どうする完成版
目次
冒頭文
「ブライアン・ボイターノならどうする?」(What Would Brian Boitano Do?)は1999年公開の劇場映画『サウスパーク/無修正映画版』の挿入歌。作曲はマーク・シャイマン、作詞は『サウスパーク』シリーズを手掛けたトレイ・パーカー。歌詞では、オリンピックフィギュアスケートのブライアン・ボイターノが、様々な馬鹿げた状況のもとでスーパーヒーローとして描かれる。このシュールな曲の題名は、福音派の標語「What Would Jesus Do」(神イエスならどうする?)を茶化したものである。
- Brian Boitanoはカタカナでブライアン・ボイタノ[1]と転記されるが、本項では曲名の公式和訳に基づき「ボイターノ」表記とする。
作品とボイターノ
ボイターノの経歴
ブライアン・ボイターノはアメリカ合衆国のフィギュアスケート選手で、1982年にアメリカ人としては史上初のトリプルアクセルを成功させ、1988年カルガリーオリンピックのフィギュアスケート競技で金メダルを獲得した人物である。その後はプロに転向して映画やショーに出演するかたわら、1994年リレハンメルオリンピックにも出場、1996年には世界フィギュアスケート殿堂入りした。また、1998年長野オリンピックで銀メダルを獲ったミシェル・クワンのメンタルトレーナーとしても知られる[2][3]。
しかし、ブライアン・ボイターノが「カルト的人気」を確立したのは、スケートでの実績によるというよりも、『サウス・パーク』に登場したことに由来するという[2]。
「ジーザス対サンタ」で初登場
ブライアン・ボイターノのキャラが『サウス・パーク』シリーズに初登場したのは、1995年『The Spirit of Christmas』の「Jesus vs. Santa」(『スピリット・オブ・クリスマス[4]』「ジーザス対サンタ」)であり、これは同シリーズが1997年にTV放映されるより前に制作されたものである[2]。そしてこれは、同シリーズに実名で登場する最初の有名人だった。
1992年の「Jesus vs. Santa」は『サウス・パーク』の原型で、コロラド大学ボルダー校在学中だったトレイ・パーカーとマット・ストーンが制作した『The Spirit of Christmas』「Jesus vs. Frosty」(『スピリット・オブ・クリスマス[5]』「ジーザス対フロスティー」)という短編アニメーション作品の第2弾である[4]。
作中、クリスマスをめぐって、「自分の誕生日のお祝いだ」と主張するジーザスと、「子どもたちにプレゼントを配る日だ」と主張するサンタクロースが争う。その戦いは、ゲーム「モータルコンバット」さながらで、作中の様々な登場人物が巻き添えになって死亡する[4][注 1]。
ジーザスとサンタの双方が主人公たちに向かって「自分に味方しろ」と求めてくるのに対し、スタンは困って「(こんなとき)ブライアン・ボイターノならならどうする?」と自問する。すると「氷上の天使のように[2]」ブライアン・ボイターノが出現してアドバイスを与え、それによってジーザスとサンタクロースは和解する[2]。
エピソード4「愛犬スパーキーのおホモだち」
ブライアン・ボイターノは、1997年放映のTV版サウスパーク(第1シーズン)第4話「愛犬スパーキーのおホモだち)」(原題:Big Gay Al's Big Gay Boat Ride)に登場した[6]。作中、「ビッグ・ゲイ・アル」のもとで開催されているゲイ・パーティのなかで、ブライアン・ボイターノは「We Are Gay」という歌を歌いながらアイス・スケートをしている[7][注 2]。
映画版での再登場
歌の内容
この曲のなかで、ブライアン・ボイターノはアクション・ヒーローとして描かれている。なぜならブライアン・ボイターノは「どんな野郎にも屈しない」(he doesn't take shit from anybody)のだから。[注 3]
映画のエンドロールでは、トレイ・パーカーとマット・ストーンのバンドDVDAによる「ブライアン・ボイターノならどうする?」のフォークパンク(en:folk punk)風のバージョンが流れる。通常版よりもアップテンポかつエネルギッシュ・オルタネイティヴなアレンジになっている。ヘヴィメタ風のBメロでは、ブライアン・ボイターノの激辛チキンへの欲求は無限である、と明かされる。
本人の反応
公開当時の逸話
ブライアン・ボイターノは、制作者のトレイ・パーカーやマット・ストーンとは面識はなかったという[2]。自身が『サウス・パーク劇場版』の劇中歌に登場すると知らされても、その内容は想像がつかなかった[2]。そこで一人こっそりと映画を観に行ったという[2]。その時のことを、2007年の『エンターテインメント・ウィークリー』誌(EW)のインタビューで語っている[8]。
- Q:ご存知と思いますが、EWの読者は、あなたに「ブライアン・ボイターノならどうする?」について聞きたいんです。『サウス・パーク劇場版』の楽曲についてどう感じました?映画はご覧になりましたか?それともファンから知らされた?
- A:「独りで観に行ったよ。」
- Q:え?本当に一人で観に行ったんですか?だってあなたはいつも…
- A:「(叫ぶ)マジだって!(笑う)俺は他のヤツと一緒じゃなく、絶対に一人だけで観に行きたかったんだよ。満員の映画館でさ、俺はこう、「頼む、頼むから俺をこきおろさないで」みたいな気持ちだった。その瞬間をよく覚えてるんだけど、スタンが踊り始めて「ブライアン・ボイタノならどうする?」を歌い、俺のことを喋ると、観客みんなが笑うんだ。マジでシュールだったよ。」[原文 1]
ふつう、『サウス・パーク』に登場する有名人はみんなクソミソに描かれるのに[2]、ブライアン・ボイターノは自分がヒーローのように描かれていて、とてもいい気分で劇場をあとにしたという[2]。
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2003年にアメリカのケーブルテレビVH1で放映されたドキュメンタリー番組「『サウスパーク』の裏側」(VH1 Goes Inside: South Park)に、ブライアン・ボイターノが出演した[2][9]。なぜなら、出演したいと思うセレブは、おそらくブライアン・ボイターノしかいなかったのである[8]。そこでブライアン・ボイターノは「セレブ扱い」を受けたという[2]。
「俺が何者なのかも知らないし、カルガリーオリンピックのことも知らないような子どもたちが、俺のことを『サウス・パーク』に出てた人だ、すげえ!、って言うんだぜ[2]」[原文 2]
その後もブライアン・ボイターノは、『サウス・パーク』制作者のトレイ・パーカーとマット・ストーンとは面識がなかったという[8]。だが2006年トリノオリンピックのとき、Brian Graden(後のMTVやLogo TVの社長)がブライアン・ボイターノに挨拶に来た[8]。そのときBrian Gradenは「実はあなたに告解することがあります。私は『ジーザス対サンタ』の製作者の一人なんです」と言うようなことを告げてきた[8]。ブライアン・ボイターノは「おまえかあああああ」(Youuuuu)のように返答した[8]。その後、ロサンゼルスでトレイ・パーカーとマット・ストーンと会食の計画が2回持ち上がったが、いずれも双方のスケジュールが合わずに実現しなかったという[8]。
ブライアン・ボイターノはのちに、「ブライアン・ボイターノならどうする?」の使用許可をもらいチャリティー用のTシャツを作った[8]。その際に関わった法律家のつてで、クリスマスの際に、トレイ・パーカーとマット・ストーンからメッセージを受け取った[8]。それには「『サウス・パーク』はあなたを敬愛しています」、「アイラブユー!」(トレイ・パーカー)、「ウィーラブユー!サンキューソーマッチ!」(マット・ストーン)とあった[8]。
その後
ブライアン・ボイターノは2010年に再び『エンターテインメント・ウィークリー』誌のインタビューに応じた。いまだにトレイ・パーカーとマット・ストーンには会ったことがないといい[10]、自身が出演するフード・ネットワークの番組「ブライアン・ボイターノならどう料理する?」(What Would Brian Boitano Make?)に二人が出演してほしいと述べた[10]。
「What would Boitano …」はその後もしばしばブライアン・ボイターノに関する記事で使われるフレーズになった。
- 「What would Brian Boitano make for a New Year’s Day hangover?[10]」「What will Brian Boitano make for Matt Lauer?[10]」- 2020年元旦のインタビュー記事で
脚注
注釈
- ↑ 作中で「モータルコンバット」の音源を無断使用しているため、本作は正式リリースできないと伝わる[4]。
- ↑ 「We Are Gay」の歌詞はディズニーの「イッツ・ア・スモールワールド」のパロディになっている[7]。
- ↑ DVD日本語字幕は関西弁風になっており、「誰のおしりも舐めへん」と訳されている。
出典
- ↑ 日刊スポーツ、2020年7月5日付、88年“ブライアン対決”平松純子審判が貫いた信念、2022年1月7日閲覧。
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 サンフランシスコ・クロニクル、2006年2月5日付、Gwen Knapp、Tickled by life, Boitano even enjoys 'South Park' ribbing、2022年1月7日閲覧。
- ↑ USAトゥデイ、2021年12月14日付、Karen Rosen、Brian Boitano, Olympic skating champ nearly 34 years ago, discovers ways to dream, stay fit。2022年1月27日閲覧。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 『公式版 サウスパーク コンプリート・ガイド』、p.90「FILMOGRAPHY」
- ↑ 『公式版 サウスパーク コンプリート・ガイド』、p.88「FILMOGRAPHY」
- ↑ Sam Stall with James Siciliano、“The South Park Episode Guide: Volume 1 – Seasons 1–5”、Running Press、2009年。p.17
- ↑ 7.0 7.1 Leslie Stratyner・James R. Keller、“The Deep End of South Park:Critical Essays on Television's Shocking Cartoon Series”、McFarland、2009年。ISBN 978-0-7864-4307-9。p.106
- ↑ 8.0 8.1 8.2 8.3 8.4 8.5 8.6 8.7 8.8 8.9 『エンターテインメント・ウィークリー』、2007年12月20日付(2020年8月4日更新)、Mandi Bierly、What's up, Brian Boitano?、2022年1月7日閲覧。
- ↑ IMDb、VH1 Goes Inside South Park、2022年1月7日閲覧。
- ↑ 10.0 10.1 10.2 10.3 『エンターテインメント・ウィークリー』、2010年1月1日付、Mandi Bierly、Brian Boitano talks latest skating spectacular, wanting Trey Parker and Matt Stone to guest on his Food Network show、2022年1月7日閲覧。
書誌情報
- 高橋ヨシキ:編著、『公式版 サウスパーク コンプリート・ガイド』、洋泉社、2001。ISBN 4-898691-511-9
関連図書
外部リンク
関連項目
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