大ヨークシャー種

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大ヨークシャー種(英語: Large White)はブタの品種である。

概要

[1]

1868年に品種として認定された。 ヨークシャー原産。


名称

このブタ品種は、原産国であるイギリスをはじめ、多くの国で「ラージホワイト(Large White)種」と呼ばれているが、日本では「大ヨークシャー種」が正式名称である。

もともとイギリスのヨーク地方で創出された品種で、当初は同じヨーク地方原産の小型ブタと一緒に「ヨークシャー種」というような呼ばれ方をしていていた。これらは「小型のヨークシャー原産種(スモールヨークシャー)」、「大型のヨークシャー原産種(ラージヨークシャー)」などと区別していたが、1868年に正式に「ラージホワイト種」として品種に認定された[2]

「ラージホワイト」と同じ頃に「スモールホワイト」も品種認定され、それより遅れて両者の中型サイズの品種が登場し、これが「ミドルホワイト(Middle White)」と命名された[2]

日本では、明治時代になって様々な家畜品種が外国から導入された。ブタは「ミドルホワイト種」が持ち込まれたが、このときに日本では原産地名から「ヨークシャー種」という名称で品種登録された。あとになって、「ラージホワイト」が日本へ導入される際、ヨークシャー種との区別のために本種は「大ヨークシャー種」と命名された[2]

近年では、本来のイギリスでの名称にあわせて「ミドルホワイト」に相当する「ヨークシャー種」を「中ヨークシャー種」と通称し、「ヨークシャー種」という呼称を「大」と「中」の総称とする場合もある[3]。ただし血統管理をしている日本養豚協会や農林水産省での正式名は中型が「ヨークシャー種」、大型が「大ヨークシャー種」である。大ヨークシャー種の略称は「W」</ref>[4][5][6][2][7][8]

特徴

ピンク色の肌が白く長い体毛で覆われており、胴長で四肢が長く、特に後駆がよく発達する。体格は大きく、オス・メスとも350kgほどに成長、大きいものでは500kgに達する[9][8][10][2]

頭部はやや長く、顔はヨークシャー種ほどしゃくれていない。大きく薄い耳が立っていて、やや前方に傾いている[9][11]

肉質は赤肉と脂肪のバランスがとれており、とりわけベーコンタイプの加工肉用として人気がある[10][12][9]

大きな特長は繁殖能力の優秀さにある。大ヨークシャーの母ブタは、一度の出産で11-12頭もの仔を産み、よく子育てをする。そして生まれた子は発育が早い。この特性を利用して、純粋大ヨークシャーのメスに、他の純粋種のオスを交配して、一代限りの交雑種を生産して効率のよい経営が可能となる[10][12][2]

近年は「三元豚」・「四元豚」と言って、大ヨークシャー種、ランドレース種、ハンプシャー種、デュロック種などを交雑する生産が主流であり、その母ブタの基礎品種として人気が高い[9][11]

歴史

前史

中世のイギリスでは、土着のブタを森で放し飼いにして、木の実を食べさせていた。16世紀になると飼育頭数が増えるとともに、森林の伐採が進み、次第にブタを豚舎で飼うようになっていった。その結果、ブタは常に手近で観察の行き届く場所にいることになり、優れた個体を識別して優良個体による選択的な繁殖が行われるようになっていった[2]

18世紀に産業革命が始まると、都市部の人口が急激に伸びて、その近郊での畜産経営に大きな影響を及ぼすようになった。農家は生産性向上や効率化に高い関心を払うようになり、家畜の品種改良も進んだ。この時代に登場し、「家畜育種の父」と称されるのがロバート・ベイクウェル(Robert Bakewell、1725-1795)である。ベイクウェルは優良個体の選抜と近親交配による系統繁殖によって様々な家畜品種を創出した。その代表例がウシロングホーン種(Longhorn)、ウマシャイアー種ヒツジのレスター種(Leicester)である。しかしベイクウェルはブタに関しては大きな成果を得られなかった[2]

ブタの品種では、イングランド南部の貴族によってエセックス種とバークシャー種が創出された。これらは在来種にイタリアのナポリ種を交配して成立した品種で、特にバークシャー種は中国産のブタ品種の影響を強く受けている[2]

品種の創出

大ヨークシャー種は、ヨーク地方のロバート・コリング(Robert Colling、1749-1820)、チャールズ・コリング(1750-1836)の兄弟によって創出された。コリング兄弟はベイクウェルの弟子で、ベイクウェルの手法を学んでヨーク地方へ帰り、そこで様々な家畜品種を創出して成功した[13][11][2][11]

コリング兄弟は、ブタの生産性を高めるための改良に取り組んだ。子どもをたくさん産み育てるには、長い胴体が必要だと考え、在来種の中でも胴体が長く、骨が太い個体だけを選抜して系統繁殖を繰り返した。それによって生み出されたのが大ヨークシャー種である。

大ヨークシャー種のもとになった品種や詳しい系統はよくわかっていない。『ブタの生産と流通(The Production and Marketing of Pigs)』の著者H・R・デビッドソン(Davidson)によれば、カンバーランド種、レスター種のほか、ヨークシャー種(ミドルホワイト)や小ヨークシャー種(スモールホワイト種(Small White))の影響もうかがえるという[1]

大ヨークシャー種が初めて注目されたのは1831年にウィンザーで開かれた品評会(ロイヤルショー)だった。その頃はまだ正式に「ラージホワイト(Large White)」という品種名は確立しておらず、「ヨーク地方原産の大きいブタ(ラージヨークシャー)」などと呼ばれていたが、1868年に正式に「ラージホワイト種」として品種登録された。これは同じヨーク地方原産の小型のブタ(スモールホワイト種)と大きさで区別して命名されたものである。少し遅れて「中型」のヨーク地方原産種も登場し、それは「ミドルホワイト」と命名された[1]

1884年にŒŽ‘’は英国豚生産者協会(National Pig Breeders Association、NPBA)が設立されて基礎品種として3品種が登録されたのだが、「ラージホワイト種」はそのうちの1つである。[2][1]

世界への拡大

19世紀の終わりごろまでには、大ヨークシャー種は世界60カ国以上の各国へ輸出されて普及した。頑健でたくましい大ヨークシャー種は気候や環境の変化への適応性が高く、ヨーロッパ以外でも、オーストラリア、アルゼンチン、カナダ、ロシアなどでその系統は繁栄した。また、高い繁殖力や遺伝力の強さのため、現地の在来品種の改良にも貢献した。元来、大ヨークシャー種は屋外での飼育を想定して創出された品種だったが、豚舎内での飼養にも順応した[1]

特に母ブタが多くの子を産み育てる高い能力は世界中で利用された。純粋種の大ヨークシャー種のオス・メスの種豚を交配して生産した大ヨークシャー種のメスのブタ(F1世代)に、他品種の種豚を交雑(ハイブリッド)することで、多くのブタを効率よく生産する手法が世界中に広まった。この生産方式を維持するために、大ヨークシャー種の純粋系統がいくつも発展した。イギリスでは1970年代に3年間で8500頭余りの純粋大ヨークシャー種が生産されて、世界中に種豚として輸出された[1]

日本での動向

明治時代になると、諸外国から日本へも様々な品種のブタが持ち込まれるようになった。しかし食糧の乏しい日本ではブタの飼料が潤沢ではなく、大都市近郊で出る食品の残渣を当て込んだ飼養を余儀なくされたこと、気候適正や、飼育の容易さなどの要因で、中型品種のヨークシャー種が主流になっていった。最盛期には日本国内のブタの95%がヨークシャー種だった。豚肉ももっぱらベーコンや缶詰などの加工食品となっており、精肉として食することは少なかった[14][12][15]

近年になって、日本国内の食糧事情が好転、さらにアメリカからの安価な飼料が輸入されるようになった。これに加えて、飼育技術が高まってきたこと、豚肉の精肉流通が増えるとともに豚カツ焼肉などの食べ方が普及し、食味の優れたブタに対する需要が高まったこと、都市近郊での小規模経営から郊外での大規模経営と効率化が進められたことなどの理由によって、大型の大ヨークシャー種の飼育が増えていった[14]

日本では、ランドレース種に次いで数多く飼育されている純粋品種である。[12]

[14]

脚注

注釈

出典

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 英国豚生産者協会(The British Pig Association) The Large White 2016年5月19日閲覧。
  2. 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 『品種改良の世界史 家畜編』p336-342
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  4. 一般社団法人日本養豚協会 種豚登録規程 (PDF) 2016年5月20日閲覧。
  5. 農林水産省 平成22年7月27日22生畜第770号 生産局長通知 牛及び豚のうち純粋種の繁殖用のもの並びに無税を適用する馬の証明書の発給等に関する事務取扱要領 2016年5月20日閲覧。
  6. 社団法人日本種豚登録協会 我が国の種豚登録事業 (PDF) 2016年5月20日閲覧。
  7. 『世界家畜品種事典』p263-264
  8. 8.0 8.1 一般社団法人 日本養豚教会 豚に関する豆知識 大ヨークシャー種 2016年5月20日閲覧。
  9. 9.0 9.1 9.2 9.3 公益財団法人 日本食肉消費総合センター 用語集 大ヨークシャー 2016年5月20日閲覧。
  10. 10.0 10.1 10.2 全国食肉事業協同組合連合会 豚の主な品種 (PDF) 2016年5月20日閲覧。
  11. 11.0 11.1 11.2 11.3 一般社団法人 日本養豚協会 豚の品種(日本で飼養されている主な品種)大ヨークシャー 2016年5月20日閲覧。
  12. 12.0 12.1 12.2 12.3 公益社団法人 中央畜産会(JLIA) 畜産ZOO鑑 さまざまな品種 2016年5月20日閲覧。
  13. 『品種改良の世界史 家畜編』p8-11
  14. 14.0 14.1 14.2 一般社団法人 日本養豚協会 養豚の歴史日本の養豚の歴史2 2016年5月20日閲覧。
  15. 『品種改良の世界史 家畜編』p355-362

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参考文献

  • 『品種改良の世界史 家畜編』,正田陽一/編,松川正・伊藤晃・楠瀬良・角田健司・天野卓・三上仁志・田名部雄一/著,悠書館,2010,ISBN 9784903487403
  • 『日本の家畜・家禽』秋篠宮文仁/著、学習研究社,2009,ISBN 9784054035065
  • 『世界家畜品種事典』社団法人畜産技術協会・正田陽一/編,東洋書林,2006,ISBN 4887216971