扇ノ山
テンプレート:Infobox 山 扇ノ山(おうぎのせん)は、兵庫県美方郡新温泉町と鳥取県鳥取市、八頭郡八頭町、若桜町の境にある山である。標高1,309.9m。氷ノ山後山那岐山国定公園に属する。
目次
概要
- 南北に連なるなだらかな尾根筋と裾野に広がる広大な高原からなり、遠くから見ると扇のように見えることからこの名がある。冬から春にかけ、鳥取市からみるこの山の雪景色が扇を広げたように見えることからこの名前がついたと言われる説もある。
- 兵庫県側の北麓には畑ヶ平高原、霧ヶ滝渓谷、赤滝渓谷、上山高原と高原・渓谷が連なる。
- 鳥取県側には河合谷高原、広留野高原があり、山腹から発した袋川には雨滝、布引滝、筥滝などの滝がかかっている。
- 120万年前から40万年前にかけて活動した単成火山群で、新生代第四紀更新世に玄武岩質の溶岩を流出した。
- 山頂自体は基盤岩でつくられており、火山とは言えない。山頂に火口もないが、兵庫県側の山頂周辺には多くの単成火山がある。山頂北側の大ヅッコ(1,273m)、上山高原の上山(946m)、広留野高原北端の円錐台形の小山(930m)はスコリア、火山礫などの噴出物が火口のまわりに降り積もってできた砕屑丘である。したがって扇ノ山火山と呼称するよりは、扇ノ山単成火山群という呼称が適当である。
- 扇ノ山の溶岩流が作った玄武岩の柱状節理を山腹の各所で観察することができ、周辺の地層からは紡錘状火山弾も見つかる。
改良
扇ノ山は鳥取県東部を代表する山の一つである[1]。
楯状火山[2]。(死火山とする文献もあるが、近年は「死火山」という用語を使わない。)
雄大なスロープももつ火山[3]。
北方に扇型に裾野を広げている[3]。
かつては航海の目印にもされていた[4]。
山頂には二等三角点「扇ノ山」(標高1309.97m)[5]。
火山
火山地形だが、普通の火山とは違い、基盤は新生代第三紀の堆積岩[6]。 標高800m以上の部分は、その上にさらに薄く溶岩と火山砕屑岩で覆われている[6]。 火山の活動期が新しく、侵食は余り進行していない[6]。数多くの火山地形を伴っている[5]。 このため800m以上の中腹には傾斜のゆるい高原状の地形が残る[6]。 山頂付近には窪地があり「穴ヶ原」と呼ばれている。この窪地は火口とみなされている[6]。 溶岩流の辺縁部は侵食が進んで深いV字谷を形成し、赤滝、霧ヶ滝、大鹿滝などがある[6]。
扇ノ山の基盤は第三系砂岩・泥岩で、この侵食平坦面の上に角礫凝灰岩と安山岩質溶岩の互層が成層して火山帯を構成している[3]。 洪積世の鐘状ないし楯状火山[7]。
第四紀更新世に噴出した玄武岩が主体[5]。
古い文献では「楯状火山[7][2]」「鐘状火山[7]」「死火山」と説明されているが、近年はこうした用語・分類自体が用いられない。(火山#火山の分類参照)
アスピーデ型[5]。
周辺の特徴的地形
来見野渓谷(大鹿滝)は日本の自然百選、雨滝は日本の滝百選[5]。
河合谷高原
- 河合谷高原参照。
広留野高原
上山高原
畑ヶ平高原
菅野湿原
菅野湿原は扇ノ山の北西山麓にある。南と北には千代川の支流による浸食谷があるが、菅野湿原のあたりは標高400m前後の台地となって侵食に取り残されている。湿原はその台地の中央付近の窪地状の一帯にある。ミズゴケを中心とした湿原で、天然記念物[8]。
湿原の地層は厚さ5m超の泥炭層と大山火山灰層が積み重なっていて、5mの泥炭層に含まれる花粉の分析から、このあたりの過去1万年間の気候変動を知る手がかりになる[8]。
地層の深さ | おおよその年代 | 代表的な花粉 | 推定される気候等 |
0-1m | 1500年前 | マツ、イネ科、ソバ | 気候が大きく変わり、ヒトの生活利用の影響がある |
1-2.5m | 4000年前 | ブナ、ミズナラ、スギ | 涼しくなり、植物が増える |
2.5-3m | 不明 | 花粉がほとんどみられない時代 | 植生不明 |
3-5m | 9000-8000年前 | ツガ、ミズメ | やや暖かくなり、後氷期へ移行 |
5m- | 12000-10000年前 | ブナ、ミズナラ、スギ | 現在よりも400-500mほど森林帯が低い |
山麓に菅野湿原[8]。 菅野湿原では5m以上の泥炭層をはさんで大山中部火山灰層を不整合に覆って発達しており、そこの花粉の分析で後氷期の気候変遷の分析が期待されている[8]。詳細は文献参照
自然
植物
自然林としては、ブナ、カエデ、ミズナラ、スギが残されている。明治以降の開発によってブナ林は大きく損なわれたが、南斜面の標高が高い部分にはブナの原始林がある。北斜面ではブナの植林が行われている[6]。
このほかではチシマザサが代表的な植物で、鳥取県内では唯一タケシマランが自生している[6]。
動物
扇ノ山の一帯はツキノワグマ、イヌワシ、ギフチョウの生息地になっている[6]。
登山
大部分のエリアが氷ノ山後山那岐山国定公園に指定されている[6]。公園の北限[5]。
山頂には三角点がある[6]。
谷が深く、チシマザサが繁茂するために、かつては冬の雪山の登山しか不可能だった[5][4]。
なだらかな斜面のため、さまざまな登山路がある[6][5]。主要なルートは北の河合谷高原経由で、中国自然歩道になっている[6]。河合谷高原には「水とのふれあい広場」が設けられており、ここから約1時間で山頂に至る[6]。
山頂には1994年に木造2階建ての避難小屋が建てられた[6]。
この小屋の2階からは、妙見山、鉢伏山、氷ノ山、東山、沖ノ山を一望し、西には大山を見ることができる。北は日本海、西は鳥取平野を望み、東は岸田川の渓谷を見下ろす[6]。
名称
扇仙、扇嶽などの異表記がある[6]。
脚注・出典
注釈
出典
- ↑ 『鳥取県境の山』p12「扇ノ山」
- ↑ 2.0 2.1 『図説日本文化地理大系4 中国1』p276
- ↑ 3.0 3.1 3.2 『日本地誌 第16巻 中国・四国地方総論、鳥取県・島根県』p198
- ↑ 4.0 4.1 『増補 大日本地名辞書』第三巻 中国・四国p304
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 5.6 5.7 『日本の山1000』p601
- ↑ 6.00 6.01 6.02 6.03 6.04 6.05 6.06 6.07 6.08 6.09 6.10 6.11 6.12 6.13 6.14 6.15 6.16 6.17 『新日本山岳誌』p1451-1452
- ↑ 7.0 7.1 7.2 『日本地誌 第16巻 中国・四国地方総論、鳥取県・島根県』p224
- ↑ 8.0 8.1 8.2 8.3 『鳥取県史 第1巻 原始古代』p49-50
<references>
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- 鳥取県庁
- 『図説日本文化地理大系4 中国1』,浅香幸雄・編,小学館,1962
- 『日本地誌 第16巻 中国・四国地方総論、鳥取県・島根県』日本地誌研究所・編,二宮書店,1977
- 『鳥取県大百科事典』,新日本海新聞社鳥取県大百科事典編纂委員会・編,新日本海新聞社,1984
- 『鳥取県境の山』,日本山岳会山陰支部・山陰の山研究委員会・編,日本山岳会山陰支部・刊,1999
- 『鳥取県史 第1巻 原始古代』,鳥取県,1972
- 『ふるさとの文化遺産 郷土資料事典31 鳥取県』,ゼンリン,人文社,1998
- 『鳥取県の地名(日本歴史地名大系)』,平凡社,1992
- 『日本地名大辞典 31 鳥取県(角川日本地名大辞典)』,角川書店,1982,ISBN 978-4040013107
- 『増補 大日本地名辞書』第三巻 中国・四国,吉田東伍・著,冨山房,1900,1970
- 『新日本山岳誌』日本山岳会・編著,2005,ISBN 978-4779500008
- 『日本山名事典』三省堂.2011,ISBN 978-4-385-15428-2
- 『日本の山1000』山と渓谷社,1992,1999,ISBN 4-635-09025-6
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