ファミリーナンバー
ファミリーナンバー(Family Number、FN)は、サラブレッドの牝系を整理するために用いられている記号である。
牝系をたどっていったときに同じ一族は同じ番号がふられている。その牝系が発展すると、番号の後ろにアルファベットがつけられて分枝を区別する。たとえば「1号族」は「1-a」から「1-x」までに細分化されている。原則的には『英国サラブレッド血統書』に掲載された牝馬だけを分類するが、アメリカ独自の血統書に遡る系統は頭に「A」をつけ、英国旧植民地のオーストラリア・ニュージーランド・南アフリカの血統書に遡る系統には頭に「C」(植民地のC)をつけ、「A4」とか「C1」と分類している。
考案者ブルース・ロウによるFN1~43
この方式を最初に考え出したのは19世紀末頃の血統研究者ブルース・ロウ(Bruce Lowe)だった。このためこれを「ブルース・ロウのファミリーナンバー」とも言う。ブルース・ロウはこれを用いた血統理論を「フィギュア・システム」(Figure System)と称した。
オーストリアの血統研究家ブルース・ロウは、1895年の著書『フィギュア・システムによる競走馬の生産』(“Breeding Horses by the Figure System”)で、この方式・理論を発表した。ブルース・ロウは、当時のサラブレッドを、母、その母、さらにその母・・・というふうに牝系を辿っていき、『英国サラブレッド血統書』第1巻(1791年)までさかのぼって分類した。そして、英ダービー・英オークス・セントレジャーの勝馬が多いものからから順に、1~43の番号をふっていった。これがファミリーナンバーである。
ブルース・ロウは、番号が小さいほど優れた競走馬がたくさん出ると主張し、FN1~5を「競走族」と呼んだ。さらに、特定の番号から優れた種牡馬が登場しているとして、FN3、8、11、12、14の牝系を「種牡馬族」と呼んだ。そして、競走成績が優れている血統と、種牡馬として優れている血統とは別であると論じた。
しかしブルース・ロウから100年以上経過したいまでは、特定の番号の牝系が秀でているとか、「競走族」「種牡馬族」といった評価を真に受ける者はいない。だがファミリーナンバー方式は牝系を分類するのにたいへん便利なので、世界中に普及している。
ハーマン・グースによるFN44~50
同じ頃、1885年に血統研究書を刊行したハーマン・グース(Herman Goos)は、さらに44から50までの牝系を追加した。
ボビンスキー『ファミリーテーブル』による追加FN51~74
1953年、ポーランド競走馬繁殖奨励協会のカジミエシュ・ボビンスキー大尉(Kazimierz Bobinski)とステファン・ザモイスキー伯爵(Stefan Zamoyski)は、『サラブレッド・ファミリーテーブル』(“Family Tables of Racehorses”)・『サラブレッドの血統表』(“The Tabulated Pedigrees of Thoroughbred Horses”)を刊行、このなかで牝系をさらに追加した。ブルース・ロウの頃から半世紀が経過して「1号族」だけでは増えすぎたため、これを「1-a」「1-b」のように細分化するのを考案したのも彼らである。
この『サラブレッド・ファミリーテーブル』は、1960年にフランス人が続巻(第2巻)を刊行、さらに1990年には日本の白井透が権利を取得し、サラブレッド血統センターから第3巻を刊行した。2003年には、JRAとサラブレッド血統センターの合同で第4巻がでた。第4巻では南米のサラブレッド2万2000頭あまりがが大幅に増補された。これらを通し、ファミリーナンバーは74まで増えた。
さらなる追加FN75~
現代ではさらに75番以降が追加になっている。これらの番号は「公式」に認められているわけではないが、便利なので様々なところで利用されている。