釈

  1. ↑ アメリカでの公開名は「The Final Combat[1]」、「The Last Battle」。
  2. ↑ 効果音やBGMはある。
  3. ↑ ベッソンは18歳のとき、徴兵により、アルプス山中で1年間の兵役に任に就いた[7]。映画作りを目指すベッソンにとってこの1年間は完全に「無駄」な時間であったという[7]。自分の夢を叶えるためにはまったく無益と思われる軍務に辟易したベッソンは、映画作りをしたいという衝動を抑えきれず、1週間の休暇を利用して『Le Pétite Siren』を撮影したのである[7]。この作品はモノクロの10分の短編[6]。夜の海辺で女性が男を海遊びに誘う[6]。その後、その男は帰ってこない[6]。これが何度か繰り返される[6]。この女に惹かれた男性が、もしも自分の愛が本物であるならば人魚が迎えに来るはずだと信じ、重りを携えて海の底に向かう[6]。本作は後の『グラン・ブルー』の原型とされている。ただしこの作品は世に出ず、「幻のデビュー作」となった[8]。なお「Siren」はギリシア神話のセイレーンのことだが[7]、「Le Petite Siren」は、一般的には「人魚姫」と和訳される。
  4. ↑ ベッソン本人はこの作品を「どうしようもない駄作」と述懐している[7]。
  5. ↑ ベッソンはこのときのことを根にもっており、映画監督して有名になったあとも、当時の窓口の「大まぬけ」あてに、新作映画の「非招待状」を送ったという[7]。
  6. ↑ 始めは書類のコピー係や食事の配達をしていたという[9]。最初期に「コピー取り」として参加した作品が、フランスで撮影中の『007 ムーンレイカー』だった[9][10]。
  7. ↑ この間、2か月ほどの短期間ではあるが、ベッソンはハリウッドにも渡って映画産業の下働きをしている[9][11]。ここでも主な仕事はコピー取りだったという[9]。
  8. ↑ 製作費を提供するという人物がいたのだが、実際に撮影に入る直前になって約束を反故にしたという[14]。ベッソンは、後になって考えれば、当時の自分たちはまだ『サブウェイ』のような大掛かりな作品をつくるには経験不足であり、計画の頓挫は「かえってよかった」と述懐する[14]。
  9. ↑ フランソワ・クリュゼにも出演を依頼したが、スケジュールが合わないといって「丁重に」断られたという[15]。

出典

  1. ↑ 1.0 1.1 1.2 株式会社スティングレイ、allcinema、最後の戦い。2020年1月29日閲覧。
  2. ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 『ぴあシネマクラブ2 外国映画編 2000-2001』、p446「最後の戦い」
  3. ↑ 3.0 3.1 3.2 『ぴあシネマクラブ2 外国映画編 2000-2001』、p1335「リュック・ベッソン」
  4. ↑ 4.0 4.1 4.2 キネマ旬報、キネマ旬報映画データベース、最後の戦い。2020年1月29日閲覧。
  5. ↑ 『Filmmakers (1) リュック・ベッソン』小林雅明「リュック・ベッソン・ワールド 2 リュック・ベッソン・ストーリー」p27
  6. ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 『Filmmakers (1) リュック・ベッソン』小林雅明「リュック・ベッソン・ワールド 2 リュック・ベッソン・ストーリー」p28
  7. ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 7.7 7.8 『最後の戦い　リュック・ベッソンの世界』p14
  8. ↑ 8.0 8.1 8.2 8.3 『Filmmakers (1) リュック・ベッソン』小林雅明「リュック・ベッソン・ワールド 2 リュック・ベッソン・ストーリー」「ベッソン、映画を撮る」p34
  9. ↑ 9.0 9.1 9.2 9.3 9.4 『Filmmakers (1) リュック・ベッソン』小林雅明「リュック・ベッソン・ワールド 2 リュック・ベッソン・ストーリー」p29
  10. ↑ 10.0 10.1 10.2 『最後の戦い　リュック・ベッソンの世界』p19
  11. ↑ 『最後の戦い　リュック・ベッソンの世界』p18
  12. ↑ 12.0 12.1 『最後の戦い　リュック・ベッソンの世界』p21
  13. ↑ 13.0 13.1 13.2 13.3 13.4 13.5 13.6 13.7 13.8 『Filmmakers (1) リュック・ベッソン』小林雅明「リュック・ベッソン・ワールド 2 リュック・ベッソン・ストーリー」「ベッソン、映画を撮る」p35
  14. ↑ 14.0 14.1 14.2 14.3 『最後の戦い　リュック・ベッソンの世界』p25
  15. ↑ 15.0 15.1 『最後の戦い　リュック・ベッソンの世界』p24
  16. ↑ 16.00 16.01 16.02 16.03 16.04 16.05 16.06 16.07 16.08 16.09 16.10 16.11 16.12 16.13 16.14 『最後の戦い　リュック・ベッソンの世界』p30
  17. ↑ 17.0 17.1 17.2 17.3 17.4 17.5 『Filmmakers (1) リュック・ベッソン』小林雅明「リュック・ベッソン・ワールド 2 リュック・ベッソン・ストーリー」「ベッソン、映画を撮る」p36
  18. ↑ 18.00 18.01 18.02 18.03 18.04 18.05 18.06 18.07 18.08 18.09 18.10 18.11 18.12 18.13 18.14 18.15 18.16 『最後の戦い　リュック・ベッソンの世界』p31
  19. ↑ 19.0 19.1 19.2 『Filmmakers (1) リュック・ベッソン』小林雅明「リュック・ベッソン・ワールド 2 リュック・ベッソン・ストーリー」「ベッソン、映画を撮る」p37
  20. ↑ 株式会社スティングレイ、allcinema、１９８３年 第１１回 アボリアッツ・ファンタスティック映画祭。2020年2月1日閲覧。
  21. ↑ 『Filmmakers (1) リュック・ベッソン』第4部（巻末）p3-4「最後の戦い」
引用エラー: <references> で定義されている <ref> タグ (name="FM1-IV-3") は、先行するテキスト内で使用されていません。

書誌情報

外部リンク

テンプレート:リュック・ベッソン

「http://enseiki.sakura.ne.jp/test-wiki/w/index.php?title=最後の戦い&oldid=30065」から取得