名言:戦争と平和

提供: Test Wiki
移動: 案内検索

第一部

第一篇

3

 「手段はヨーロッパの均衡と諸国民の法ですね」神父が言った。「蛮勇の誉れ高いロシアのような強力な国家がたったひとつだけでも、ヨーロッパの均衡を目的とする同盟の盟主に、私心を捨ててなりさえすれば ― その国が世界を救います!」
 「いったいどうやって、あなたはそういう均衡を発見なさるんですかね?」ピエールが言い出しかけた。だが、その時アンナが歩み寄って、厳しい目でピエールを見ると、イタリア人の神父に、こちらの気候はお辛くありませんかとたずねた。イタリア人の神父の顔は旧に変わって、馬鹿にしたように、わざとらしくて甘ったるい表情になった。どうやらそれは、女性と話をするとき、彼の習慣になっていたらしい。
 「わたくしは、幸せなことにお招きいただきましたこの集まりの、ことに女性の皆さまの知性と教養のすばらしさに、すっかりうっとりしてしまいまして、まだ気候のことを考えるゆとりがございません」と彼は言った。

6

「ぜったいに、ぜったいに結婚なんかするんじゃないぞ、君。これが君に対する僕の忠告だ。結婚しちゃいかん、記ができるかぎりのことはなにもかもやったと言うまでは。しかも、君が選んだ女を愛さなくなって、その女がはっきり見えるようになるまではね。さもないと君は無惨な、取り返しのつかないまちがいをすることになる。なんの役にも立たん老人になったら結婚しろ……でないと、君の中にあるいいものや、りっぱなものがなにもかもだめになる。なにもかも取るに足らんことに使い果たされてしまう。」
「ボナパルトは、活動していたときには、つまり、一歩一歩目的に向かって進んでいたときには、自由だったんだ。自分の目的以外、あの男には何もなかった。だから目的を達しんたんだ。ところが自分を女に縛りつけてみろ。足枷をはめられた囚人みたいに、なんの自由もなくなる。そして、君のなかにあるかぎりの希望や力はなにもかも重荷になって、後悔で君を苦しめる。」

12

誤るは人の常(エラーレ・フマヌム・エスト)

22

「単純明快さに正反対の誇張癖を生む神秘主義の本に執着して、みずから判断力を混乱させるような人々の盲目的な情熱を、あたくしはいまだかつて納得できたためしがありません。使徒行伝と福音書を読みましょう。」

第二篇

2