第5話 はい、ぱちぱちってして

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朝飯。
旅館の朝ご飯ってシンプルなのに美味しいよね

 

湯豆腐がうれしい




せっかくなので
朝から近所を散歩することにした。

源平の時代、
「ここは俺に任せて早く逃げろ!」で以仁王を救い、
平家の大軍に単騎で立ち向かった長谷部信連という武者がいる。

平家物語の最初の戦闘シーンの主役だ。

信連は脱出した以仁王の大切な笛を届けると、
一人で以仁王の館に戻り、平家軍を待ち受ける。

平家の大軍相手にただ一人で立ち向かい、
30人ほどを斬り捨てたところで刀が折れると、
「もはやこれまで、さあ首をとるがよい」と神妙にした。

捕らえられて拷問を受けるが
決して以仁王の行き先を話さなかった。

信連は平清盛の前に引き出されても堂々としており、
清盛は“まことの武士の鑑じゃ”と絶賛し、助命した。

その信連は奥伯耆に追放されたが、
やがて源氏の世になると地位を取り戻し、能登に領地を得た。

その任地へ向かう途中、
信連は、山の中で傷ついた白鷺が湯につかっているのを発見した。
それが山中温泉の始まりだとのことである。

この谷部信の子孫が信長の野望で能登の辺りに出没するだそうだ。




ちなみにこの話に出てくる白鷺が
名古屋と富山を結ぶ特急しらさぎ の元ネタなんだって


さすが北陸

北陸に縁のある話がどんどん出てくるわ







何か見えてきたぞ・・・?





なんだこれ



あやとり橋 っていう山中の名物だそうだ。

生け花の草月流の家元の人がデザインしたんだって

華道とか全く知らんけど、
「草月流」というのは、
伝統的な“型”にはまったスタイルを嫌って誕生した流派だそうだ。

↓伝統的な様式


↓草月流



創始者の勅使河原蒼風は
西洋では“花のピカソ”と称され、
フランスの最高勲章、レジオンドヌール勲章まで受勲しているんだって。
まあミシェル・ヨーとかも受勲しているレベルだから微妙だけどね

で、その二代目がデザインした橋がこれ



橋がぐにゃぐにゃしているように見えるけど
目の錯覚です




これだけ鉄骨をふんだんに組み合わせているが、
形が複雑だからか、すごい揺れる。
歩くだけでぐらぐらする。




終点側はこんな感じ。



橋のつけね。
意外と適当に石を積み上げて台にしている感じ




続けてそのまま散歩。

石段を下り、河原へ。








道明ヶ淵。

この山中温泉は、例の松尾芭蕉が奥の細道の帰りに立ち寄ると、
山中温泉は扶桑で三本指に入る名湯だよねー^^
って言って気に入って八泊もしたそうだ。
(あとの二つは有馬温泉、草津温泉。)

それで、温泉街のあちこちに芭蕉翁ゆかりのいろいろがある。






見上げると、さきほどのあやとり橋がうねっている。


この辺りは鶴仙渓と呼ばれる名勝らしい。



ぶっちゃけ、特別そんな良景でもないよね、って思うけど
時と場合と機材を選ぶとこういう写真↓が撮れるようだ。

携帯カメラでぱちぱちって適当に撮ってるだけじゃだめなんだね




たけし城みたいになってる道





滝の脇の石をくりぬいて地蔵が。




采石巌

って名前がついている割には


↓え?これ? ってレベル


まあ、説明書きにも「さしたる岩じゃないけどなw」って書いてあった


白鷺かどうかはわからないけど水鳥発見


ほらここだよ

一応、山中温泉的にゆかりのある白鷺見れてヨカッタネ(^^)v



しばらく散策の後、通りへ戻る。

鶴仙渓の右岸は石畳の風情ある通りだ。






終点に木造の橋があった。
その名も こおろぎ橋






総檜造りのこのこおろぎ橋、
今から30年ほど前に、ずばり「こおろぎ橋」というテレビドラマになったそうだ。

これでデビューしたのが
元祖マン毛大公開女の樋口可南子だって

反対側から撮るとこんな感じなんだけど


結構、車とかも通るし、そんな死ぬほど風情があると言うほどでもない
と思うんだけど



時と場合と機材を選ぶとこういう写真↓が撮れるようだ。

やっぱり携帯カメラでぱちぱちって適当に撮ってるだけじゃだめなんだね



苔むす石垣っていいよね



メインストリートに戻る。
平日の朝っぱらだというのに、そこそこ観光客がいる。
暇な連中だな。


歩道は一応石が敷いてあるし、
町並みもそれなりに景観を意識したっぽい建物がならぶ。
もちろん目障りな電柱や電線はない。



こおろぎ橋と白鷺をデザインしたマンホール。



さすが加賀、冬ごもりの準備も抜かりはないぜ


ふと前方に




コック発見



カニ汁だって!!

和の鉄人はこの山中温泉出身なんだってさ
どうでもいいけど、うちの親も道場さんの弟子だよ

みるからに道場六三郎の愛弟子って感じのおばちゃんが
200円で手作りのカニ汁をごちそうしてくれたよ!


ショウガをちょぽん と入れて喰うのが山中風

寒い中を散歩してきた身には実に旨い
カニは食うとこないけど出汁が出れば十分だよね


日本と言えば漆器だよね

中学校で習ったと思うけど

漆器を英訳するとjapanease
磁器を英訳するとchinease

つうぐらい、漆器=日本

この山中は山中漆器で有名だそうだ。
天正時代(=戦国時代ど真ん中)から作られているらしい。

どんぐらい有名かというと、

特に有名なのは「ろくろ挽き」というテクニックで、
要はろくろの要領で木地を回転させて、

木の器を削り出したり、表面加工をしたりする技だそうだ。



で、この削る作業、
時と場合によっては、一点仕上げるまでに4年とかかかるんだって

こういう↓具合にいろいろな表面加工の技術が
50種類とも60種類とも言われるぐらいあって、
例えば『千筋』という技法では、3ミリの幅に10本の凹凸を彫り込んだりするらしい。
米粒に字を書くのと同じ系統の技術だよね


んで、それに漆を塗ったり蒔絵をかけて逸品の完成。

例えばこの井戸茶碗

¥73,500円

おなじく大井戸茶碗

¥126,000円

こっちの喰籠も

¥126,000円



そこで俺もプライスレスなお土産
欲しくなったので、
山中漆器を一つ買い求めた。

↓マグカップ

お値段なんと


¥250円


熱々のコーヒーをなみなみとついでも
手が熱くないしまじおすすめ



道場さんのカニ汁の目の前には、こんな建物が。

公衆浴場 菊の湯 である。
もちろん松尾芭蕉がやってきたのが菊の季節だったので
菊にちなんだ俳句がたくさん残されているのに由来する。









ここには山中温泉の源泉がある。


公衆浴場は300円。
余裕で入る。

脱衣所にある浴場のロッカーには、
地元の小学生がデザインした七宝焼きで飾られているのだが
このデザインを七宝焼きにするセンスがすごい
ピカチュウとかそんなんばっかし

↓カービー



そんななかでなぜか『ねこへび』
キラリと光るセンスを見せつけるのは 道場まりな ちゃん
たぶん和の鉄人の孫ぐらい

さあ



入るよ!


風呂はこんな感じ
ローマの公衆浴場かっつうぐらいだだっぴろい

ただ、泊まったところもここもそうなんだけど、
浴槽が中途半端に妙な深さなの

普通に底に座ると、顔の半分ぐらいまで湯につかってしまって息ができない
うっかりすると目を洗われちゃうレベル

つま先立ちするか、
浅いところで半身浴にならないとだめ


昭和っぽいタクシー屋



 次回 第6話 雪が降っていない町